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第三十二章 観測者の微かな共鳴
玉座の間で、
太一はスクリーンの中のリーネを見つめていた。
(傷跡だらけの体か…俺には…傷がない)
彼は思う。
傷とは、生きているからこそできるものだ。
痛みを感じるからこそできるものだ。
リーネは、痛みと向き合い、それでも生きている。
分身の太一も、それに気づき始めている。
(俺は…痛みから逃げて、この玉座に座った)
それが正解だと思っていた。
痛みを排除した最適化こそが、
彼の辿り着いた「理」だった。
しかし、痛みを抱えた二人は、
彼の「理」では到達できなかった場所に立っている。
互いを思いやり、
笑い合い、
助け合い、
照れ合う場所に。
オリジナル太一の巨大な意識の中で、
何かが決壊しそうになるのを感じた。
「俺も…俺も、傷つきたい」
その衝動を抑えるために、彼は必死に演算を続けた。
まだだ。まだ俺の出番じゃない。
彼は自分に言い聞かせるように、
スクリーンの中の二人を見つめ続けた。




