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まさか聖女だとは思ってなかったので雑貨屋を始めました  作者: しまりす
第一章 雑貨屋準備編
19/41

サソリとの攻防

サソリだ。


サソリがいる。

森の入り口まで辿り着くと、視界が一気に開けた。

サソリたちと、セルゲイと騎士の集団が対峙している。


葵とサソリの群れの位置は、今のところ

学校にあるグラウンドの端と端くらいの距離がある。

ひときわ大きい真っ赤なサソリが中心におり、

そのまわりには牛や馬ほどの大きさをした黒々と光るサソリが数匹。

さらに外周には恐らく騎士団やセルゲイに倒され

動かなくなった黒いサソリが大量にいる。


恐らく、この黒いサソリたちは中央にいる真っ赤なサソリを

守るような形で取り囲んでいたのだろう。


「…大きい……これが魔物…」


セルゲイの家を飛びだし、精霊に連れられて森を出た。

眼前には草原が広がっており、街や村に繋がっているのか

いくつかの道が舗装されていた。


サソリは周囲にお構いなしといった感じで暴れ回っている。


それでも、サソリはかなりの数が地面に伏しており

騎士団が着実にサソリを仕留め

追い詰めていっているのだろうということは分かる。


森の入り口からはギリギリ出ずに周囲を観察していると、

セルゲイと騎士団はさらにサソリたちを剣で斬り伏せ

ついにあの赤いサソリだけが残った。

群れを率いていたリーダーのようなものだろうか。


距離はあるがそれでも恐ろしい。

葵は息を潜めてじっと様子を見守る。


赤いサソリがぐるぐると回転し、鋭い鋏を振りかざしている。


騎士団の団員たちが剣で鋏を受け止め、

いなすことで何とか攻撃を凌いでいる。

サソリの攻撃は相当重いようで、攻撃をいなす瞬間に

騎士は反動で後ろに数歩分吹き飛ばされる形になる。


攻撃をいなしている隙間からセルゲイが

空中から飛び込むように斬り込んだが、

サソリはすぐに体勢を立て直し、鋏で跳ね返す。


そんな攻防戦がしばらく続き、

徐々にサソリとそれを取り囲む騎士たちの間に距離ができていく。


中々状況が変わらず、攻防を繰り返す中で

騎士たちの息は少しずつ上がっていく。

サソリの方は体力が削られているのかどうかも分からない。


「セルゲイさん……大丈夫かな…」


先ほど別の騎士を踏み台にして空中からサソリに飛び込んだ一撃は

正直見事なものだった。

騎士団引退後も鍛錬を怠っていないのだろう。

はっきり言って咄嗟にできる動きではない。


そんな熟練の猛者と現役の騎士団をもってしても

苦戦するような相手なのか。


しばらく同様の攻防を繰り返していたが、

中々攻撃が通らず作戦変更が必要かと思ったのか。

騎士たちがサソリに斬り込んでいく手が少し止まる。


その瞬間、サソリが突然尻尾を振り上げて勢いよく振った。


「全員防御しろ!!」


いち早く叫んだのはセルゲイだった。

何と言っているかまでは葵には分からないが、

緊迫している様子だけは伝わり、思わず息を飲む。


『こっちまで飛沫が届くなんて強烈ね』


葵の目の前にはシールドのようなものが張られていた。

濃い緑色のような粘液がシールドに弾かれて地面へ落ちていく。

この壁は精霊が出してくれたらしい。

ありがとう、と涙目でお礼を言うと得意げにウインクしてくれる。


「セルゲイさんたちは……!?」


顔をあげると、それまで戦っていた騎士たちが膝をつき、

その中でたった1人だけ、騎士がサソリに突っ込んでいくところだった。


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