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まさか聖女だとは思ってなかったので雑貨屋を始めました  作者: しまりす
第一章 雑貨屋準備編
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ミハエルとの商談

「かなり大掛かりな施策になってしまいましたが、よろしいのでしょうか……」

「こちらとしては心からお礼を申し上げたいところです。これは紅茶界の新たな取り組みになるでしょう」


恐縮した葵に、水鏡に映ったミハエルは穏やかな笑顔で応える。


セルゲイが回復した数日後、

マリーがセッティングしてくれたミハエルとの商談は

結果から言って大成功であった。


ミハエルは葵の持つ知識やアイディアに舌を巻いていたようだが、

なぜこんな小娘がそんな知識を持っているのか、また提案が思いつくのか

疑問に思ったに違いない。

それでも、紹介者たるマリーへの信頼からか、

はたまたビジネスパートナーとして逃したくないからか

葵自身について追及してくることは一切なかった。


葵も葵で、ミハエルの飲み込みの早さと商人としての勘所には恐れ入った。

この世界にまだ無いことも含めた提案だったにも関わらず、

良いものを取り入れようとする姿勢が強く、

商売人として利益もしっかりと見据えた判断をしてくれる。

葵の提案に対して、それを実現するために必要な要素を瞬時に弾き出し、

さらに葵に意見を求めて細かく詰めていく。

ビジネスパートナーとして頼もしい人であることに間違いないと思った。


当初は貴族のお嬢様のお茶会でフルーツティーを

出してもらえれば上々かなくらいに思っていたが、

ダメ元で一応提案したアイディアを

ミハエルが次々と検討し、具体的な計画に落とし込んでいったのだ。


「最初は期間限定で、そのカフェというものをやってみましょう。今回いただいた案の他にも、アイディアがあれば是非いただきたい」

「もちろんです!」


この世界では、紅茶は主に貴族のお茶会や食事で出されることが多い。

また、一般家庭では安価なものが流通しており、

毎日ではないがそれなりの頻度で飲まれているらしい。

つまり、紅茶は家の中で楽しまれるもの。

酒場や食事処のように、外へ飲みに行くものではない。


だが、カフェは良いものであると葵は思う。

美味しい紅茶やコーヒーは魅力的だし、

時間や空間、時にSNS映えなど飲食以外の何かもあわせて楽しめる。


チェーン店のような、手頃な値段で長居できるカフェや、

落ち着いた雰囲気で読書をのんびり楽しめるような喫茶店。

流行を取り入れたドリンクやスイーツが並ぶ最新のお店。

ターゲットによって展開するものも変わってくる。


今回は、フルーツティーの売り出しが主目的の一つなので

可愛らしい見た目と少し甘めの味から

若い女性をターゲットにすることにした。

お土産用に、ドライフルーツやドライフラワーを用いた紅茶の

店頭販売も想定している。


まずはミハエルが1週間程度でフルーツティー用のポットの試作品を

持参して一度こちらまで会いに来てくれると言う。

試作品はこれから下請けの工房へ依頼してくれるそうだ。

葵はそれまでにフルーツティーやお土産用の紅茶を仕上げておく。

ついでにマリーにお願いしてスイーツを試作するのもいい。


ミハエルとの商談を終えた葵は、

試飲を兼ねてドライフルーツを紅茶に浮かべている。


「やっぱり自分でも売ってみたいなぁ……」

「あら、いいんじゃない?」


隣でマリーがカップを並べながら同意してくれる。

葵は、心の中で思っていたことがつい口に出ていたのだと気付き慌てるが、

マリーは思いついたかのように手を合わせた。


「良かったら、うちのお店を使ってくれてもいいわよ?」

「えっ!?いいんですか!?」


まさかの提案に、思わず前のめりになる葵だった。


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