第2章 パート2 — 賭けの支払い
賭けの支払い — カイト
昼休みは、いつもの騒がしさの中で終わった。
教室のあちこちで、プラスチックのふたがぱちんと閉まる。立ち上がる生徒たちの椅子が床をこすった。窓際の誰かが、次の授業が体育ではなく歴史だと文句を言っている。何人かはベルをまったく気にせず、サクライ先生が出席簿を持って入ってくるまで話し続けていた。
カイトは弁当箱のまわりに布を巻き終えた。
向かいで、サトシは残りのパンを口に押し込んでから立ち上がった。「五時間目、無理だわ」
「毎日言ってる」
「毎日それが正しいって証明されてるからな」
アイコは机の下からノートを引き出しながら、小さく笑った。「昨日、英語の半分寝てたよね」
「目を休めてただけ」
「いびきかいてた」
「名誉毀損だ」
ユキは自分の机を見下ろし、弁当包みのリボンを一度結び直してから、鞄にしまった。「本当にかいてたよ」
サトシはすぐに彼女を指さした。「ほら」
カイトは椅子を引いて立ち上がった。
教室はもう、列の形へ戻り始めていた。生徒たちは教師に完全に戻される前に、ゆるい集まりのまま、それぞれの席へ流れていく。
カイトは自然に手を伸ばし、ユキのノートと一緒に机から滑り落ちそうになったワークシートの端を押さえた。
「落ちかけてた」
ユキがこちらを見た。「あ」
彼女はそれを受け取り、教科書の下にきちんと重ねた。「ありがと」
「ん」
カイトはサクライ先生に言われる前に、自分の席へ戻った。
午後の授業は、特に何もないまま過ぎていった。
歴史の時間、窓の外では雨雲がゆっくり集まり、光はガラスにうっすら机が映るくらいの灰色になっていた。教室の電気はまだついていない。教師がわざわざ点けるほどには、天気はまだその線を越えていなかった。
カイトは黒板の年表をノートに写した。
数列後ろで、誰かが大きなあくびをして、何人かが笑った。
サクライ先生は話の途中で止まった。「眠いなら、放課後に寝なさい」
カイトは書き続けた。
ベルが鳴ると、教師が教材を集め終える前に、生徒たちはすぐにまた話し始めた。サトシは自分の机の横で、椅子がきしむほど大きく伸びをした。
「もう腹減った」
「お弁当二つ食べてたよ」アイコが言った。
「だからだよ。もうなくなった」
「食べるってそういうことだけど」
サトシはそれを無視して、代わりにカイトを見た。「放課後、店行く?」
「たぶん」
「何か買ってきて」
「嫌だ」
「何か聞いてもいないのに」
「聞いても嫌だ」
サトシは大げさに舌打ちした。「冷たいな」
カイトは筆箱のファスナーを閉めた。「お金あるだろ」
「そこじゃないんだよ」
「だいたいそこだろ」
ユキは自分の机の横に立ち、手首の近くで内側に折れていた制服の袖を直した。「自分で行けばいいのに」
「でもそれだと動かなきゃいけない」
「もう動いてるよ」
「それとは違う」
アイコがため息をついた。「サトシって、どの会話も疲れる」
サトシが答える前に、次の教師が入ってきた。
その日の最後の授業は、ほかの授業より長く感じた。
何か変わったことがあったわけではない。むしろ静かな方だった。雨はまだ降り始めていなかったが、空は夕立の直前のような重い色に落ち着いていた。
各自で問題を解いているあいだ、何人かの生徒が外を確認しているのにカイトは気づいた。
彼は残り十分でワークシートを終え、最後のページを見直した。
教室の端の方で動きがあり、少しだけ注意を引かれた。
ユキが何かを消していた。
答えを直しているのではない。動きが大きすぎた。ほとんど一行全部を消し、少し止まってから、その下にもっと丁寧に書き直していた。
数分後、教師が時間だと言った。
用紙が列ごとに前へ送られていく。椅子が動く。鞄が開く。
一日の終わりは、いつもすぐに形がほどけた。
