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風任せで人任せな俺がここにいる理由  作者: 明月 文


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028 鋼の朝食がお望み

 作戦会議の翌日、俺らは待ち伏せ予定地に到着した。


 例のテオ一派は「じゃ、逝って来るわ!」と早くも斥候兼誘き出しに出て行った。


 リーダーのテオの言葉こそ軽かったが当のテオも含めメンバーの顔は緊張感で漲っていた。

 繰り返しになるが、実質Aクラス相当の魔物をここまで引き連れて来なきゃいけない彼らは、ある意味、一番危険な役割だ。

 近くにいた奴らはメンバーの肩を叩き、遠くの人間は例外なく激励を込めて剣やら槍やらを振り上げて見送った。


 いい雰囲気だな、と俺は思った。


 前回の旅の時は、商売柄(?)、冒険者ギルドに立ち寄った事もあるし、行く先々で彼らと剣を並べて戦った事もあったから、冒険者達とはそれなりに付き合いはあった。だから仕組みやら何やらの知識はあるわけだが、前回は…まあ何と言うか…勇者という立場だったから周囲も最初から一歩引いてたし、戦闘ともなれば態度だけは「先生、お願いします!」と言う感じで、のっけから丸投げ気味に最前線に押し出され、肩を並べてという感じじゃなく、実質、俺らだけで戦ってたことも多かった。


 だが、今回は違う。

 俺もチームの一員としてカウントされている。

 参加している大半が町の有力冒険者で、俺らは飛び入り参加なのに、丸投げ先ではなく、キチンと戦力の一端として数えられ、持ってる技量を評価されて作戦に組み込まれている。


 加えて、このフルハットの町のギルドの面々は公的立場はないが実質リーダーのアルローラを中心にいい感じに纏まっている雰囲気がある。

 顔見知りが多いせいか、人数的な問題か、何か居心地がいい一体感がある。


 前回も討伐にも加わった、というか飛び入り参加を強制された事もあるが、もっとバラバラ感が強かった気がする。

 初めからやる気のないヤツもいたし、上手く立ち回って美味しいトコだけ持って行こうというのがミエミエのパーティーもいた。狡いとかそういうのでもなく、自身の実力を冷静に見定めて、それしか出来ないと判断して立ち回っている連中もいた。

 リーダーの指示など初めから聞く気がなさそうで実際聞き流していたヤツも多かったし、挙句、リーダー役がごくごく簡単で当たり前な作戦を立てて指示しても「テメエの言う事なんか聞けるか!俺らは勝手にやらせて貰う!」と正面から凄むヤツまでいた。そういう奴等に限って腕前は口程ではないにせよ悪くはなかったから始末が悪い。


 そして何時でも何処でも何か厄介事になれば余所モンの俺らに丸投げしようとした。

 

 まあ勇者を名乗っていたから仕方がない面は否定しないはしないが、投げられる側の俺らからすれば当たり前の様に丸投げされるのは不愉快だった。引き受けて当然だろう、という態度もムカついた。


 けど、ここにはそんなのはいない。


 無論、人間的には弱そうと見れば絡んで来るガルの様なのはいるが、そのガル達にしてもアルローラやユーリの話はキチンと聞いてるし、指示にも従う。飲み会以降、アルローラの目があるせいか変に絡んで来る事もない。むしろ余所者で必ずしも信用していない俺の言う事であっても役立つと思えば聞く態度がある。

 余所者の俺らに使い捨て的な役割を振ることもない。


 全く悪くない。



 その悪くない雰囲気でテオ一派の出立を見送った俺らはそれぞれの攻撃ポジションの確認に入った。

 一応、それぞれの冒険者が最初は好きな場所に陣取ってはみるが、それをアルローラとユーリが見て確認し、必要ならポジションの変更を指示する形だ。


 待ち伏せ戦は個人的には得意技だ。いつも俺がやっているヤツなのだ。


 特に今回は大型のボウガンを3つ持って来ている。これらは元々は自分の近場に置いておくか、一発撃ったら次を後方に取りに戻る予定だったが、待ち伏せ戦なら予め配置も可能だ。


 俺は待ち伏せ場所で周囲の木を確認し、2か所に例のキャディーの手も借りて大型ボウガンを引っ掛け、残り1つは地上の別の場所に配置する。


「1か所に固めといた方がいいんじゃねえか?弓師は遠間からだろ?」


 キャディーの言葉に俺は首を振る。


「大蛇は結構広範囲で暴れる。弓師ってたって1か所に留まって攻撃出来ない可能性が高い。」


 俺の言葉に戦闘そのものには加わらないキャディーは反論しなかった。


「そうか。ま、撃ち終わった弓は置きっぱなしにしとけ。出る時も言ったけど、俺が巻いてやるから声掛けな。」


 とは言っても冒険者は命あっての物種だし、この世界の連中は自分の為なら簡単に前言を翻す。完全には信用できないものの、でも今は心強い言葉に俺も頷いた。


「今回は普段は使わないデカいのが多い。俺1人じゃなんともならん。アンタの力が頼りだから頼んだ。」


 ベテランキャディのジムはニヤリと笑った。


「任しとけ。バックアップが俺の本職だ。」


 とにかく雰囲気も悪くない。

 嫌々加わったとは言え、手抜きする気は更々なかったが、この雰囲気の中で俺も「おうし!やるか!」という気持ちにはなった。職場の雰囲気って本当に重要だ。



 そんなこんなで、待ち伏せ箇所で準備をしながら待って、2日目の夜だった。


ダーン!!!!!


