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まさか聖女だとは思ってなかったので雑貨屋を始めました  作者: しまりす
第一章 雑貨屋準備編
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【閑話】その頃のカイウス帝国

「まずいことになったな」


次期国王ガイアスは己の執務室で

魔導師長であるユーリと向かい合っていた。


先日召喚の儀を行ったが、そこには何も現れなかったのだ。

国王命令で行われた、必ず成功させなくてはいけない儀式であった。

何せ世界の存亡がかかっている、少なくとも国王はそう思っている。


「儀式自体は成功していた」


ユーリは肩まで伸びたプラチナブロンドの髪を揺らし、苦々しげにそう呟く。

公の場では当然敬語を使っているが、今は2人しかいない。

もともと同世代で、国の運営する

優秀な魔導師や騎士、国を担っていくであろう面々が

鍛え上げられる学校で共に育った中である。


ユーリに至っては大出世で、前魔導師長はもっと年が上だった。

若くしてこの地位についたことでそれなりに苦労もしてきたが

最終的には己の実力で周囲を黙らせてきた。

穏やかそうな見た目に反して中々の武闘派である。


「描かれた陣は確かに発動した。ここからは推測なんだが……」


ユーリがこの儀式や過去の文献を調べに調べた結果、

推測ではあるが一つの結論に辿り着いたと言う。


今回召喚しようとしたのは千年に一度この世界を包むと言われている

瘴気を消し去ってくれる異界の聖女である。

具体的な方法としては、現在5つの大国、それぞれが保有する神殿に

祀られている5属性全ての大精霊と契約を交わし、

その身に宿す聖属性の魔法とあわせて結界を張るというもの。

これも伝承の通りなので真実かどうかはやってみないと分からない。

契約の方法や結界を張る方法については書かれておらず、現時点では不明である。


「聖女は恐らく相当な魔力の持ち主だ」

「本当に聖女ならば、そうだろうな」

「…お前はまたそういうことを…」


ガイアスはしれっと言う。

一魔導師が言えばすぐに首が飛びそうな台詞である。


ガイアスは元々自分が見たこと、聞いたことしか信じない。

人を介した情報や片方の言い分だけでは

全体像や真実が見えない場合があることを

身をもって知っているからだ。


「で?」

「聖女がこの世界でやりたいことができるところに召喚されたんじゃないかと思うんだよ」


そんなことがあるのか?と口には出さないが

ガイアスがユーリを訝しげに見ている。


「二千年前に現れた聖女は、平和な世界で暮らしたかったという潜在的な願いがあったらしい。彼女は召喚された儀式の場ではなく、当時最も戦争から無縁な南の島にいたそうだ」


二千年前ともなれば、小国がひしめき合い戦乱も絶えなかったであろう時代。

そして当時の聖女も平和でない世界からこちらへやってきたということか。


「その仮説が本当だとしたら……今回召喚した聖女は一体どんな願いをもってどこにいる?」

「俺たちも仮説を立てて当たっていくしかないな」


年頃の女性が望むものとは何か、検討もつかない。

ひとまず前例にならって平和そうな土地も探しておくことにする。


ガイアスとユーリもそれぞれ近親の女性に望みを聞いてみた。

優雅な暮らしをしたい、大好きな殿方と結婚したい、

流行最先端のドレスが欲しい、新作のお菓子を食べたい。

平和ボケと言うべきか、それしかないのかと言うべきか。

ガイアスは頭を抱えていた。


「これを望みと言うならそうなんだろうが……有力な貴族の家でも当たるか?」

「一応、各貴族に最近変わったことがないかは確認を取るとしよう」

「ユーリ、お前だったら何を望んでいると思う?」

「俺は……そうだな、5属性以外の魔法を使えるようになりたい、かな」

「…お前らしいな」


5属性以外の魔法とは、聖属性と闇属性のことである。

5属性はいずれも大精霊の存在が確認されており、

5大国が1つずつ契約を結んでいるため

全世界で生活魔法や基本魔法を使うことが可能だ。

とはいえ基本的な魔法以外、例えば攻撃魔法や特殊魔法は

特性があってもせいぜい1つか2つ、3つ使える者は稀だ。

だがユーリは、得意の差はあれど5つの属性魔法全てを使える。


そこに満足せず、さらに魔法を極めようとしているのが

ユーリのすごいところだとガイアスは思う。


「お前は?」

「叶えてもらいたい願いは無いな」

「お前らしい答えだな」


ガイアスは次期国王として、様々なものを見据えている。

国の統治、民の安寧、経済の発達、文化の発展。

あらゆるものをこの男は自力で達成していくのだろう。


「けど、今の望みは聖女様を見つけることだな……」

「違いないな」


ユーリの溜め息まじりの呟きに、ガイアスも苦笑するのであった。


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