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まだ知らなかった距離  作者: 遠井エイト
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第4章 パート1 — 本屋まで

本屋まで — カイト


進路面談の告知からいくつか授業が過ぎても、その話題は教室のあちこちに、まだ終わりきらない形で残っていた。生徒たちは授業の合間にその話を持ち出し、テストの点や部活の予定について話すときと同じ気軽さで、大学を比べ合っていた。午後になる頃には、もう誰もそれに特別影響を受けているようには見えなかった。


カイトは黒板の最後の一行を写してから、ノートを閉じて鞄に滑り込ませた。周囲では、授業が終わって気が緩んだクラスの中で、椅子が床をこする音がしていた。


窓際の誰かが選択科目の単位について言い合っていた。ユキの列の後ろのどこかでアイコが笑い、別の生徒が受験への不満を、教室の半分に聞こえるくらいの声でこぼしていた。


いつものざわめき。


いつもの流れ。


それでもカイトは、いつもより多くユキの方を見ていることに気づいた。


まっすぐではない。ほとんどは、何かのついでのような瞬間だった。


生徒たちが次の教室へ移るために立ち上がるとき。


彼女が荷物をまとめているとき。


周りで会話が始まったり終わったりするとき。


ユキの様子は、はっきり目立つほど変わったわけではなかった。教師に当てられれば普通に答えていた。昼休みにはアイコともいつも通り話していた。けれど、たぶんほとんどの人なら見過ごすようなところに、小さなずれが出始めていた。


返事が、ときどき予想より一拍遅れた。


授業にも周囲にも注意を向けないまま、ぼんやりどこかを見ていることもあった。意識だけが別の場所へ流れていったみたいに。


その変化は、普段のユキのリズムに慣れていなければ、カイトにも気づけないほどわずかなものだった。


後ろの席で、サトシが疲れたような息をつきながら椅子にもたれた。「もう大学の話、聞くの飽きた」


「それはお前のせいだろ」とカイトは言った。


「なんで」


「そういう話に毎回混ざるから」


「だってみんな文句の言い方が間違ってるんだよ」


カイトはそれを無視して、次の教科書に手を伸ばした。


教室の向こうで、ユキがようやくノートをしまい始めた。クラスのほとんどより少し長く席に残っていたのだ。大げさに長かったわけではない。ただ、彼女が立ち上がる頃には、いくつかのグループがもう出入口から出ていた。


カイトは鞄を整理し直すふりをして、出口付近の流れが少し落ち着くまでその場に残った。


廊下に出る頃には、ユキが自然に隣にいた。


「数学の課題、終わった?」と彼は聞いた。


「昼休みに」


「内容は分かった?」とユキが聞いた。


「一、二問、分かってないのがあるかもしれない」


「私も。まあ、テストじゃなくてよかったけど」


それきり、会話は静かに途切れた。


廊下には生徒たちが流れ込み、足音や教室の引き戸の音の下で、声がひとつに混ざっていた。サッカー部の一団が用具バッグを抱えて急ぎ足で通り過ぎ、別の生徒たちのかたまりが階段の近くで廊下の一部をふさいでいた。


カイトはそれを避けるように少し体をずらした。


ほとんど同じ瞬間に、ユキも動いた。


二人の肩は、ほんのわずかな距離で触れずにすれ違った。


そんなタイミングが、気になるはずはなかった。二人は昔から、そうやって互いの周りを動いてきた。


けれど最近、そうした調整のあいだにある隙間を、以前よりも意識するようになっていた。


それについて深く考えていたからではない。


ただ、二人のタイミングが合わない瞬間が、前より目につきやすくなっていた。


下駄箱の近くで、ユキは外履きの紐を結び直すために少しかがんだ。カイトは自然に下駄箱のそばで立ち止まり、その横を生徒たちが玄関へ向かって通り過ぎていった。


「今日、アイコと帰るのか?」と彼は聞いた。


ユキは顔を上げないまま、軽く首を振った。「アイコはクラスの子たちと駅まで行くって」


彼女が立ち上がると、二人はまた一緒に校舎の出口へ向かって歩き出した。


外では午後の空に雲が広がり、校庭に落ちる日差しを鈍らせていた。舗道はまだ乾いていたけれど、空気にはかすかに雨の匂いがした。


生徒たちは校門を抜けると、ゆるい集まりのままあちこちへ広がっていった。自転車の方へ向かう者もいれば、駅前の道へ流れていく者もいた。歩道が混むと、カイトはいつも少し前を歩く。ほとんど習慣みたいなものだった。けれど今日は、自分でもはっきり意識しないまま、いつもより丁寧にユキの歩調に合わせていた。


