第二十三章 観測者の共鳴
玉座の間で、オリジナル太一は震えていた。
分身が放った魔法。それは単なる攻撃魔法ではなかった。
魔力回路への干渉。構造式の書き換え。
(あれは…俺の力だ)
彼自身が持つ
「世界の構造式を視る眼」と同じ根源にある力だ。
だが、分身には「眼」がないはずだ。
なのに、どうやって回路を見抜き、書き換えたのか?
(感覚だと? 直感だと?)
あり得ない。そんな非論理的なことで、
あんな精密な操作ができるはずがない。
しかし、事実として分身はやったのだ。
太一は思考を巡らせる。
分身と本体。二つの「厚地太一」。
魂を分割した時、何かが予期せぬ方向へ変容したのではないか?
(もしかして…あいつは俺の「無意識」なのか?)
俺が理性で抑圧してきた感情、直感、衝動。
それらが分身の中で結実し、俺にもできない奇跡を起こしたのか?
太一の巨大な脳に、新たな仮説が浮かぶ。
分身は単なるアバターではない。
彼自身の可能性の一つだ。
壁を作らず、他者に触れ、感覚で生きるもう一人の自分。
(なら…俺はどうなる?)
玉座に同化したこの肉体は、もはや人間の姿には戻れない。
だが、分身を通じて何かを得たならば、
心だけでも人間として、心満ちながら死ねるかもしれない。
太一はスクリーンの中の自分を見つめた。
少女を背負い、リーネと笑い合う自分。
その姿は、かつて夢見た「勇者」の姿そのものだった。
(俺も…笑いたい)
その思いが、彼の中で確信へと変わっていく。
観測はまだ終わらない。




