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『肉塊の玉座と理の王国』  作者: ぷっぷくクリーナー


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第十四章 重躯の稽古、触れ合う剣

街道沿いの廃村を後にして、二人は更に西へと進んだ。


リーネの目的地は、商業都市『ラバト』だった。

そこなら太一の奇妙な服も加工できるし、

仕事も見つかるという。


「さて、休憩がてら稽古だ、タイチ」


昼休み、

リーネが木陰に座り込んでいた太一を蹴り起こした。


「け、稽古…?」


「あぁ。お前のその魔法、

当たり前みたいに使えるようにはなってきたが、

まだビビりすぎだ。

いざって時に腰を抜かされたら意味ねぇ。

だから、体に覚え込ませる」


リーネは地面から適当な枝を拾い、

太一に投げつけた。

太一が慌てて受け取ると、

リーネもまた枝を構えた。


「俺が攻撃する。お前はそれを弾く。いいな?」


「む、無理です…俺、運動神経ゼロですし…ゲームなら…」


「……ゲーム?何だそれ?いくぞッ!」


リーネの枝が、空気を裂いて突き出された。

速い。太一の目には、

それが致死量の殺意を持った刃に見えた。

悲鳴を上げそうになり、本能的に目を閉じて腕を交差する。

パシッ!

枝が太一の腕に当たる。

痛みは鋭いが、皮膚を裂くほどではない。


「目を閉じるな! 見て避けろ! 弾け!」

リーネの怒声が飛ぶ。


それから数時間、太一は一方的に打たれ続けた。

百二十キロの巨体は鈍重そのもので、

避けるどころか防御するのもやっとだ。

汗だくになり、

息が肺を焼き、

心臓が破裂しそうになる。

何度も投げ出そうとした。

彼は元来、諦めることにかけては天才だったから。

だが、リーネは決して手を抜かなかった。

そして、太一がへたり込むと、

不器用に水筒を差し出してくれた。


「…なんで、そこまでしてくれるんですか…?」


太一は荒い息の下で尋ねた。


「あたしは、弱い奴が嫌いじゃねぇ。

ただ、死なれるのが嫌なだけだ。

お前がもしあの魔法で暴走して、

自分ごと焼け死んだら、寝覚めが悪いだろ」


リーネは視線を逸らして言った。


「それに…あたしも昔、お前みたいにビビリで、

何もできなかった。

剣だけが、あたしを繋ぎ止めた」


その言葉を聞いた時、

太一の中で何かがカチリと嵌った。


彼女もまた、孤独と恐怖を剣で切り裂いてきたのだ。


太一は震える手で枝を握り直した。


「もう一回…お願いします」

「おう!」


次の突き。

太一は目を閉じなかった。

パシッ! また腕に当たる。

だが、ほんの数ミリ、腕が動いた。

かつてゲームで熟知した

「敵の攻撃モーション」。

脳内の映像と、目の前の現実のリズムが、

ゆっくりと同期し始めていた。

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