第10章 パート2 — 夜の星
夜の星 — カイト
カイトは空になった焼き串を、ほかの串と一緒に焚き火台のそばへ置いた。
マシュマロはもうなく、串の先に焦げた砂糖がこびりついているだけだった。ユキは自分の串を、必要以上に丁寧に置いていた。勝負のあとには道具の扱いまできちんとする必要があるみたいに、カイトのものの横へ揃えている。
彼女は勝った。
まだ何をしてほしいのかは言っていない。
カイトは、ユキがナプキンで指を拭くあいだ、一度だけ彼女をちらっと見た。その表情からは、役に立つ情報は何も得られなかった。彼女はただナプキンを畳み、角が親指にくっついたことに気づき、それをはがしただけだった。
それでいい。
彼女が決めたら、やればいい。
母も聞かなかった。つまり、母もそこには触れないことにしたのだろう。
父が、おやつの袋の近くにあったチョコビスケットの包みに手を伸ばし、それから母がこちらを見たので途中で止まった。
「柔らかくなってるかもしれないわよ」と母が言った。
「それでいい」
「汚れるかもしれない」
父は先にナプキンを取った。
「じゃあ気をつける」
母は包みを渡した。
チョコは端の方が温まっていたが、だめになるほどではなかった。カイトは指の上で溶ける前に食べた。ユキは角を一つ持ち、小さめにかじりながら、袖から離していた。
しばらくのあいだ、キャンプ地は彼らの周りで、それ自体の音を立てていた。
紙の包み。
火が落ち着く音。
誰かの膝の近くにコップが置かれる音。
光の外のどこかで、乾いた葉が走る音。
太陽は完全に沈み、キャンプ地に残っている明かりは焚き火と、テントの近くに置いたランプだけになっていた。
夜の静けさは、さっきテントの中にあったものとは違った。あれは近く、囲まれていて、布の壁と低い声の内側にあった。こちらは外へ広がっていた。火のそばに座っていても、自然に囲まれているのが分かった。
その日の重さは、まだ腕に残っていた。パドル。テントのポール。山道で肩にかかったドライバッグの重さ。夕食の前に少し休んだあとでも、体はまだ完全にはそれを手放していなかった。
カイトは一度自分の手を見て、それからそのままにした。
夕食のとき高く上がっていた炎は、もう低くなっていた。今は薪の近くへ曲がるように燃え、割れ目から赤い色を見せている。時々火の粉が上がり、それから消えた。
火の向こうで、キャンプ地は変わっていた。赤いテントは片側だけ鈍い橙色に光っている。入口の近くにはドライバッグが低い形を作っていた。椅子、コップ、レインウェア、水のボトルが明かりの周りに集まり、その外で木々が待っている。
カイトは、道があるはずの方を見た。
露出した根のそばで曲がっている、そこに道があることは分かっていた。
分かっていても、道が見えるわけではなかった。
家では、夜になっても町の明かりが輪郭を残す。ここでは、月のかすかな光に照らされたものだけが、形を持っていた。
母は両手でコップを包んだ。
「急に冷えたわね」
「さっきまでは火で分かりにくかったな」と父が言った。
ユキは座っていた丸太の上で少し動いた。
「手は温かいけど、背中が寒い」
「少し火に近づきなさい」と母が言った。「近づきすぎないで。背中まで熱が届くくらい」
ユキは丸太と焚き火台のあいだの地面を見下ろした。そこは土が不揃いで、小石や半分埋もれた根が散っていた。
彼女は丸太の片側を持ち上げようとしたが、地面をこすって止まっただけだった。
カイトは、彼女がもう一度試す前に立った。
「そっち持って」
ユキは反対側に手を移した。二人で少しだけ前へ引きずる。丸太は一度根に引っかかったあと、鈍い音を立てて外れた。
「そこならいいと思う」と母が言った。
ユキはまた座り、片手を火の方へかざして距離を確かめた。
「まし?」カイトが聞いた。
「まし」
彼は自分の場所へ戻った。
火がはぜた。必要以上に大きく聞こえた。音が鋭かったからではなく、その後ろにほとんど何もなかったからだ。
車の音がない。
ほかのキャンプ地からの声もない。
駅のアナウンスもない。
学校の廊下もない。
ここからは川の音すらしなかった。何時間もたどってきた水は、斜面と木々と距離に隠された、どこか下にある。その音がないせいで、森そのものよりも、キャンプ地の方が閉じられた場所のように感じられた。
父は片手を後ろにつき、空き地の端の方を見回した。
「暗くなると、遠くまで来た感じがするな」
「レンタルのところから?」ユキが聞いた。
「全部から」
母がうなずいた。
「だから、こういう夜は覚えているのかもしれないわね」
カイトは火へ視線を戻した。
