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まさか聖女だとは思ってなかったので雑貨屋を始めました  作者: しまりす
第一章 雑貨屋準備編
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【閑話】その頃のカイウス帝国(2)

一向に見つからない。


ガイアスは焦りと苛立ちを感じていた。

それもそのはず、聖女召喚の儀を行ってから2週間以上が経過している。

召喚に成功したはずの聖女はいまだ見つかっていなかった。


儀式に立ち会った事情を知る魔導師たちに

王都近隣に居を構える貴族たちに

最近変わったことがないかを聞き回らせたのはもちろん、

王都から離れた地域も含めて国中をくまなく探させている。


まだ帝国全土を探し尽くせたとは言えないが、

主要な地域は見て回ったはずである。

それでも見つからない。

いよいよ国外の線も出てきた。


焦りと苛立ちには大きく2つ理由がある。

1つは聖女が無事であるかどうか。

生死はもちろん、悪事を働くような組織に捕まっていないかなどである。

見知らぬ土地に1人で放り込まれておきながら、

生き延び、衣食住を何とかできているだろうか。

彼女には頼れる者もいないのだ。


もう1つは、他の国に保護されていないかである。

聖女召喚の儀は内密に行われており、カイウス帝国の中枢でも

公にはされていない。

それは、私利私欲のために異界の住人を利用しようとする者から

聖女を秘匿するためである。

他国に保護された場合、それこそ内密に処理され

その国に手厚く保護されるか、

あるいは軟禁される可能性も無いとは言い切れない。

カイウス帝国へ引き渡しを要求したところで

何か理由を付けて拒否されるのが落ちであろう。


異界の住人の魔力は国にとっても相当利用価値があるはずだ。

聖女だと気付かれなかったとしても、異界の住人というだけで

そうやすやすと手放すとは思えない。

最終的には事情を話して丸め込むしかないが、

何せ世界の危機と噂される事象を

他国がどこまで本気で危惧しているかはまだ読めない。

面倒な交渉は無ければ無いに越したことはない。


つまり、ガイアスは他国よりも先に聖女を保護したいと考えていた。


ガイアスは現在の王族の中で最も強い魔力の持ち主である。

聖女召喚の儀には王族の血が必要だと言われており、

そのため魔力量、地位、人柄どれをとっても申し分ないガイアスに

白羽の矢が立ったのだった。


召喚された者と召喚した者が接近すれば、

お互いに何らかの感覚が走ると言われている。

自分の目の届く範囲に聖女が現れれば、絶対に気付くはずなのだ。


ある程度でいいから目星がつかないものか。

ガイアスは呼び出していたユーリに質問をぶつける。


「ユーリ、二千年前に南の島に降り立った聖女は、どうやって発見されたんだ?」

「残念ながらそこまでは記載が無かった。…もう事情を話して他国にも捜索願いを出すしかないんじゃないか?」

「正気か?その国に聖女を囲い込まれるのが落ちだぞ」

「それはそうだが……事情を話して5国で協力するしかないだろう」

「最終的にはそうなる」


何せ、聖女には5国に散らばる5大精霊と契約を結んでもらわなくてはならないのだ。

だがそれは後々の話である。

まずは聖女を擁立し、その後他国との交渉を進めるつもりだった。

世界平和のためにはそんなこと言ってはいられないかもしれないが、

ガイアスも王族であり、国での立場もある。

今後は聖女を保護した国があらゆる実権を握ることになる。

無論、伝承が真実であればの話だが。


「仕方ない。まずは情報収集からだ。各国で変わったことがないか、調査させろ」

「…しらみ潰しに当たっていく気か」

「こうなっては人海戦術しかないだろう」


はぁ、と思わず2人で溜め息を吐く。

ユーリは他国の力も借りて早々に聖女を保護したい考えのようだった。

ガイアスも気持ちとしては同意見だが、

現時点でその選択肢を選ぶわけにはいかない。

ユーリと配下の魔導師たちには申し訳ないが、もう少し働いてもらうことにする。


それにしても、召喚した聖女とは一体どんな女性なのか。

聖女と言われるくらいだから女性であることは確かだろうが、

年齢、容姿、性格、考え方と全く想像がつかない。

聖女と言われるからには高潔な人物なのだろうか。

貴族のお嬢様方よろしく流行とお茶会と玉の輿にしか

興味のないような女だったらどうしてくれようか。


元々ガイアスは社交的なタイプではない。

王族としての執務は問題なくこなしているし、

むしろ仕事はできる方だと言っていいだろう。

だが若い女性の機嫌を取ったり、物腰柔らかなエスコートをしたり

といったことは苦手な部類である。

ユーリの方が向いていそうだ。

いざとなったら聖女の対応はユーリに任せればいいか。


まずは、肝心の聖女を見つけなければ。

ガイアスは世界地図を広げ、目を細めるのだった。


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