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風任せで人任せな俺がここにいる理由  作者: 明月 文


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029 一撃と一刀と破壊力

「「「「うおおおおおっ!!!!」」」」


 ユーリの作戦に従いフォーメーションの第1線に配置されていた剣士勢が一斉に飛び掛かる。

 が、一晩中、テオ一派に攻撃され、しかも1人も仕留められなかったビッグヘッドは怒りの眼差しでその巨大なアタマをブンッと振った。


「「「おわあああ!」」」


 其々が咄嗟に盾や剣を構えてガードしたが、3人程がいとも簡単にぶっ飛ばされる。


「「「死ねやああああ!!」」」


 1つのアタマが横に逸れたその隙に、今度はガルを含む別の数人が反対側のアタマに攻撃を仕掛ける。


ガッキン!


 そのうちの1人、Eクラスの若いヤツの攻撃がモロにヒットしたが、鈍い音を立てて弾かれた。


「なっ!」


 若い剣士が呆然とした表情をして、しかも怒りの籠ったヘビの目がギョロリと彼の方を見て、彼は怯えた顔で硬直する。


グサッ!


 その後ろから腰矯めで剣を持った男がヘビの下がった喉元(?)に剣を突き刺す。今度は刺さった。


「怯むんじゃねえ!!気合入れて攻撃しねえと入らねえぞ!」


 Cクラスのガルが自ら手本を見せて叫ぶと先制攻撃を喰らわせた若い剣士もハッとした顔で剣を振り上げる。

 が、ギョロリと蛇は剣士を睨みつけ、あまりの迫力を前に若い彼を含む数人はまた硬直した。


ダン!ダン!


 俺が放ったボウガンが横から襲ってこようとしていた尻尾の1番薄い部分に刺さり、ヘビの尾が弾かれた様に下がる。

 その隙にガル達がヘビの正面から逃げ出す。


ダン!


 更に大弓からの一撃が尻尾を止める。俺は叫んだ。


「モタモタしてんな!削れ!」


 流石にガル達ベテラン勢は後ろに飛び下がりながらもヘビの方を睨んだまま顔色も変えない。

 だが数人がビックリした様にこちらを見た。俺は更に叫ぶ。


「ボケっとしてんじゃねえ!ケツは俺が守ってやるって言っただろう!前だけ見て削れ!」


 意外と活きのいい先制攻撃を受けた蛇はユラリと鎌首を上げて剣士勢全員を睨みつける様に見た。


「怯むな!かかれ!」


 後ろからのアルローラの怒号に剣士達がまた「わああああ!」と叫びながら襲い掛かった。



 剣士組が入れ替わり立ち代わり波状攻撃を仕掛ける。

 彼らは事前にユーリさんが立てた作戦通り、3つの組に分かれて、しかも蛇の正面に立たない様に左右と後の3方向で包囲しての波状攻撃だ。

 ビックヘッドは一刀で斬り落とせる相手ではない。小傷を増やして弱らせる必要がある。だから長丁場で何度も攻撃する必要があるが剣は重い鉄の棒だ。5回も連続で振れば威力が落ちてくる。なので指揮官アルローラと参謀ユーリの合図に合わせて攻撃組1組、休憩組2組に分かれての波状攻撃が必要になる。


 その間、俺は弓から弓へ次々移動しながら矢を放つ。その後ろからキャディのジムが付いてきて、矢を補充して攻城戦用のボウガンの弦を巻く。弦を巻いたら素早く前衛の連中を見て、壊れた武器防具の替えを取りに後ろの武器置き場に走る。


 高さの違う木に2本、地面の1本とバラして大型ボウガンを配置しているので、俺ら2人も結構駆け回っている。が、これは必要な事だ。定位置に留まっていると蛇に場所を悟られて直接攻撃される可能性がある。蛇系統は意外に賢いのだ。

 俺も移動、クラウも蛇の正面に立たない様に移動という事で、初期の配置はクラウは俺の正面を守る様な形だったが今はバラけてしまっている。


 俺らは組織立った攻撃を繰り返していたが、傷だらけになりながらもビッグヘッドは中々弱らない。


「ぎゃあああああ!!!」

「トーマスううう!」


 とうとう1人がビックヘッドに齧り付かれ悲鳴を上げた。ヘビは彼の悲鳴に一瞬満足そうに目を細め、ゴジュリと彼を噛み潰した。冒険者の体が二つに分かれて地面に落ちる。


「…テメエ!トーマスをよくも!」

「止せ!ビリー!隊列を乱すな!」


 ユーリさんが咄嗟に制止したが、殺られた男の連れと思しき冒険者がアタマに完全に血が昇ったのか、制止を無視してど正面から斬り掛かる。


ガブッ!


