回復魔法
「それで、回復魔法の詠唱を教えてくれるって、本当?」
マリーとグレイにセルゲイを寝室へ運ぶのを任せ、
葵はその場に残って精霊と会話をすることにした。
「…というか、私も魔法使えるの?」
『使えるわよ。魔力が高いから闇属性以外の魔法なら詠唱できるだろうし、仮にアオイの魔力量を超えるような魔法を使いたい場合は精霊の力を借りればいいわ』
「闇属性は使えないんだね」
『アオイの魔力に闇属性だけは馴染まないわ』
闇属性だけが「馴染まない」という言い方が一瞬引っかかったが
そういうものなのか、と深く考えることもなく葵は続ける。
「この世界でよく使われている魔法とか、便利そうな魔法とか…教えてもらうことってできるのかな?」
『それぞれの属性の精霊から教わった方が早いかもね。5属性の精霊なら、この森でも揃うと思うわ』
自然や生活と密着している5属性の精霊たちは
世界各地に住んでいると言う。
ただ、聖属性と闇属性は少し特殊で、世界の中でも限られた場所にしか
生息していないらしい。
聖属性の精霊はこの世界でも特に清らかな空気の場所、
豊かな土地にいると言われている。
とはいえ、精霊同士、ある程度の情報共有は成されているので
少しの回復魔法であればこの精霊も知っているらしい。
魔物のいる世界で、この先どんなことが起きるか分からない。
回復や自衛の手段は持っておくに越したことはない。
そして、自分の世界では魔法というものは存在しない。
物語やゲームの中の話である。
こんな状況だが、正直興味がないわけがない。
「私に魔法を教えてください」
畏まって言うと、精霊は楽しそうに承諾してくれた。
明日には5属性の精霊を森の泉に集めてくれると言う。
この世界を生き抜く上で、また一歩前進しそうである。
明日、森の泉で会うことを約束すると、精霊は家を出て行った。
恐らく他の精霊と話をつけてくれるのだろう。
ちょうどそのタイミングで、マリーとグレイが戻ってきた。
「セルゲイさん、どうですか?大丈夫そうですか?」
「えぇ。アオイのおかげで解毒ができたから…後は少し療養すれば良くなると思うわ」
「アオイ嬢、礼を言わせてほしい。本当にありがとう。君のおかげでセルゲイ様を失わずに済んだ」
「いえ。セルゲイさんを失いたくないのは私も同じです。グレイさんも身体は大丈夫ですか?」
「あぁ。全快とはいかないが、大分落ち着いた。これから騎士団に合流するつもりだ」
「あら…流石にその身体ですぐ動くのは厳しいんじゃない?今日は泊まっていったら?」
マリーが心配そうに言うが、グレイは今回の討伐の報告や後処理があるらしく
のんびりもしていられないらしい。
「今回の件、思ったより毒が強くなく、回復薬を大量に摂取し何とか一命を取り留めた、と報告をしておきます」
「ありがとう、そうしてほしいわ。アオイの涙で解毒した、なんて報告したら大騒ぎになるからね」
「大騒ぎになるんですか?」
「なるわ。そもそも、薬以外の手段で解毒をできることはまず無いのよ」
それ以上のことは話さず、マリーはグレイを見送る。
アオイも隣でぺこりと頭を下げる。
グレイは、王都で討伐の報告を終えたら、セルゲイの様子見を兼ねて
また来ると告げて出て行った。
玄関の扉が閉まると、マリーは先ほどの続きと思われる言葉を呟く。
「回復魔法は特殊で…そもそも聖属性に適性のある人間はほとんどいないのよ」
マリーはのほほんとしてますが、
かなりしっかりしてます。色々と。




