第六十四章 差し違える理、崩壊の城
アレクシスは冷ややかに笑った。
「オリジナルとアバターの感動的な再会だな。
だが、感傷で世界は変えられない。
お前が分身に情を託したところで、
何が変わる?」
彼は石板に手をかざした。
黒い光が脈動し、空間が歪み始める。
「観測者よ。お前も終わりだ。その肥大した城ごと、
俺の理で上書きしてやる」
「させるかよ」
オリジナル太一は静かに呟いた。
彼の肉体が、急速に発光し始めた。
城壁と同化していた魔力回路が、
逆流を始めたのだ。
それは自壊のシーケンスだった。
「なっ…!? お前、正気か!?」
アレクシスの表情が初めて歪んだ。
「俺は理の観測者だ。
安全な場所から見ているだけの臆病者だ。
だが、今だけは違う」
魔力回路の逆流により、融合が解けた玉座から
オリジナル太一は立ち上がった。
城そのものが軋み、崩壊を始める。
「 何をする気だ!?」
アレクシスが叫ぶ。
「リーネ、お前の相棒を連れて逃げろ!
遠くへ!」
オリジナル太一は叫んだ。
「アレクシス、お前の言う通り、
俺とお前は同じ異界の住人だ。
俺はもう、
お前みたいに世界を書き換えようとは思わない。
俺はただ、俺と同じお前みたいな
この世界を壊すクソ野郎をここで止める!」
論理都市の全魔力が、
太一の肉体に収束していく。
城壁が剥がれ落ち、
塔が崩れ落ちていく。
その莫大なエネルギーが、
地下迷宮の座標へと向けられた。
「くそっ! やめろ! 城が崩壊すれば、
お前も消滅するぞ!」
アレクシスは石板の制御に失敗し、焦り始めた。
「ああ、俺のゲームは一旦終わりだ。
だが、この世界で俺の分身のゲームはまだ続くからな」
太一は笑った。
かつて日本の六畳一間で死んだ時と同じように、
しかし今は後悔はなかった。