 彼の死角から別の首が襲い掛かり、彼のアタマに齧り付いた。


「…!!…!!!」


 アタマから齧り付かれ、もはや手足を痙攣させてピクつくしかない冒険者を見て、呆然となった攻撃陣の手が一瞬止まる。


 その様子を見て蛇の目がまた満足そうに細められたが、その死角から隊列を無視して大男が跳び出した。


バッカン!


「ヤロウども怯むな!ヘビヤロウの動きは落ちて来てる!もうひと踏ん張りだ!」


 叫びながらアルローラの放った戦斧の一撃がビッグヘッドの胴を叩く。


「「「…!…お、おう!!!」」」


 アルローラに活を入れられた冒険者達は我に返り、攻撃を再開した。



……ん~


 俺はジムと一緒に駆け回りながら尻尾を中心にボウガンで攻撃を加えながら考えていた。

 ちなみにジムは先程も言った通り俺のボウガンを巻きつつ、アルローラ達直接攻撃陣の武器がヘタればその交換にも走り回っている。キャディが戦闘支援するのを見るのは初めてではないが、今迄見た中でも相当手際のいい部類に入る。いいのがバックアップに入ってくれたもんだ。


 …話を戻すと、先のモロに入ったっぽいアルローラの一撃もそうだけど、どの攻撃も思ったほど大きなキズにならないのは最初から気になっていた。俺のボウガンも隙をみて胴体にも放ってみたけど上手く刺さらないのも多い。


 コイツ、少し赤っぽく見えるからレッドコブラの変異種と見られているけど、この皮膚の硬さは実はもう1歩上のヒュージアイアンスネークの変異種じゃねえか?

 スピードが劣るもののレッドコブラと同等の攻撃力があり、その名の通りレッドコブラより鋼の耐久力を誇るヒュージアイアンスネークはBクラスだ。なのでその変異種は確実にAクラスである。


 道理で矢の刺さりが悪いわけだ。

 ヒュージアイアンスネークだとすれば俺が仮にレーザーを使ったにしても、皮膚をぶち抜くには相当な集中が必要だ。皮膚はそれ程固くないヒュドラなんかよりよっぽど厄介だ。


 一瞬、俺は大声で知らせようかと思ったが止めた。


 ただでさえ苦戦中なのだ。更に上位種である事は今更知らせても意味もない。

 特に対ヒュージアイアンスネークの特別な対処法があるわけでもないのだ。だとすれば、ここで余計な話をしてもただ戦意が落ちるだけだ。


 代わりに俺は叫んだ。


「毒が効いてきてるぞ!今のうちにタコ殴りにしろ!」


 景気付けに叫びはしたが、ぶっちゃけ、毒は効いてない。


 ミリー特製の毒は効きも強いが、何が素晴らしいって即効性が高い点だ。

 効いてれば直ぐに効果が目に見えるが、今のところ大蛇にそんな気配はなく、めっちゃ暴れっ放しだ。体がデカい分、効きが弱いっていうよりはやはりBクラス以上の高ランクの毒持ちには効かないのかも知れない。


ギョロリ


 その時だった。叫び声を上げた俺の方を蛇の片目が捕らえた。


 ヤバい!今の大声で居場所がバレたか!?


 蛇は眼差しだけはこちらに固定したまま変に斜めに体を横たえた。


 そしてこちらに向けてその長くて太い胴体ごと体全体で前転するように、落として来た。

 尻尾、というか胴体が上から降って来る!


「…ちっ!」


 一瞬、正に空が暗くなり、その後で木の上に大蛇の尻尾、つか胴体が落ちて来た。


ヤッベええええ!!!


 飛び降りるにはまだ高さがあった。俺は表面的な打撃、斬撃には強いが、飛び降りて受ける体全体に対する衝撃、重量にはどうか確信は持てない。

 

 けど、このままじゃ潰されて死ぬ!


 俺は咄嗟に覚悟を決めて木から飛び降りた。


ドッカン!!