カイトがノートをしまっていると、サトシが歩いてきた。「やっぱりコンビニ行く?」
「たぶん」
「お前、もう決めてるときにいつもたぶんって言うよな」
カイトは顔を上げた。「そうか?」
「うん」
「気づかなかった」
「自動でやってるからだろ」
サトシは何気なくそう言って、カイトが答える前に行ってしまった。
そのすぐあと、アイコがサトシを自分の机の方へ呼び戻した。
カイトは鞄に荷物を詰め終えた。
立ち上がるころには、ユキも教室の自分の側で支度を終えていた。
「行ける?」彼女が聞いた。
「ああ」
二人はサトシとアイコに別れを言い、クラスの流れと一緒に教室を出た。
廊下は、放課後らしい混み方をしていた。あちこちから会話が重なってくる。廊下の先の方で、誰かが友達に待ってと叫んでいた。部活の生徒たちはもう、用具袋を持って階段の方へ向かっている。
カイトは下駄箱の近くで、野球部の一団を先に通すために少し横へ避けた。
ユキも彼の隣で止まり、彼らが通り過ぎるのを待った。
そのうちの一人が、狭い場所を抜けながら軽く頭を下げて謝った。カイトは一度だけうなずき返した。
それから、廊下はまた動けるくらいに空いた。
外に出ると、舗道はまだ乾いているのに、空気は湿った匂いがした。
門を出ながら、ユキは雲の方を見上げた。「思ったより持ってるね」
「降るよ」
「負けたくないだけでしょ」
「それもある」
彼女は少しだけ彼を見た。「認めるんだ」
「否定してない」
それで満足したようだった。
駅の方へ向かう道は、いつもと同じだった。
横の道路では車がゆっくり進んでいる。反対側の歩道を自転車が通り過ぎ、でこぼこの舗道の上でタイヤが小さく鳴った。交差点近くの店の看板が、日が暗くなるにつれて一つずつ灯り始めた。
カイトは鞄の肩紐を、肩の上で少し上げ直した。
隣で、ユキはポケットからスマホを取り出し、少し画面を確認してからまたしまった。
「メッセージ?」カイトが聞いた。
「アイコから」
「何て?」
「サトシが電車で寝たって」
「早いな」
「二人が同じ電車なの忘れてた」
サトシがすぐに寝落ちするところは、カイトにも簡単に想像できた。
「乗り過ごすな」
「アイコもそう言ってた」
冷たいしずくが数滴、カイトの手の甲に当たった。
まだ気にするほどではない。
ユキも気づいて、また上を見た。「これは雨ってほどじゃない」
「数に入る」
「入らない」
「地面に触れた」
「条件はそこじゃない」
「条件なんて出してなかった」
「そういう意味で言ったの」
「勝手に決めただけだろ」
ユキは鼻から小さく息を抜いた。ほとんど笑いに近かった。「兄さんって、ほんと面倒」
カイトは持っていた傘を開いた。
傘を軽く振って広げるころには、雨はきちんと降り始めていた。強くはないが、周りの人たちも同じように傘を開き始めるくらいには、途切れずに降っている。
ユキは歩調を止めないまま、その下へ少し近づいた。
傘は、二人で入っても十分な大きさだった。交差点の近くで風の向きが変わると、カイトは持ち方を少し変えた。
カイトは彼女をちらっと見た。
「傘持ってきたのに、なんで俺のを使ってるんだ」
「兄さんのを使うつもりじゃなかった」
「でも使ってる」
「兄さんの方が大きいから」
「答えになってない」
ユキはしばらく雨の方を見てから答えた。「もっと遅くまで降らないと思ってた」
「折りたたみは保険か」
「うん」
「じゃあ、今使えばいいだろ」
彼女は上の傘をちらっと見た。「もう開いてるから」
カイトはまた前へ視線を戻した。車が、縁石の近くにでき始めた浅い水たまりを通っていき、二人は車道から少し離れて歩くことになった。
別の学校の生徒が、傘の代わりに鞄を頭の上にのせて急いで通り過ぎていく。中学生二人が、信号の点滅が終わる前に横断歩道を走って渡った。
雨は通りの音を柔らかくしたが、全部を覆い隠すほどではなかった。
