第二十四章 夜の語らい
森を抜けた先の村で、二人は少女を預けた。
少女は「ルナ」と名乗り、太一たちに懐いて別れを惜しんだが、村の老婆が引き取ることになった。
その夜、宿屋でのこと。
太一は窓から星空を見上げていた。
リーネが離れたベッドで寝転がりながら話しかける。
「なあ、タイチ。今日の魔法…すごかったな」
「ああ…でも俺もよくわからないんだ。
ただやろうと思ったら体が動いて…」
「ふーん。まあいいさ。結果オーライだろ?」
リーネは起き上がり、太一の方を見た。
「あたし思うんだけどよ。タイチは自分のこと何もわかってねぇみてぇだけどよ。でもそれでいいんじゃねぇか?」
「え?」
「記憶がねぇなら、これから作ればいい。
自分が何者かわかんねぇなら、
なりたいものになればいい。
あたしはただの剣士だけどよ。
一緒に旅してて思うんだ。
タイチは優しい奴だって」
太一は驚いてリーネを見た。
優しい。自分のような人間を?
殺人級の力を持ったコミュ症のバグった存在を?
「優しくなんかないよ…俺は…」
「優しいさ。あの森でルナを助けた時のお前の顔。
あたしじゃ到底真似できねぇくらい真剣だった」
リーネの言葉が太一の胸に染み込む。
彼女は自分の過去も正体も知らない。
ただ行動で判断してくれている。
(ありたい自分になれるのか)
リーネのおかげで
新たに生まれ変われるような
新鮮な希望が心に芽生えた気がする。
「ありがとう、リーネ」
「へへっ。礼には及ばねぇよ。
じゃあ寝るか! 明日も早ぇぞ!」
リーネは再びベッドに潜り込んだ。
太一も自分のベッドに横になる。
天井を見上げながら考える。
(俺は厚地太一。記憶喪失の旅人)
今はそう名乗ろう。
過去の自分に縛られず、今の自分で生きよう。




