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まさか聖女だとは思ってなかったので雑貨屋を始めました  作者: しまりす
第一章 雑貨屋準備編
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着々と進む準備

やっぱり、雑貨屋さんをやりたい。


商品の構想を練っていると、

あんなものやこんなものを並べて

同年代や少し年上の女性に手に取ってもらって

喜んでもらいたいという願望が出てくる。


コンセプトは、暮らしの中でちょっと贅沢できるもの。

一般流通品よりほんの少し値段が高いが、

その分生活や自身にゆとりや潤いを与えてくれるもの。

無くても困らないけれど、あると心が豊かになるもの。


現時点でざっくりと見通しが立っているものは

フルーツティーとサングリア。

ハーブティーや、ゆくゆくはチャイにも目を付けている。


それから、次にバスソルトも狙っている。

お風呂自体は全家庭に普及しているようなものではないが、

王宮にはそれなりの数の浴槽があり、貴族の家にもあるそうだ。

村落には共有で設備が建てられることが一般的だそうなので

これは銭湯のようなものだろうかと思われる。

一方で、セルゲイたちのように村落から離れたところに

住む者の家には完備されていることが多い。

共同の風呂が無いからだ。


本来であれば働く一人暮らしの女性が

ちょっとした自分へのご褒美に使えるようなものに

したかったのだが、バスソルトに関しては

美意識の高い貴族のお嬢様向けになりそうだ。

村落にはバスソルトでなく色のつく入浴剤の方が

使い勝手が良さそうだが、こちらは保留である。


「あの、商品開発にあたって私も色々購入したいんですけど、そのために元手を作りたくて…」


帰宅後、セルゲイに話を持ちかける。

資金作りのために持ち物を売れないか、という相談である。


こちらの世界に来た時に持っていたバッグとその中身や着ていた服など

多くはないが売れるものはいくつかある。

ただ、売り先が問題である。

そもそもこちらの世界では一般流通していない一点物になってしまう上に、

現時点では異界の住人であることも隠しつつ売りさばきたい。

そうなってくると、それこそ闇商人にでも

流すしかないのだろうかと思ってしまう。


「何とか上手く売れる先ってありますかね?」

「資金を作りたいのなら、儂とマリーの仕事を手伝ってくれた分を給金として出すが?」

「いえ。寝る場所や食事までいただいているんです。そこまでしていただくわけにはいきません」


セルゲイの申し出を頑として拒否する。

うっかり異界の住人が落ちてくるところに遭遇してしまったばかりに

負担を強いるわけにはいかないし、申し訳なくなってくる。

もちろん商売をやるからにはそれなりに利益を出し、

セルゲイたちに還元するつもりであるが

それがいつになるかはまだ分からない。

商売の元手くらいは何とか自分で捻出したい。


「そうだな…アテが無いこともない。理由は適当につけることになるだろうが」

「本当ですか?」

「あぁ。少し連絡を取ってみよう。数日待ってくれるか?」

「分かりました」


数日待つ間に、商品開発に向けて必要なものをピックアップする。

主に果物、それから砂糖やガムシロップのような甘味料、

レモングラスやミントのようなハーブに、

あればシナモンのようなスパイス類。

資金と相談しなくてはいけないので、品や量の優先順位も付けておく。

セルゲイとマリーの知り合いから仕入れられそうなものはそこへ頼み、

無いものだけを商会から仕入れる予定である。


もし葵が自分の世界でお店を持つとしたら、

商品を買い付けるところからだろう。

まさか商品の生産からやることになろうとは。

これはこれで面白いし、かなり良い経験になる。


同時に、セルゲイとマリーの仕事の手伝いももちろんしている。

マリーの紅茶の納品はあっさりしたもので、

ミハエルから届いた紅茶を軽く検品した後は

そのまま同様に魔法で王宮へ送るだけであった。

あまりにも簡単な流れで拍子抜けしたくらいだ。


だが、今回は定期的な発注だったからで、時折季節ものや

茶会に使用する特別な茶葉を求められることもあり、

その際はマリー自らが出向いて実際に紅茶を淹れたり

説明をしたりもするそうだ。

今後その機会があれば同行させてもらうことになっている。

少し楽しみだ。


セルゲイが今回仕入れた酒類は比較的安価なものだそうで、

騎士団が次回の遠征時に持っていくものらしかった。

目的とした討伐が終わったら、王都に帰るのを待たずして

野営の際に酒が振舞われるらしい。


「野営をするってことは、近くに村とかもない場所に行くんですね」

「アウスト国は自然が豊かな分、魔物も多いんだ。突然変異でたまに相当危険な魔物が現れることもある」

「魔物……」


いるんだ、魔物。

思わず葵はごくりと喉を鳴らした。

日本でも熊と遭遇してしまって、みたいなのはあるが

騎士団が討伐に行かなくてはいけないレベルの魔物となれば

その規模も危険度も全く違うものなのだろう。


「今回はこの森の近くを通って、さらに南に行くことになる。途中で立ち寄って持って行くそうだ」


昨年店を閉めてからはほとんどないが、

そうしてたまに騎士団が遠征がてら

ここに立ち寄って行くことがあるらしい。

セルゲイと顔見知りの団員もいるので、

遠征帰りに少し長居をしていく者もいるそうだ。


葵にとっては初めての来客になる。

現役の騎士団。どんな感じだろうか。

少しわくわくしつつ、魔物についても

今後知識を得ておかなければと思う葵なのであった。


葵は魔物に関する知識として

具体的には出現地域(突然遭遇する可能性等)や対策について

知っておかなくては、と思っています。

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