第四章 空白の玉座、孤独の完成
建国作業と並行しつつ
さらなる他国からの討伐軍もことごとく撃退し、
彼の王国は一時の平穏を得ていた。
だが、太一の周囲には誰もいなかった。
彼は玉座の間から一歩も動かず、
配下たちも彼の声を魔法的な通信を通して聞くのみだった。
彼が彼らの視界に現れることはない。
それは、彼自身が自分の姿を嫌悪していたからだ。
彼が見ているのは、常にウィンドウの向こう側の数値だけ。対人関係のパケットロスは、
この世界でも治っていなかった。
いや、彼が意図的に通信を遮断しているのだ。
彼は孤独だった。
だが、それはかつての
六畳一間の孤独とは質が異なっていた。
かつての孤独は、世界に相手にされない無力だった。
今の孤独は、世界を飲み込み、咀嚼し、
理解し尽くした果ての飽和だった。
「……俺は、俺というキャラクターをクリアしたんだな」
太一は独り言ちた。
彼は王国を築いた。
だが、それは彼が望んだユートピアではない。
ただの、彼の過剰な自意識と知性が排出した
計算結果の残骸だった。
彼は窓のない玉座の間で、冷たい天井を見上げた。
(クリアしたのに、エンドロールが流れない)
彼の王国は、
他者との繋がりを求めて始まった
ゲームの延長線上にあったはずなのに、
いつの間にか、
誰もプレイヤーのいない
シングルプレイの砂遊びになっていた。
それでも、太一は玉座に深く沈み込む。
彼の肉は玉座と同化し、王国そのものとなっていく。
「まあ、いいか」
彼は目を閉じた。
彼の意識は、
配下の兵士たち、
城壁を這う虫、
風に揺れる草の一本にまで広がっていく。
コミュ障のキモデブオタクは、
異世界で無双し、自らの王国を立ち上げた。
だが、その王国の正体は、
彼自身という巨大な孤独の牢獄だった。
彼は世界を支配したのではない。
ただ、自分自身という壁で世界を塗りつぶしただけだった。
そして、その壁の内側で、
彼は今も静かに、
無限に続くゲームの戦略を練り続けている。
彼に心満たされる終わりは来ない。
彼が自らの孤独をクリアできない限り。