雨の向こうにコンビニが見えてきた。交差点近くの濡れた舗道に、店の明かりがかすかに映っている。
隣でユキが少し歩く速度を落とした。「私が負けたから、何のおやつがいい?」
カイトは店の方を見た。「結果は認めるんだ」
「これ以上兄さんと言い合うのが疲れるって認めてる」
「関係ない気がする」
横断歩道に着く前に歩行者用信号が赤になり、二人は近くで待っている何人かと一緒に、傘の下で立ち止まることになった。
頭上で雨が柔らかく傘を叩いた。
カイトは傘の柄を持ち直した。「何でもいい」
「その答え、禁止にするべきだと思う」
「何がいいか聞いたのはユキだろ」
「役に立たない答えだった」
カイトは一秒ほど考えた。「しょっぱいもの」
「それだと店の大半が入る」
「買うのはユキだろ」
「だからって、心が読めないわけじゃないけど」
「たいてい読めてる」
ユキは少しだけ彼を見上げ、それからまたコンビニの窓の方へ目をそらした。「兄さん、面倒」
信号が変わった。
二人は人の流れに合わせて渡った。縁石の近くにたまった浅い水を、靴が軽くはねる。入口に着くころには、傘を差していたのに、ユキの前髪の端に少しだけしずくがついていた。
カイトは中に入る前に傘を閉じた。
温かい空気と揚げ物の匂いが、すぐに二人を包んだ。
ユキは入口の近くでかごを取り、何も言わずにカイトへ渡してから、菓子売り場の方へ歩いていった。
カイトは数歩遅れてついていった。
彼女はポテトチップスの前で止まり、棚を見た。「塩? コンソメ?」
「コンソメ」
「いつもコンソメ選ぶよね」
「それでも聞いただろ」
「確認」
「必要なさそうだけど」
「折りたたみがあるのに、大きい傘を持ち歩くのも必要なさそうだけど」
「その大きい傘に入ってきたのはユキだろ」
ユキは手を伸ばし、棚から一袋取った。「はい、勝利品」
カイトは彼女からポテトチップスを受け取り、かごに入れた。そのあいだに、彼女はさらに奥へ進んだ。
数秒後、ユキはチョコバーを二本取り、少し見比べてから、その両方をかごに入れた。
「増えてる」カイトが言った。
「負けたから、二人分、少しいいおやつにしたいの」
「じゃあ、もっと勝つようにする」
「心配しなくていいよ。次に兄さんが負けたら、倍買わせるから」
「それなら次はケーキ屋にするか」
「そんなに走ってるのに、チーズケーキで帳消しにするつもりなの?」ユキが聞いた。
「チーズケーキを気にせず食べるためだけに走ってもいい」
ユキは一秒ほど彼を見た。「ものすごく無駄な考え方だね」
「効率的だろ」
「どこが?」
「チーズケーキと運動が両方手に入る」
「それは効率とは言わない」
カイトはかごをレジに置いた。「今のところ続いてる」
ユキは軽く首を振ったが、答える声には小さな笑みが混じっていた。「次は兄さんのよくない判断にお金出さないから」
店員がレシートと小さなビニール袋を渡した。
カイトは自然にそれを受け取り、ユキはカウンターのそばに置いていた傘を持った。
外では、雨が少し強くなっていた。
二人が通りへ戻ると、カイトはまた傘を開いた。濡れた舗道にヘッドライトが映り、縁石の横には水が集まっていた。
少しして、ユキは袋に手を入れ、チョコバーの一本を彼に差し出した。
「分けるのか」
「二本買ったから」
カイトはそれを受け取った。「ありがと」
「どういたしまして」
それからは、頭上で傘を叩く雨の音を聞きながら、二人は気まずさのない沈黙の中で家までの残りを歩いた。
アパートが見えてくるころには、傘を差していたにもかかわらず、湿った髪が数本、ユキの肩のあたりにほつれていた。
「それでも濡れてる」カイトが言った。
「少しだけ」
「次は自分の傘を使うか、もう少しこっちに寄って」
「うん」
ユキがドアを開け、二人は中に入った。




