それなりの地位
セルゲイたちは困ったように笑っている。
驚きはあるものの、それでも可愛い孫娘を見るような目で
葵のことを見てくれているのがとてもあたたかい。
言われなくてもここまでの流れで分かる。
葵がかなりレベルの高い魔法を使用したのだろう。
元々目立たないように、異界の住人であることも隠しつつ
生活しようとしていた葵である。
そのことを知っている2人も、その意に沿うように
注意を促してくれようとしているに違いなかった。
恩人たちに何かあってはいけないと防御壁を張った葵は
まず一般にはどの程度の魔法が普及しているのかを
確認してなくてはいけないな、と気を引き締めた。
つい、魔法が色々使えるようになって
ちょっと浮かれていた自分を戒める。
「すみません、セルゲイさん、マリーさん」
「謝る必要は無い。まずはこの家に防御壁を張ってくれてありがとう。…それで、だ。アオイは誰に魔法を教わった?」
「この森を根城にしている精霊たちです。5属性全ての精霊に」
「…5属性全てに適性があるということか。あと聖属性もだったな」
「はい。闇属性には適性が無いそうなので、その6つになります」
「…通常、生活魔法は別として、属性への適性はせいぜい1つか2つがいいところだ」
「そうなんですか」
「シールド系の魔法は複数の属性への適正が必要になることがほとんどだから、それだけでも価値がある」
「…そうですね。……さっき使った2つの魔法は5属性全てがバランスよく使われています」
セルゲイはその言葉に目眩でもしたのか、額に手を当てている。
そしてトドメに聖属性への適性。
異界の住人は精霊の加護を受けることが多く、
魔力量も多いため優れた魔法の使い手となることも多いと言う。
だが、それにしても葵の場合は破格である。というのがセルゲイの見解だ。
その後もセルゲイから魔法の難易度や
一般的な魔導師のレベルについて話を聞いた。
ひとまず、基本的な生活魔法以外は温存しておくのが身のためか。
葵はひっそりと心に誓う。
それから、セルゲイの方へ向き直り、背筋を正す。
「あとは商品開発と…市場を見て回ったり、一般市民の感覚を身につけたら………アウスト国の王族の方と交渉したいと思っています」
セルゲイはしっかりと頷き、優しく微笑んでくれる。
「その時は儂が王族と会談する場を整えよう」
「……やっぱりセルゲイさんって相当偉い方だったんですね?」
「偉かったわけではない。それなりの地位にいただけだ」
「…どんな地位ですか?」
「元、騎士団長だ」
騎士団の、トップではないか。
葵は思わずあんぐりと口を開けて固まってしまう。
偉い人なんだろうと思ってはいたが、まさか団長とは。
「…頼りにさせて、いただきます」
「大船に乗ったつもりでいてくれ」
何とも頼もしい言葉だった。
今回も区切りの都合上少し短めでしたm(_ _)m




