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風任せで人任せな俺がここにいる理由  作者: 明月 文


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100 俺の役割と少し不思議

 俺の出自とかゲームの制作過程とか話がごちゃごちゃしてきた感がある。

 情報量も過多なわりには何もかもが分からないことだらけだ。


 …目先の話から片付けるしかあんめえ。

 先ず目先で重要なのは俺が浜井に何を期待されていて、これからどんな仕事をするのかだ。


 仕事において最も重要な事は何か?

 それは期待されている行動が出来る事だ。


 営業マンは営業成績、即ち売上高を上げる事が期待されている。従って通常なら如何なる手段をもってしても売上を上げた営業マンがいい営業マンだ。

 だが営業マンによっては違うミッションを持たされている者もいる。

 自社のAという商品が今は売れているが、諸般の事情でBという商品に全面切り替えしたい。そうなれば、いい営業マンとはAもBも売って売上高を上げる営業マンではなく、Bを売る、あるいはAを使っているお客に無理矢理にでもBを使わせる様にした営業マンがいい営業マンとなる。

 期待されている行動とは時と場合により違うのだ。


 漫画なんかでも同じだ。

 通常の子供であれば、勉強なりスポーツなり何か得意なものを見付け、それを伸ばしていく事が期待されている。

 同様に漫画でも主人公は何かがデキる事が期待されており、その業界で主人公として頭角を現す。

 その上、漫画の世界だから、その内容は現実社会では非合法でお勧めできない喧嘩とか海賊業とか殺人とかが得意でも全然オッケーだ。その代わりサッカーマンガで主人公は何時まで経っても3軍でリフティング三昧というわけにはいかない。週刊誌なら3週間リフティングだけしてたら打ち切り候補になる。

 なので対象は昔ならやたら野球とボクシングだが、今はサッカーだったり、比較的平和な感じでは料理やら受験だったり、逆に少し不穏当な方向なら喧嘩だったり暗殺だったり、とにかく分野はそれぞれだが主人公はそこで頑張って、成果は出し、その実力を周囲が認めて話が進む。

 …いや最近は転生トラックに当たられて、転生前に神から有難いお言葉を戴いた挙句、転生先では3歳児の段階で何もしないのにいきなりチートかつハーレムって例も多いから、頑張りは不要かも知れんけど、とにかく何か得意芸を持って活躍する。


 だが某大人気漫画の堂々の主人公であるNは違う。


 ブサメンかどうかはさて置いても顔は少なくともイケメン設定ではない。

 テストは小学校の最初から常に0点。運痴で気合も根性も体力もなく、喧嘩も弱いNはそれだけ見ればいい所が全くなく、物語の主人公を張るようなタマではない。

 しかしながら彼がダメなお陰で、ダメダメな彼を更生さすべく机の中からいきなりお助けロボットが這い出て来て物語が始まる。ちなみに彼は勉強は全くしないので、机の引き出しが時空間の穴になってしまって筆記用具も教科書も参考書も入れられなくなっても何も問題がない。


 読者である我々からすればNがある日やる気を出してテストが100点になる事は望んでいない。

 Nが100点を取れる様になれば、ロボットはお役御免になって安心して未来へ帰ってしまうからだ。


 喧嘩が強くなる事も望んでいない。

 喧嘩が強くなれば物語の中で喧嘩担当で理不尽過ぎる言動がファンにマジ受けしてる超人気キャラGは出て来なくなるからだ。


 通常の父親は出世してより良いサラリーを稼ぐ事が期待されているが、Nの父親に限って言えばそれも期待されていない。

 父親が出世して金持ちにでもなれば、金を持っているだけが取り柄のサブキャラSに出番が無くなってしまうからだ。


 主人公Nに期待されているのは、うだつの上がらないヒラリーマン家庭に生まれ育ったクソダメ人間であり続ける事であり、彼は読者の期待に見事応えているからこその主人公なのだ。


 散々言った割には、小さな頃から馴染んでいるが故に個人的には親近感のある主人公N君が期待されている役割を見事に果たしている一方で、俺は一体全体、何を期待されていて何をするのだろう?


