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まさか聖女だとは思ってなかったので雑貨屋を始めました  作者: しまりす
第一章 雑貨屋準備編
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【閑話】グレイの回想

グレイ視点の閑話です。


セルゲイやマリーも敬称略。

葵はグレイ視点のためアオイ表記となっています。

本当に不思議な女性だ、と思った。


戦闘が終わったとは言え、魔物の死体が広がっている中

セルゲイ目掛けて真っすぐに駆け寄ってきた。

グレイの知る限り、そんなことができる一般女性などいない。

貴族のお嬢様はもちろん、

戦闘職についていない若い女性は大抵が平和慣れしていて、

少し血でも流れていようものなら

震えてその場から動けなくなるものである。


その上、彼女は極めて冷静だった。


ぐったりとしたセルゲイを見てパニックになることもなく、

ただ助けることだけを考えていた。

セルゲイの受けた粘液が何だったのかを聞き、

解毒の方法が無いのかとグレイやマリーに食い下がっていた。

アオイに質問を浴びせられることで、

グレイもマリーも何とか頭を動かすことができていた。


結局、解毒の方法は思い付かなかった。

だが、それでもアオイは最終的に何とかしてしまった。

あれには心底驚いた。

アオイの涙が触れた途端、セルゲイの顔色がみるみる良くなっていったのである。


超常現象の類なのかと思ってしまうほどの光景だったが、

驚くべきはその後、アオイが精霊と会話をしていたことだ。

どうやら、聖属性魔法の適性があるらしい。

だとしたら、かなりの逸材だ。

アウスト国としても騎士団としてもその力を貸してほしい場面は多い。


だが、アオイはしばらくこのことは黙っていてくれと言う。

国に報告したらすぐにでも恩賞が出るだろうが、

どうやら訳ありらしい。

セルゲイの一命を取り留めてもらった恩があるし、

本人の意向を無視して報告することはどうにも後ろめたかった。


本来であれば、上へ報告する必要があることだ。

国にとっても多大な利益をもたらす可能性を持っている。


だが、マリーにもアオイのことはしばらく黙っているよう念を押された。

セルゲイとマリーも知っている、何らかの事情があるのだろう。


グレイは非常に悩んだが、ここでアオイ本人の意向を無視して報告したところで

国はアオイの力を借りることはできないだろう。

騎士団や国への心象が悪くなる可能性も高い。

結局グレイは報告の中にこの件を含まなかった。



後日、セルゲイの様子を見に再度森を訪れたところ、

森の入り口でアオイと遭遇した。

何でも、ここで店を開くつもりらしい。

世間知らずのお嬢様がいきなり店を運営するとは中々のチャレンジャーである。

だが、どんな店をやるのかは非常に興味がある。


その日、セルゲイに言われアオイと市場へ行くことになった。

彼女は庶民の生活について知りたいと言う。

自分の力で生きていけるようになりたい、とも。



グレイは元々貴族の家の出身で、魔法も水属性に適性があったが

騎士として剣で身を立てていくことを志した。

アウスト国では魔導師団が設立されていないということもあったし、

自身の努力が目に見えて成果に表れることもあり

剣を振るうことも好きだった。

憧れの騎士もいたし、騎士団に入団することに迷いはなかった。


こつこつと実績を積み、また上官たちにも可愛がられ

気付けば一部隊を任されるまでになっていた。


地位と家柄、自分で言うのはおこがましいがそれなりの容姿。

ある程度のものが揃えば

婚約者探しに夢中のご令嬢たちの格好の的となる。

度々茶会への招待状が仕事場にも家にも届く始末である。

それでも家の付き合いなどもあり、いくつか顔を出してみたこともある。

その度に同じような年頃の娘が目の色を変えて

熱心に迫ってくるのを何とも言えない気持ちで

まるで他人事のように見ていた。


正直、つまらない。


ご令嬢はと言えば、着飾ることやお茶、

そしてグレイの地位、家柄、容姿にしか興味がない。

話が弾まないのである。


まだ一般庶民の娘の方が家業の手伝いなどをして

色々と考えているかもしれない。



だからこそ、失礼な言い方になるが若い女性で

色々なことを吸収し、自分で何かをしようとしているのが

魅力的に見えたのであった。

はっきり言って、興味深い。


グレイは、次の休みには手土産でも持って

セルゲイの家を訪ねてみようと密かに決めたのだった。


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