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まさか聖女だとは思ってなかったので雑貨屋を始めました  作者: しまりす
第一章 雑貨屋準備編
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便利な防御魔法

「おはよう。マリー、アオイ」

「セルゲイさん!もう起きて大丈夫なんですか?」

「あぁ。おかげさまでもう何ともない」


リビングへ起きてきたセルゲイの顔色はかなり良く、

すっきりした表情だ。

それを見たマリーにも安堵が浮かんでいる。

この3日間、念のためベッドで寝ていた

セルゲイの体調はすっかり良くなったようだ。

葵も自然と口元がほころぶ。

無事に回復してくれて本当に良かったとしみじみ思う。


サソリを退治し、たまたま葵が解毒に成功したあの日。

ベッドから起き上がることはできなかったが、

夜には寝たまま会話をすることができるくらいまで回復していた。

事の顛末を聞かされたセルゲイは大層驚き、

それから葵のことを恩人だと言ったが

葵はそれはお互い様ですと答え、3人で笑い合えたのがとても嬉しかった。


それから3日。

まだ体調が戻らないようなら回復魔法の一つでも試してみようかと

密かに思っていたのだが、その必要は無さそうだ。


「魔物って強いんですね」


紅茶を啜りながら葵は苦々しげに呟く。

セルゲイは眉を顰め、そのことなんだが…と切り出した。


「通常の魔物であんなのは早々いないんだ」

「あれが珍しかったってことですか?」

「あぁ。…そもそも、突然変異種が現れることも相当珍しいんだが……もう一つ、奇妙な点があったんだ」

「奇妙な点?」


葵は両手で持っていたカップを置き、小首を傾げた。


「アオイは遠目で分からなかったかもしれんが…サソリたちに、変な靄のようなものがかかっていたんだ」

「それが奇妙なんですか?」

「これは儂の勘だから確証はない。…だが、すごく嫌な気配がした。ボスと思われる赤いサソリだけじゃなく、周囲のサソリからもその嫌な気配がしていたんだ」


後でグレイに確認するが、騎士団は相当苦戦していたのではないか。

セルゲイはそう言って紅茶を啜る。

マリーの淹れてくれた温かくて香り高い紅茶は

緊張した身体をときほぐしてくれるかのようだ。


「まぁ何にせよ、今回の件は終わったことだ。また異変があれば情報が入るだろう」


セルゲイがカップに入った紅茶を飲み干すと、

アオイが目の前でティーポットに

魔法で出したお湯を注いで見せた。


「お替わりいかがです?」

「…驚いたな。生活魔法が使えるようになったのか」

「はい!セルゲイさんを驚かせようと思って使ってみました」

「儂が寝ている間に覚えたのか?」

「そうです。3日間、みっちり練習してきました」


そうだ、と思い出したかのように葵は立ち上がる。


「…彼の地を守り、加護を与えよ。フィールドバリア!」


念のため短い詠唱と共に魔法を発動させる。

葵の足元に青い円陣が浮かび上がり、

術名が唱えられた瞬間、一気に広がって霧散した。


「…これでちゃんと発動したのかな?確かめようがないな……」

「アオイ…今の魔法は……」

「念のため、この家にシールドを張ったんです。そこそこの攻撃から一定時間防御してくれるらしいです」


外であれば人間や目標物を中心に円形のシールドを張ることもできるが、

今回は家そのものに魔法をかけている。


「防御だけでは防御壁が崩されてしまったら終わりなので、もう一つ術をかけます」


葵は淡々と魔法の説明をしているが、

セルゲイはそういう説明が欲しいのではない。

唖然としているセルゲイを尻目に、葵は再び詠唱を開始した。


「…彼の地を守るため、悪意を反射せよ。リフレクション!」


術名は葵にも馴染みのある英語が多かった。

葵にそういう風に聞こえているだけなのか、この世界でも共通語として

確立されているのかは定かではないが、覚えやすいので良しとする。


「これで、攻撃を反射することもできるらしいです。正直、どの程度の攻撃に耐えられるかは分かりませんが、かけておいて損は無いんじゃないかと思います!」


葵が良い笑顔で言うと、セルゲイは頭を抱えた。


「いいかアオイ。これを他でやるんじゃないぞ。大変なことになる」

「…………なりますか」


それは先日、結果的にセルゲイの解毒をしたことを

マリーにも「大騒ぎになるわよ」と忠告されたのを

思い出させるような指摘である。


微笑むマリーの隣で、つい真顔になる葵だった。


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