第十九章 観測者の決断
玉座の間で、
オリジナル太一は身じろぎもせず
スクリーンを見つめていた。
分身と少女の共闘。
それは彼がかつて夢見た
「理想的なレイド」そのものだった。
だが、彼自身は玉座に座り、
安全圏から命令を下す指揮官だった。
自ら血と泥にまみれて剣を振るうことなどしなかった。
(俺は…ただ見ているだけだ)
その事実が、彼の心を苛んだ。
分身の太一が傷つき、血を流し、
それでも仲間と笑い合う。
対して自分は、城壁と同化し、
ただ冷たいデータとして彼らを見下ろしている。
「……」
太一の巨大な意識の中で、ある衝動が芽生え始めていた。
それは論理では説明できない、破滅的な欲求だった。
(俺も…あそこにいたい)
その瞬間、城全体が激しく揺れた。
論理都市を構成する幾何学模様に、
大きな亀裂が走る。
太一の感情の揺らぎが、
城そのものの構造式を書き換え始めたのだ。
「くっ…まだだ…まだ同期は完了していない…」
彼は自分を律しようとした。
彼が崩壊すれば、分身も消える。
リーネとの絆も消滅する。
だが、抑えきれない羨望と孤独が、
彼を突き動かす。
(どうすれば…俺も「プレイヤー」になれる?)
戦いは終わった。
ラバトの西門には、
勝利の歓声と重傷者の呻き声が響いていた。
太一とリーネは血と泥にまみれて座り込んでいた。
「はは…生きてるな、タイチ」
「ああ…生きてる…リーネ」
二人は顔を見合わせて笑った。
その笑顔には、何の偽りもなかった。