 先まで俺が構えていた場所が周辺の木ごと潰されて土埃が舞い上がる。


「クリーーース!!」


 土埃の向こうからクラウの悲鳴の様な声が聞こえるが、「大丈夫だぞう!心配すんなあ!」とかって呑気に返事をしている場合じゃない。

 俺は背中を向けて後方に走りながら、周辺に目を配る。蛇のあの重量で直接押し潰されない限り俺はキズを負わないだろうから俺自身の身は心配ない。けど近場にジムがいた場合、巻き込まれた可能性がある。


 と、走って逃げた先にデカい矢を2本程抱えたジムの姿が見えた。


「弓師!生きてっか!?」


 俺はジムに返事をする代わりに叫んだ。


「コッチだ!」


 視界が隠れた今がチャンスだ。

 もうもうと土煙が上がる中、俺とジムは潰された木とは別のボウガンの引っ掛けてある木まで走る。

 ジムが素早く木に昇り、攻城にも使われる類のデカいボーガンに矢をかけてキャディの信じられない腕力で力任せに弦を弾き、木から素早く飛び降りる。


 入れ替わりに俺が木に昇り、ボウガンを構えた。

 指を蛇へ向けるとレーザー照準が蛇の頭部を這い回るが蛇は気付いていない。


「……っち!」


 土煙で視界が悪いのはこちらも同じだ。狙いがなかなか定まらない。

 大型のボウガンは1発放てば次弾を撃つにはローラーで弦を巻き直す必要があるから時間がかかる。ジムの力でローラー無しで弾いてもジムが木に登り弓を弾き、俺が登り直して構えるまでに土煙は消える。


 この1発が勝負だ!


 そして煙が少し薄くなって蛇のアタマが少し見えた瞬間、ビッグヘッドの視線と俺の視線と俺のレーザー照準が交錯し、弱いとはいえレーザーを直接目に当てられたビッグヘッドは硬直し、一瞬瞼を閉じる。


ビュウウウウ!!


……ッ!ギィヤアアアアアアアアアアアア!


 大型の矢が瞼が開いた瞬間の蛇の目を貫き、蛇は今までにない咆哮を上げた。

 蛇が首を振り、その首が下に下がった所に土煙の中、ガルが剣を構えて待ち構えていた。


「死ねや!オラア!」


ギイャアアアアア!


 ガルが真上に上げた剣は丁度、蛇の鼻先の比較的皮膚が弱そうな当たりに突き刺さり、蛇は盛大に鼻血(?)を吹きながら仰け反って首を振り回して咆哮する。

 刺したガルは刺さったままの短めの剣を手放し、後ろに吹っ飛ばされた。


 「おい?大丈夫か?」と心配になって吹き飛ばされた方を思わず見たが、彼は2、3度勢いよく地面を転がって木に激突した後は(ちょっと痛そうだったが)アタマをフリフリ起き上がって下がった。


 でも自分で歩いてる方角が分かってない感じだな。軽い脳震盪ぐらいで済んでりゃいいが。


 一方、ヘビの方はといえば、片方の首が盛大にやられ、その様子に思わずもう片方の首が中途半端な高さのままそちらを向く。


「おらああああ!!!!」


ゴッキン!


 その隙を逃さずアルローラが突進し、重量級の戦斧がモロにアタマに炸裂した。


…ッ…ッ……ガアアアアア!!!!


 重量級の戦斧でモロに殴られたビックヘッドのアタマは盛大な呻き声を上げながら一瞬下にガクンと落ち、その後、ちょっと緩い動作で斜め上辺りに下がり、そこから戦斧を振り切った姿勢で無防備なアルローラに、猛然と大口を開けて襲い掛かる。


 対するアルローラはバカデカい戦斧を振り切ったばかりで咄嗟に反応出来ず、顔は上げて蛇の方を見たものの「ヤベエ!」という顔をしたまま立ち竦んだ。


ギン!キーン!


 その瞬間、横合いから物凄いスピードで蛇とアルローラの間に飛び出して来た剣士が剣を振るい、そのまま横へ駆け抜けると変な金属質な感じの音がした。


ガッシュ!ガシュ!


 そして少し離れた所に巨大な白い長いモノが2本突き刺さる。飛び込んだクラウがアルローラに齧り付こうとした牙を受け流し、止まったビックヘッドの2本の巨大な牙を返す刀の一刀で斬り落としたのだ。

 クラウは通り過ぎ様に牙を受け流しつつ一刀で斬り落とし、蛇とアルローラの間を文字通り風の様に走り過ぎて素早く走り去った後にチラリとこちらに視線を投げた。硬いはずのビッグヘッドの牙を紙の様に斬り落としてのドヤ顔の視線ではない。心配そうな視線だ。


 それに対し俺が「大丈夫だ」と軽く片手を挙げると嬉しそうにニコっと笑った。


「!!!!」


 俺が破壊力のあり過ぎる彼女の笑顔に硬直していると、俺の無事を確認した彼女は今度は明らかなドヤ顔で見せつける様にチンと剣を鞘にしまい、後方へ退避した。


グサッ!