隣で、ユキが鞄のストラップを肩にかけ直した。


「桜井先生って、ああいう面談の用紙、ちゃんと全部読むと思う?」と彼女が聞いた。


「たぶん」


「大変そう」


「教師だからな」


「それ、大変かどうかの答えにはなってない」


カイトは少しだけ彼女を見た。


声の調子は十分いつも通りに聞こえた。それでも普段より少しだけ抑えめで、意識の一部がまだ別のところに残っているようだった。


前方で、駅前の道にある横断歩道の信号が、二人が着く直前に点滅し始めた。何人かの生徒がすぐに早足になり、渡り切ろうとした。


カイトは逆に足を緩めた。


次の青まで、せいぜい一分ほどだった。


隣で、ユキも何も言わずに速度を落とした。


車が途切れず交差点を流れ、頭上の電線が風に小さく鳴っていた。カイトは信号が変わるのを見ながら、考えがまた、今日の早い時間にすでにたどり着いていた同じ現実的な結論へ戻っていった。


工学を本気で目指すなら、県外へ出るのは自然だった。


単純に、その方が機会の多い大学もある。


より良い学部。


より良いつながり。


前にも、そう言ったことがあった。


その考え自体は、今でも筋が通っているように思えた。


けれど、そのあと実際の毎日がどうなるのかを思い描こうとするたび、途中で像が止まった。


違うアパート。


違う駅。


違う予定。


夜、二階の廊下を動くもう一つの足音がないこと。


その考えがそれ以上沈む前に、信号が変わった。


二人はほかの生徒たちと一緒に、また歩き出した。


「もう大学、絞った?」しばらくしてユキが聞いた。


「いくつかは」


「県外?」


「かもな」


彼女の表情は目に見えて変わらなかった。けれど歩調が一、二歩ぶんだけ崩れ、それからまた元に戻った。


それでもカイトは気づいた。


「まだ心理学のこと考えてる?」と彼は聞いた。


「少し」


「カウンセリング、向いてると思う」


ユキは少しだけ彼を見た。その答えに、不意を突かれたようにも見えた。「なんで?」


「人の話をちゃんと聞くから」


「それ、曖昧じゃない?」


「でも本当だろ」


彼女は前方の歩道へ目を落とした。「人の話を聞くのと、助けるのは違うよ」


「それも、俺と同じくらいできてる」


その返事は、あまり考えずにそのまま出たものだった。けれどそのあと、ユキは静かになった。


また風が通り、彼女の髪先を軽く揺らした。周囲では、生徒たちが少しずつ脇道やアパートの並ぶ道へそれていき、人の流れはかなり薄くなっていた。


次の交差点に着くと、カイトは前方の商店街の方を見た。


カイトは前方の商店街の方を見た。


「本屋、帰り道にあるだろ」と彼は言った。「寄っていく?」


ユキは一度まばたきをした。「今日?」


「ああ」


「何しに?」


「本を買いたい」


「兄さん、あんまり本買わないじゃん」


「たまには買う」


カイトは歩き出した。「一冊、ユキが選んでくれればいい」


ユキは信号に合わせて渡りながら、鞄のストラップを少し直した。「それ、無責任じゃない?」


「いつも俺の読むものはつまらないって言ってるの、ユキだろ」


「だって、つまらないし」


「じゃあ、なんとかして」


そのあと彼女は少し黙った。答えに迷っているというより、なぜ彼がそんな提案をしたのか、まだ理解しようとしているようだった。


カイト自身も、言う前に深く考えていたわけではなかった。ただ、このまままっすぐ家に帰ったら、ユキはたぶん、その後の夕方を、何かに引っかかったまま静かに座って過ごすのだろうと思った。


それと、家までただまっすぐ帰るという考えが、帰り道の途中から、どこか足りないように感じ始めていた。


「わざとひどい本選んだらどうするの?」とユキが聞いた。


「あとでユキのせいにする」


「それ、不公平じゃない?」


「俺に対してな」


ユキはまた前を向いた。表情はほとんど変わらないままだったけれど、口元の端にかすかな動きがあった。


周囲では、学校帰りの人の波が少しずつ引き、商店街を歩く生徒たちは小さなまとまりに分かれていた。縁石の近くでは自転車の車輪がでこぼこの舗道を鳴らし、近くのパン屋から漂ってきた匂いが、冷えた午後の空気を一瞬だけ横切った。


駅前の道のそばにある本屋の看板が、少し先にだんだん見えてきた。電柱の列と吊り下げられた旗に半分隠れている。カイトは、ユキが一度そちらへ目を向け、それからまた目をそらすのを見ていた。


二人とも会話を続けなかった。けれど、いつもなら家へ向かってそのまま進む角に着くと、ユキはまっすぐ進まず、商店街へ渡る横断歩道の方へ自然に寄っていった。

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