第四十五章 王都の反応、忍び寄る影
その日の午後、
太一とリーネはギルドへ向かい、
掲示板の前で新たな依頼を探していた。
その時、背後から声をかけられた。
「おい、あんたたち」
振り返ると、そこには見知らぬ男が立っていた。
フードを目深に被り、顔は見えない。
だが、その服装は粗野で、どこか違法な雰囲気が漂っている。
「なんだ?」
リーネが警戒し大剣に手を伸ばす。
「ここじゃなんだ。表に出よう」
男は短く言い、先に立って路地裏へと歩き出した。
「怪しいな…」
「行くぞ。罠でも何でも受けて立つ」
リーネが太一の手を引いた。
路地裏に入ると、
男は振り返り、フードを少しだけ持ち上げた。
その顔には古い傷跡が走っていた。
「俺は『影』ってモンだ。依頼で動く情報屋だ」
「情報屋が俺たちに何の用だ?」
「忠告だ。ルシア様はただのコレクターじゃねぇ。
彼女は赤牙と通じてた」
太一の心臓が跳ねた。
「赤牙…!」
「あんたの力を『鍵』として利用しようとしてたんだ。
王都の地下にある『理の遺産』を開くためにな」
男は懐から一枚の古い羊皮紙を取り出し、広げた。
そこには、複雑な魔法陣と、見慣れない文字が書かれていた。
「これがその遺産の設計図の一部だ。
赤牙はこれを何年も探してた。
そして、あんたのその制御する魔力は、
この設計図を起動させるトリガーになり得る」
太一は羊皮紙を見た。
その文様は、
彼がこの世界で見てきた魔法陣とは異質だった。
あまりにも…人工的で、幾何学的で、
そして彼自身の魔法使用時の魔法陣と似通っていた。
(これは…俺の魔法と同じ系譜?)
「ルシアは失敗した。だが、赤牙はまだ諦めてねぇ。
あんたが王都にいる限り、必ずまた来る。用心しろ」
男は羊皮紙を太一に押し付け、闇の中に消えた。
太一は羊皮紙を握りしめた。
(俺の力は…鍵なのか。そして、
この世界には俺と同じ「理」を持つ遺産があるのか)
彼はリーネを見た。
彼女も真剣な顔で羊皮紙を見ている。
「タイチ、これはデカい。お前の過去とも関わってるかもしれない」
「ああ…。でも、同時に危険だ。赤牙がまた俺たちを狙う」
リーネはニヤリと笑った。
「上等だ。今度はこっちから食ってやるよ」
太一も覚悟を決めた。
もう逃げない。
自分の正体も、この世界の謎も、全部抱えて進む。
彼にはリーネという何よりも頼もしい相棒がいるのだ。
「行こう、リーネ。この謎、解き明かすぞ」
「おうよ、相棒!」
二人は王都の喧騒の中へと戻っていった。
その頭上には、まだ見えない影が広がっていた。




