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『肉塊の玉座と理の王国』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第三章 孤王の侵食、幾何学の城

 3年が経過した。

 

大陸の北東に位置する

呪われた荒野『嘆きの湿地帯』。

そこに、奇妙な城郭都市が築かれていた。

 

城壁は直線と円弧だけで構成され、

見る者に生理的な嫌悪感を抱かせるような、

しかしどこか神聖な幾何学模様を描いている。

それは城というより、巨大な演算装置であった。

 

玉座の間には、太一が座っていた。

彼の体型は変わっていない。

むしろ、

運動不足と魔力の過剰摂取で、

さらに球体化が進んでいる。

その身体は、玉座に融け込んだ肉の彫刻のようだった。

 

彼の王国『論理都市(ロジック)』は、

恐怖と効率によって成り立っていた。

 

彼は配下の魔物や落ちこぼれた亜人たちに、

感情に基づく命令を下さない。


「ここを掘れ」

「あそこを守れ」

「この物質を精製しろ」


すべてが最適化された手順書として配信される。


 彼らは太一を『饐えた肉の孤王』と呼び、

そして同時に『理の絶対者』として畏怖した。


彼の命令に従えば、

不思議と腹は満ち、傷は癒え、死なずに済むからだ。

彼が編み出す戦術は、

犠牲者を極小化した冷徹なものだった。


 「リヴェリア王国の討伐軍か……」

 

報告に来たのは、

リザードマンの老族長だった。

彼は床に伏せ、震えている。

太一の視線が、

彼の生命力を数値として読み取ることに怯えているのだ。

 

「敵戦力、三万。対して、我が軍は五千。

どうするのですか、我が王」


 「抗う必要はない」

 

太一は太い指を組んだ。

 

「彼らは補給路を伸ばしてきている。

この湿地の地盤は、重量物の移動に適さない。

三日後には、彼らの陣形は菱形に歪む。

その重心の崩壊点、座標X-34に、

『土煙の呪法』を撃ち込み、

その混乱に乗じて五千の兵で奇襲をかけろ、

それだけでいい」


 「……それだけで、勝てるのですか?」

 

「勝つわけではない。彼らは自壊する。

我々はその残骸を回収するだけだ」

 

太一の言う通りになった。

三万の軍勢は、

土煙の視界不良、

奇襲による混乱、

泥濘と崩壊した陣形による同士討ちで壊滅し、

彼の王国の肥料となった。

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