 まあ、そうは言っても冒険者としての俺に期待されていることは大体の想像はつく。

 けど、直接聞いてみた。


「浜井さんは俺に何をさせる気なんですか?」

「基本は俺のボディーガードだ。海野さんは戦闘力が高い。」


 紅茶を飲みながら浜井さんは続けた


「ああ~それとな…」

「?」

「これも最初に言ったかも知れんけど、俺相手に遠慮とかいらない。敬語とかもお互いナッシングで行こう。少なくとも今の見た目は似た様な年頃だ。な?」


 浜井さんがそれでいいって言ってるなら俺もその方がやり易いのは間違いない。

 つか、言い方は様々だけど俺の周囲はこの種のフランクなヤツが多くて助かるな。


「はあ、分かり…いや、分かった。」


 そう答えた俺は、直ぐにアタマを元に戻して考える。


 浜井さん…いやいや浜井が言うところの調査に動き回るに当たってまずは護衛の手配。ま、まずそれは分かる。

 この世界は男爵閣下とかってお金持ってそうな人がひょいひょい気軽にお1人様で動いて回れる程、安全ではない。


 俺が腕が達つと目を付けたのもまあ悪くはない。


 けど、俺程度に腕が達つ冒険者や兵士はごまんといる。なんせCクラスなのだ。

 Cクラスは冒険者の中ではデキる方にカウントはされるが、リバードアの様な大都会の冒険者ギルドに行けば2、3人ではない数いる。更に腕のいいBクラスだっているだろう。場所によってはAクラスもいる。

 男爵という経済的に恵まれた立場なら雇いたい放題だろう。


 なのに、わざわざ俺を連れていくのは何故だ?


「で、俺はアンタの護衛ってか?」

「まあな。それと俺の助手だ。」

「ああ?」


 助手って何だよ?

 俺がナニすんだよ!?


「護衛だけならコッチの世界の冒険者でもいい。ぶっちゃけお前さんより高ランクの冒険者も金を出せば雇えるし、金は出せる。けど助手となりゃあある程度コッチの話について来れないとダメだ。なんでその両方を兼ねたのがアンタってわけだ。」


 今更ながらに根本的な疑問点に気付いた。


「…何で俺が向こうから来たって分かったんだよ?」

「勘だな。」


 意外な事に即答だった。


「一応、運営側だからな。来る前に、今、動きのある冒険者全体をザラっとは見れる。そん中でお前さんはちと毛色が違う。」

「どう違う?」


 目立つ行動をした覚えはない。


 冒険者として地道にEクラスから叩き上げてCクラスになった。

 昇進スピードはちと速いかもしれないが、全くない速さではない。


 冒険者はプロスポーツ界と同じ完全実力ワールドだ。

 プロスポーツ界では小学校から早々に実力を見せて中学生で日本代表なんてのもいるのと同様に、なった瞬間に実力を見せてそれこそ俺なんかと比べ物にならないスピードで昇格した例は多い。


 特異な能力は持ってはいるが、基本、人前では見せびらかさない。

 弟殿下に魔法を使っているのはバレだが、他にはネタバレした事もないし、自分から説明した事もない。ソレで目立った事もない。


「そこは…何とも言えねえな。」

「なんだよそりゃ!?」


 彼はポリポリと顎辺りを掻いた。


「あ~別に隠し事とかってつもりはねえんだけど……なんつったら言いんかね…俺はお前さんがリバードアに来てからの動きを見てるんだが……そうだな、手慣れてるんだ。」

「手慣れてる?」


 また彼は「ん~」と考え込みながら言った。


「……形式だけで言うと初心者の冒険者にありがちな動きじゃねえんだ。明らかにギルドの知識があって、ランクよりもずっと知識やら経験やらが豊富に見える。」

「……」


 そこは否定出来ない。

 確かに冒険者は初めてだし、クリス・シーガイアとしても成りたてだが、魔獣退治も旅も素人じゃない。


「こういうゲームでは他の似たゲームをやり込んで来るヤツって結構いて、そういう予備知識みたいのが最初にあるヤツはズブの素人さんと比べれば動きが違う。んでもって、そういうのは傍で見てると分かるんだ。」


 つまり俺の動きは…


「…なるほど。俺は傍から見るとベテランのゲーマーの動きをしてるわけだ。」

「ま、形式的にはそんなトコかな。」

「さっきから形式、形式って何だよ?」


 自分で口にしてたクセに浜井は「俺、そんな事言ってたか?」みたいな顔をして、また少し考えて言った。


「まあ…強いて言えば、そんな話になんだけど…上手く説明出来ねえけど、とにかくお前さんはこのリバードアの冒険者の中じゃ俺の目には目立って見えたのさ。だから呼んだんだ。」


 方程式は全く合ってない、というより自分でも計算過程が分かってない風だけど答えは合ってる…のかな?


 そう考えると、今の今まで俺はお嬢がヘタレ陛下から仕事を請け、その実務担当としてお嬢が俺を選んだのだと思っていた。

 けど今の浜井の口ぶりだとお嬢が俺を選んだわけでもなく、ヘタレ陛下が目を付けたわけでもなく、大元の浜井が最初から俺を担当にする気であった様な感じだ。むしろ俺を引っ張り出す為にお嬢に声が掛かった感しがする。


「けどよ、俺は伯爵家の一護衛だ。伯爵家に人を借りるにしたって俺が出て来るとは限らねえだろ。それに、お嬢の口調からして俺をご指名ってわけでもねえんだろ?」

「そこは、それ、貴族同士の腹芸ってヤツだな。ソッチの方に話を持ってくってのは出来るってだけさ。お嬢様はお気付きないかも知れんけど、伯爵家当主殿は最初から俺がお前を指名して要求してるのは分かってる。」