 牙をキレイに斬り落とされて思わず「!?」といった風情で止まったヘビの丁度目の下辺りに、いいタイミングで斜め後ろから突撃してきた冒険者の長剣が刺さる。


…!!…!!!!


「おらああああああああ!死にさらせ!!!!!!」


ドッパアアン!!


 死角からの攻撃に完全にその場で固まったアタマに、立ち直ったアルローラの超重量級の追撃が入り、ヘビのアタマは地面に勢いよく叩きつけられた。

 アルローラの攻撃を2発もモロに喰らったアタマの一部が完全に陥没していて、片目も飛び出しており、起き上がる様子もなくピクついてる。


ビュウウウ!ガン!


 それでも尻尾がアルローラを襲おうとするが、俺のボーガンの一撃がその動きを縫い留める。

 目を潰した超大型の方ではなく、手で持てる範囲の大型ボーガンの一撃だからダメージは殆どは入らない嫌がらせにしかならないが、蛇の尻尾は弾かれた様に下がる。

 が、今度は片目を潰された方のアタマが横合いから再度アルローラに向かって襲い掛かって来た。


ガッキン!


 咄嗟にアルローラの前に立ち塞がり、蛇の攻撃を盾でくい止めたユーリさんはそのままアルローラごとぶっ飛ばされたが、直ぐに起き上がって叫んだ。


「片方はアルローラが潰したぞ!残りも片目は弓師が潰した!見えねえ方に回り込んでトドメ刺せ!」



 片クビになってからもビックヘッドはその大きなアタマを振るいまくって暴れた。

 更にもう1人の冒険者がヘビの横合いからの頭突き(?)をモロに喰らってぶっ飛ばされて動かなくなった。


 が、片方の首が死んだという事は、体に大きな重りを吊るしているのと同じで、動きは完全に落ちた。

 その上、生きてる方の首も片目は俺の矢で潰され、視野は完全に半分見えてない。


 この状況に俄然元気の出た剣士組がよってタカってタコ殴りにし、嫌がって首を上げれば魔法使いが嫌がらせの様に魔法を放って無理矢理下げさせる。


 尻尾は俺のボーガンがほぼ完全に封じた。

 剣山とまではいかないまでも大型の矢が何本も突き刺さり、ほぼ地面に縫い留められた状態だ。

 最初の内は体に魔力がギンギンに通っていたからなかなか刺さらなかったが、片方の首が死んで体を巡る魔力が弱ったのだ。


 胴は剣士達に滅多撃ちにされ、アルローラの重量級の一撃も何度も喰らい、もう半分方潰れた様になっている。


 やがてビックヘッドの首が地面に落ち、グッタリした感じでほぼ動かなくなってもベテランも揃うこの討伐隊は全く安心も慢心もなかった。


 ジムが素早く大型ボーガンの弦を巻き、それを俺が後ろで油断なく構え、魔法使いもゼエゼエと荒い息でしかし気力を振り絞って杖を構える中で、物理武器を装備した連中が既に動かずヒクつくだけのビッグヘッドのアタマに殺到して剣を刺し続ける。

 大剣メインの連中は首元に周り、アルローラと一緒になって倒れた木をバラすように首を落としにかかる。


 最早、興奮状態と言ってもいいメンバー全員で「おらあ!死ねや!こらあ!」とか「こうなったらもう何も出来ねえだろうが!このクソヘビ野郎!」とか「シネシネシネシネ…」とか叫びながらガシガシやって、両方の首が半分もげかかってきたところでアルローラが手を挙げた。


「ヨーシ!もう充分だ!」


 その声を聞いて全員が手を止める。


「おおおおおおお!!!!」


 アルローラが両手で大斧を掲げて腹の底からの雄叫びを上げる。

 それを見た全員が、武器を掲げた。


「「「「おおおおおおおお!!!!」」」」


 弓を持った俺も、剣を掲げたクラウも、補充用の剣を抱えていたジムも全員が武器を、拳を突き上げて雄叫びを上げた。そして全員が申し合わせた様に武器を放り出しその場に座り込んだ。


 討伐が終わったのだった。


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