この空き地は、家のような意味で居心地がいいわけではなかった。地面はマット越しにも押してくる。煙は風が変わるたびに向きを変える。明かりは十分遠くまで届かない。
それでも、周りにあるものが少ない分、その場の空気は取り込みやすかった。
自然の匂い。
首の後ろから始まる冷たさ。
母のお茶から細く消えていく湯気。
焚き火の柔らかくはぜる音。
周りにいる家族一人一人の気配。
何も持ち上げなくなった今になって、肩が重くなっていた。この数週間、注意を取り合っていたいろいろなものから来る張りつめた感じは、ここでは薄くなっているようだった。火から上がる灰が、夜の中へ消えていくみたいに。
カイトの視線は、上っていく灰をいくつか追い、そのまま空へ向いていた。
頭上では木々が開いていた。
広くはない。空き地は小さく、枝が空の周りに不揃いな縁を作っている。まだ葉を持っている枝もあれば、薄くなって、向こうが見える枝もあった。
家から見るより、星が多かった。
カイトはじっとした。
最初は、はっきり見える星だけを数えた。それから数えるのをやめた。明るい星のあいだに、小さな星が次々と現れて、きれいに分けられないくらい多かった。空が変わったわけではない。目が変わったのだ。
テントの近くのランプは、まだ点いていて、入口の方を照らしていた。置いたときには暗く見えたのに、今は明るすぎた。テントの入口とバッグを、屋内のものみたいな光で白くしている。
カイトは立った。
ランプのところまで行き、つまみを下げた。空き地が暗くなった。一瞬、地面が見えにくくなる。それから焚き火の光が戻り、空がさらに開いた。
彼はランプを空き地ではなく、テントの入口へ向けた。
戻って座ると、全員が上を見ていた。
ユキは静かに、顔を空へ向けている。
「その方がいい」と彼女は言った。
「よかった」
彼女はしばらく黙った。
「きれい」
「ん」
父は片手を後ろにつき、枝の隙間から空を見上げた。
「町の明かりがどれだけ隠してるか、離れてみないと分からないな」
母もその視線を追った。
「ここだと広く感じる」
「寒くもある」とユキが言った。
「そこは詩的じゃないな」と父が言った。
「でも本当だよ」
カイトも一緒に見上げた。
そのあと、誰も話さなかった。長く見ているほど、最初に気づいた星のあいだに、さらに星が現れるように見えた。枝が風で少し動き、空の一部を隠しては、また戻した。
家では、空はたいてい遠くにあった。けれどここでは、見ているほど変わっていった。
火はすねを温めていた。
背中は冷えたままだった。
四人はしばらく、何も言わずにそこにいた。
最初に動いたのは母だった。空になったコップを丁寧に置いた。
「今夜は学校の話はなし」
ユキが空から目を離した。
母は続けた。
「用紙も、締め切りも、帰ってからで間に合うことの確認もなし」
父がうなずいた。
「いいな」
カイトは火を見た。
「何か言うつもりはなかったけど」
「分かってる」と母が言った。「ただ、今から外れないように先に言っておくの」
それは分かった。
ユキはコップの近くで指をこすった。
「マシュマロ勝負は、締め切りに入る?」
父は、もっと簡単な話題を渡されたことにほっとしたように見えた。
「賞品に期限があるならな」
「ないよ」
カイトは彼女の方を見た。
「じゃあ、もう何にするか決まってるのか?」
「決まってない」
「決まってるみたいに聞こえた」
「兄さんが期限を決めようとするのが嫌だっただけ」
「決めるつもりはなかった」
母は空になったコップをもう一度持ち上げた。
「明日決めなさい。今夜はテントでちゃんと休みたいわ」
ユキはその答えで満足したように見えて、それ以上言わなかった。
おやつを閉じ、コップが空になると、空気はさらに冷えていった。母が両手をこすり合わせた。
「座ったまま動けなくなる前に片づけましょう」
父は、その言葉をもう少しで証明しそうだった顔をした。
「そうだな」
カイトが最初に立った。
座っている状態から動くと、一日の分が脚に戻ってきた。膝は遅く、しゃがむとふくらはぎが張った。彼はコップを集め、飲み口を下にして重ねた。ユキはごみ袋を開けて持ち、母がビスケットの包みや使ったナプキンを入れた。父は火が落ち着くように、半分燃えた薪を火ばさみで内側へ寄せ、急に燃え上がるのではなく均等に収まるようにした。
キャンプ地はまた作業の場所になった。けれど今度の作業は小さかった。
カイトはおやつの袋を閉じ、親指で封を押した。
それから、角が浮いていたので、もう一度押した。
ユキは小さいごみ袋を結び、ほかのごみと一緒に置いた。
