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まさか聖女だとは思ってなかったので雑貨屋を始めました  作者: しまりす
第一章 雑貨屋準備編
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【グレイ視点】騎士団の青年

前話のグレイ視点です。

俺はいつものように酒を受け取るためにセルゲイ様の家に立ち寄った。

今回の討伐部隊は第3と第4部隊の合同編成だ。

第4部隊を率いる俺は、セルゲイ様とも親交が深いので

大体この役回りを引き受けている。


今回の討伐。

セルゲイ様たちの住む森からさらに南へ進んだ先にある

村落の近くに、魔物の群れが現れたという報告があった。

形状はサソリによく似ていて、サイズは牛や馬程度。

だがその群れを率いているサソリが一回り大きく、

色も群れを成しているサソリと異なる発色をしているらしい。

もしかしたら突然変異種かもしれない。


幸いまだ人間の負傷は無いらしいが、

村落の近くの森はかなり荒らされた跡があったらしい。

今回報告をあげてきたのもその村の者だ。

村落が襲われないかどうか、気が気でないだろう。


討伐部隊が向かうより早く、偵察部隊を放ってある。

早々に情報を集め、なるべく万全の体制で確実に臨まなくては。

そんなことを考えながらセルゲイ様の家に到着した。

予定より早く着いてしまったが、ひとまず玄関の戸を叩く。


「はい」

「っ!?お、女の子……?」


はい、という凛とした声。

扉が開くとそこには見たことのない若い女性が立っていた。

討伐のことを考えてぼうっとしていたのもあるが、

まさかセルゲイ様の家から若い女性が出てくるとは夢にも思わず

咄嗟のことにかなり動揺してしまった。


黒くて艶のある髪は肩より少し長く、

紺色のワンピースはシンプルながらも上品な印象だ。

胸元にネックレスが付いているが、

かなり高価な宝石に見える。

どこかのご令嬢だろうか。


女性はしばらく俺のことを見てから、

はっと我に帰り名乗ってくれた。


「すみません、私はこちらでお世話になっております、アオイと申します」

「ここで…?」

「今セルゲイさんたちを呼んできますね。中でお待ちください」


そう言うと、俺が名乗るのを待たずにさっさと中に入ってしまう。

セルゲイ様とマリー様の世話になっている…?

一体どういう経緯だろう。

あのセルゲイ様がまさかご令嬢の面倒を見る?珍しいこともあるものだ。

考えても答えは出ないので、俺はいつものように

リビングの一角にあるウッドチェアに浅く腰掛けていたら、

奥の部屋からセルゲイ様が出てきた。


「セルゲイ様!」

「グレイ、儂はもう引退した身だ。そのセルゲイ様っていうのはやめろと何度言えば分かるんだ」

「騎士団にとってセルゲイ様はセルゲイ様です」


先ほどアオイと名乗った女性がこちらを見ていたので、

俺も視線をあわせてにっこりと笑った。

名乗っていなかったことを思い出し、丁寧に告げる。


「先程は名乗れずすみません。私はグレイ。騎士団の者です」

「グレイさんですね。よろしくお願いします」

「セルゲイ様、マリー様、こちらの女性は?」

「マリーと繋がりのある貴族の家の出でね。体が弱くて療養していたんだ。元気になったから今は本人の希望もあって仕事を手伝ってもらっている」

「貴族のお嬢様が、仕事の手伝いですか」


貴族のご令嬢といえば、流行りの服、紅茶とお菓子、

結婚相手と恋愛の話にしか興味が無いと相場が決まっている。

確かに、王都で見かけるご令嬢たちと少し雰囲気は違う気がするが。

あるいは相当な変わり者なのだろうか。


療養は終わったらしく、肌は血色が良い。

今まで会ったことのないタイプの女性で、

何よりあのセルゲイ様が目をかけているように見えて少し興味を持ったが、

今は油を売っている暇はない。

セルゲイ様から早々に酒樽を受け取る。


「いつもありがとうございます」

「こう見えてグレイは騎士団でもかなりの腕前の持ち主なんだ」

「そうなんですか!お若いのにすごいですね」

「ありがとうございます。ですが、私はまだまだです」


お礼を言うと、セルゲイ様はアオイ嬢に向き直って

俺のことを紹介してくれた。

セルゲイ様に褒められるのは素直に嬉しい。

もちろん、まだまだだと分かってはいるが。


「今回の討伐は?」

「ここより南の村落付近に少し変わった魔物が現れたらしいです」

「突然変異か…?」

「ええ。気を抜けません」

「回復薬の在庫も少しある。何かあったら持って行ってくれ」

「お気遣いありがとうございます。それでは」


俺は酒樽を抱え、セルゲイ様の家を後にした。


この時は、きっと今回の討伐もいつも通りに終わるだろうと

どこかで楽観視していた。

それが甘かったと思い知らされるのは、もう少し先のことだ。


グレイはアイドル系というか、甘めで優しい感じのタイプです。

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