 夜中に何かを打ち付けたような物凄い音が響き、俺らは全員跳ね起きた。そして一斉に音のした方を見る。が、暗くて何も見えない。


 アルローラが呟いた。


「どうやら来たようだな。」

「ちっ!テオのヤツ、何やってんだ!こんな夜中に引き連れて来てどーする!」


 ユーリの文句にアルローラも同意する様に渋い顔だったが、言った。


「そう言うな。ヘビは俺らの都合なんざ構ってくれねえ。」


ドッカーン!!!


 遠くで更に音がした。俺は耳を澄ます。


ガーン!!!ガーン!!!ガガーン……ガーン………


「いや、この音、まだ真っすぐこっちには来てない。」


 俺の指摘にアルローラが振り向く。


「さっきはコッチに向かってたけど曲がった、と思う。」

「本当か?」

「いや、弓師の言う事に間違いはねえ。進路変わったと思うぜ。」


 近くにいたベテランっぽい冒険者も言った。


「…お前、探索、持ってたな。」


 アルローラの確認にベテランは頷く。


「テオのヤツら、引き回して相手を疲れさすんはよくやってた。そいつをやってんのかも知れねえぜ!」


 どうやらテオ一派はヘビを引き回す作戦をとったらしい。

 明るくなる前にこちらに誘き寄せるのを避けるのと、ヘビの疲れを狙っているんだろう。しかし、それは同時に彼らが夜通し危険度を省みずにより長時間、ビックヘッドの相手をするという事を意味する。


 元々、蛇系統相手に夜は宜しくない。

 暗いから見えないのは人間の方だけで、大概の蛇系統は赤外センサーみたいな目をしてるから暗闇は関係ない。

 にも関わらず、テオ一派は時間稼ぎをしているのだ。


 ベテランのBクラスであるアルローラもそれが分かったのだろう。何とも言えない風に顔を顰めた。


「テオのヤツ…」


 俺らは黙ってボスであるアルローラの次の指示を待つ。

 数秒考えてアルローラは口を開いた。


「ユーリ!夜明けまで後、どんぐらいだ?」

「……2時間…いや1時間半ぐらいだと思う!」


 ヨシ!という風にアルローラは頷いた。判断を固めたらしい。

 こういう場合、リーダーに求められるのは内容如何を問わず素早い判断と俺らを直接動かす命令だ。


「よーし!お前ら!蛇は早い朝食をお望みらしい!ちょっと早えが戦闘準備だ!鋼のメシを思いっきし喰らわせてやれ!」

「「「「おおっ!」」」」


 威勢はいいが全員が顔を緊張させて返事をした。

 ヘタすりゃ鋼のメシどころか俺らが蛇の朝食になっちまうのだ。


 アルローラは俺らの後ろの方に目線をやった。


「ジム!お前はテオ達の撤収用に馬車、用意しとけ!」

「おうよ!」



 1時間半後に夜が明け、またドカンドカンと音が近づいて来た。テオ一派はやはり夜明けまで目一杯、ヘビを引き回す戦術を取っていたものらしい。

 ランクB最強クラスの魔獣相手である。Cクラスと聞いているが相当腕がいい連中だな。


ガガガッガーン


 物凄い物音と共にまず飛び込んで来たのはテオ一派の一番年嵩と思われる男だ。


「ハア!ハア!……アルローラ!連れて来てやったぞ、オイ!」


 左の肩から血を流し、左手がブランと動かなそうな彼が必死の形相で怒鳴ると、アルローラも怒鳴り返した。


「よーし!よくやった!後は下がれ!トリウチ!」

「テオ達ももうすぐ来る!悪いが後は任せるぜ!」


ドッカン!!!!!!!


 バリバリと木を倒しながら大蛇が現れた。

 同時に周辺からワラワラと人影が跳び出す。テオ一党だ。


 またアルローラが叫んだ。


「よーし!テオ!よくやった!おめえらは馬車に乗って速攻、村まで戻れ!!」


 だがテオは叫び返す。


「俺らはまだイケるぜ!?」

「バカヤロウ!足手纏いだ!馬車でとっとと安全な場所まで戻れ!」


 アルローラの判断は正しい。

 テオ一派で真っ先に飛び込んできた壮年の男は片手をザックリ負傷。大男は剣を構えてはいるものの傍目にも足が疲労でガクガクしており、よく見ればアタマから血が流れてる。3番目に飛び込んできた1人はやはり片手に怪我をしており、こちらも足はガクガクだ。テオ自身も全身泥だらけでマラソンを走り切ったランナーの様に息が荒い。片手に持った小盾は完全にひしゃげている。


 荷馬車と馬を彼らの撤収に使わせるのも合理的だ。

 キャディーは既に全ての荷物を降ろして配置していて、荷馬車は空だ。このままここに置いておいても邪魔なだけだし、馬も喰われ兼ねない。手綱でも切れて狂乱した馬が俺らの方に突っ込んで来たら目も当てられない。


 彼らも自身の状況は分かっていたのだろう。

 強がって言ってはみたものの、リーダーのテオは素早くパーチィーメンバーに視線を奔らせて叫んだ。


「オメーラ、俺らここまでらしい!撤収すんぞ!馬車へ走れ!」


 リーダーの声に彼らは荒い息で返事をする間もなく必死の形相で後方へ走り去る。


 そしてそれを横目で確認しながら討伐隊を率いるアルローラは今度は俺らの方を向いて怒鳴った。


「よーし!!今度は俺らの番だ!取り囲んでぶっ殺せ!!」

「「「「「おう!」」」」


 フォーメーションは既に完成していて我々の配置も完了している。テオ一派も上手く真ん中辺りに誘導してくれた。


 後は彼の言う通り、俺らの仕事だ!


今回は短いので直ぐに次話は早めに更新する予定です。

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