勘(2)
店主の話を詳しく聞くにつれ、
ガイアスの中での違和感は少しずつ大きくなっていった。
聖女捜索を始めた頃の自分であれば、
もしかしたら気のせいもいいところだと一蹴していたかもしれない。
実際、空振りの可能性の方が高いとは思っている。
それでも、もしかしたら、という微かな期待をしてしまう。
ここまで何の手掛かりもないので、
僅かな情報でも期待を持つなという方が難しい。
店主ライナスの話によれば、アウスト国で旧知の間柄である騎士団前団長が
少し前に貴族から療養目的で娘を預ったと言う。
療養は終わっているので顔色も良く、極めて健康そうだった。
そして、世間知らずの貴族のお嬢様とは思えぬほどその知識は深く、
また斬新なものであり、ライナスも舌を巻いたそうだ。
王都から少し離れた森に住んでおり、近々その娘が店を開くらしい。
その店に飲食のできるスペースを併設し、
そこでコーヒーや紅茶を出すという話だ。
酒や料理がメインではなく、家で飲むのが主流のコーヒーや紅茶を
前面に押し出すというのは中々珍しい。
その上、ルーン王国の業者に紅茶の商品開発案を提供していると言う。
これは余談だが、話の流れで前団長が口を滑らせ、
孫娘のような女性に困ったように諫められる姿は
中々見ものであったとライナスは思う。
「アウスト国、か…」
ガイアスは2杯目のコーヒーを飲み干すと、
情報料も兼ねて多めにコーヒー代を押しつけて店を後にした。
しっかりと礼を言うことも忘れない。
コーヒーが美味しかったということも。
人目に付かないところへ移動し、水鏡を発動する。
繋げるのはアウスト国へ送り込んでいるユーリの部下である。
自分もこれからアウスト国へ向かうつもりだが、
王族が他国を訪れるのは色々と手続が必要になる。
お忍びはお忍びで準備が必要だ。
どちらも手間がかかるが、今回は表立って動きたくないので後者となる。
一般旅客のようにアウスト国へ移動するには旅券も必要である。
まずは既にアウスト国で情報収集にあたっている部下へ
先ほど聞いた話を共有し、捜索にあたってもらうべきだ。
その後、ユーリにも情報を共有し、
ルーン王国の紅茶業者のどこかがその女性と
繋がりを持っているということも念のため伝えておく。
こちらがハズレの可能性もあるので、
引き続き並行して情報収集もするつもりだ。
あらゆる可能性を模索し、複数の手を打っていく。
ガイアスもまた、確実に仕事をこなしていく男であった。
区切りの都合で少し短めです;