 そんな高度な芸当は言われてもよく分からん。

 それに自分で言ってて何だが、そんな面倒な事をしなくても伯爵家に「お宅の弓師を借りたい。国王陛下の許可は貰ってる」とストレートに言ってもいい様な気もする。男爵なんだし。


「一応、立場的にこの世界のアレコレをあまりブッチしない様に話を進めるのが基本だ。なんで調査が進めやすい様に俺の設定もこの世界では有力国リバードア王国の男爵ってことになってるし、お前さんへの声掛けも伯爵家とは全然無関係な俺が直接じゃなくて、伯爵家からの推挙って形にしてるんだ。」


 まあ、そこらはどうでもいい…とまでは言わないけど今更深堀りしても仕方ないか。

 俺は話を巻き戻す事にした。


「で?ふぇいず3とかってのは分かった。そん中で俺ら何すんだ?」

「先も言った通り、話の流れがちとオカシイ。何でそいつを直すんだ。」

「つまり、アレか。ストーリーを元に戻すって方向か。」


 浜井は大きく頷いた。


「そうだ。勿論、全てがそうはいかないし、全てが元通りである必要もない、かもしんない。でも大元は戻さなアカン。」

「大元ってナニよ?」

「勇者が魔王を倒すってトコだ。」

「……なるほど。」


 そりゃまあ大元も大元だ。

 細けえ話はともかく、そこは戻しても良さそうな気がする。つか戻さんとこの世は滅ぶのか。


「でもさ、そこはマジな大元じゃん?そこが上手くいってないって何よ?」


 俺の文句に対し、彼は両手を広げた。


「そこは俺だってそうは思う。けどだからこそ直さなアカンってんで俺が来たのさ。」

「ふ~ん」


 俺が一応納得した風を見て、浜井は少しリラックスした調子で椅子の背に凭れた。


「ちなみにお前さん、何処出身?」


 雑談タイムか?

 別に隠し事でも何でもないから俺は軽く答えた。


「何処?住んでた場所なら埼玉だけど。」

「埼玉のどこ?」

「大宮」


 俺の答えに何故か浜井は仰け反った。


「大宮!?随分、いいトコに住んでんじゃねえかい、おい!」

「そうか?」


 悪い所ではない。大きな町で便利だし。東京からも近いし。路線も多いし。

 でも、田園調布やビバリーヒルズじゃあるまいし、そんなに仰け反って羨ましがられる程の場所じゃない。

 なのにビックリ仰天した様子で浜井は続けて訊いて来た。


「そんな高級住宅地に住んでるとか、商売、何してんだ?もしかして何かボンボン?」

「高級住宅地?埼玉の大宮だぜ?」


 似たような名前の高級住宅地ってどっかにあったっけな?


「いやあ、2000年代アタマの方とかならまだしも、きょうび大宮とかかなりムズいだろ?」

「いや2000年代のアタマの方なんで、全くムズくねえだろ?」


 浜井は変な顔をした。


「2000年代のアタマって何だよ?」

「2000年代のアタマは2000年代のアタマだ。何か変な話でもあんのか?」


 浜井は片手で額を押え、もう片方の手を突き出して掌を振った。


「待て待て!話を整理しよう。」


 なんか整理する程の話あるか?


「お前さん……何年から来た?…って自分じゃ思ってる?」


 この世界に来た覚えのない俺はそんな事聞かれても分からん。

 が、最後に記憶のある辺りは…


「2015、いや16年、かな?」

「え!?」


 浜井は真面目に驚いた顔をした。


「2062年じゃない!?」


 2062って何の数字だ?どこの数字だ?


「俺が向こうに最後にいた年代の話だろ?」

「そうだよ。2062年じゃない?」

「全然、違うな。そんな未来じゃない。」

「未来?」


 浜井は「うわあ」って顔で天井を見上げた。


「設定が複雑になってんな…手に負えねえな、コリャ。運営、何考えてんだ!?」


 コラコラ!俺の場合は設定とかじゃねえよ!

 マジに2015、いや16年から来てんだよ!


 遂に100話到達です。

 ここまで読んで戴いた読者の方々に感謝申し上げます。


 作者的には筆任せで書きまくり、主人公的には風任せで余計な脱線しまくりながらの100話(しかもまたキリが悪い…)ですので、進みは相変わらずのスローペースですが、今後とも宜しくお願いします。


 読者の皆様のブクマなり評価なりの力強い後押しが、作者にとってはこれからも続ける大きな大きな励みになります。評価やブクマが上がれば嬉しいものです。

 本作を気に入られた方、今後も読み続けて戴けるつもりがある方は「読んでるよ」という印代わりに、あるいは今後も本作を応援して下さるお気持ちの表現として、お気軽に評価、ブクマ、そして感想をお願いします。

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