父が火の光の外にある暗い木々の方を見た。
「この辺りは熊を心配しなくていいから助かるな」
ユキが顔を上げた。
「熊?」
「ここにはいない」と父が言った。「そういう地域だったら、スタッフが教えてくれる」
母がごみ袋を縛った。
「それでも食べ物は外に出しっぱなしにしないこと。大型の動物じゃなくても、片づける理由にはなるわ」
それでもユキは木々の方を見た。
「ここに熊はいない」とカイトが言った。
「聞こえてた」
「でも見た」
「熊がいる場所があるって、今まで考えてなかっただけ」
カイトはバッグを、濡れない場所に置いた。
父は弱まった火に少しだけ水をかけた。焚き火台を水浸しにするほどではなく、熱の強い端を静めるくらいだった。湯気が白い息のように上がり、消えた。匂いは鋭い煙から、濡れた灰へ変わった。
カイトは、その湯気が暗さの中へ消えていくのを見た。
火が小さくなると、星はまたはっきり見えるようになった。
一瞬、明かりを全部消して、もう少しだけ空の下に座っていられたらと思った。
けれど地面はもう冷えていたし、朝にはやることがいくつもある。カヤックはまだ船着き場にある。道もまた歩かなければならない。早く眠らなければ、体はもっと文句を言うだろう。
「懐中電灯」と母が言った。
父が上着のポケットに触れた。
「ある」
ユキは膝のそばから自分のものを持ち上げた。
「私も」
カイトも確認した。
「ある」
母はもう一度キャンプ地を見た。覆われた焚き火台、密閉した食べ物の袋、結ばれたごみ、洗い物の近くに重ねられたコップ。
「外はほとんど終わったわね」と母は言った。「二人は先に入って、寝る支度を始めていいわよ」
ユキは焚き火台のそばに残っているものを見た。
「手伝わなくていいの?」
「大丈夫。少し温まってきなさい」
父もテントの方へうなずいた。
「こっちは終わらせておく」
カイトは中に入る前に水のボトルを持った。
「これは入口の近くに置いておく」
「転がる場所には置かないでね」と母が言った。
「分かってる」
ユキが先にテントのファスナーを開け、片手に懐中電灯を持ったまま中へ入った。カイトは入口近くのドライバッグにぶつからないよう気をつけて、そのあとに続いた。中の空気は外より暖かかったが、それでも布と草と、寝袋の下のビニールマットの冷えた匂いがあった。
彼は水のボトルを前室の内側に置いた。それから、思っていたより床が傾いていることに気づいた。そこで、布が転がるのを止めるように、ボトルをドライバッグの横へ移した。
自分の寝袋の足元には、まだ小さめのバッグが二つ乗っていた。みんなが急いで中へ荷物を入れたとき、そのまま残されたものだった。カイトはしゃがみ、一つずつ持ち上げて重さを確認してから、入口の方へ動かした。
「それ、外に出すの?」ユキが聞いた。
「外じゃない」
彼は内側のファスナーを途中まで開け、テントの扉と雨よけのあいだにある、守られた場所へバッグを滑り込ませた。そこならグラウンドシートで下は守られている。寝る場所からは出るが、夜気にはさらされない。
どちらのバッグも外側の布に押しつけられていないことを確認してから、内側の入口をまた閉めた。
「場所を作ってるの?」ユキが聞いた。
「寝袋の上に置いたままでは寝られない」
ユキはもう奥の方へ移動していた。自分の寝袋の端をまっすぐにし、それから小さな鞄に手を入れて、防水ポーチを取り出した。
カイトは、それを朝から見ていた。
車の中でも、レンタルの場所でも、船着き場でも、山道でも、彼女はずっと近くに置いていた。壊れ物のように扱っていたわけではない。どちらかというと、ほかの誰かが触れる必要のないもののようだった。
彼女はそれを開け、小さなノートを取り出した。
学校のものではなかった。
カイトは、彼女が隠さなくていいように目をそらした。
入口近くのランプは、明かりのほとんどをテントの真ん中へ投げていて、ユキの側は少し暗かった。ユキはページに光が届くように、ノートを一度傾けた。
カイトは、光が直接彼女の顔に当たらず、それでも手元へ届くようにランプを少し動かした。
ユキが顔を上げた。
「何?」
「書くのか?」
「うん」
「明るすぎる?」
彼女はページを見て、それから首を振った。
「ううん。平気」
「そうか」
ユキの鉛筆がページに触れ、止まり、それからまた動いた。
カイトは上着を一度畳み、それから片袖がまだ緩んだまま止まった。
彼は最近、そのノートを何度か見ていた。主に夜、そして一度だけ朝、彼女のスクールバッグの近くで。今は、家を出てからずっと彼女が近くに置いていた防水ポーチの中に入って、ここまで来ていた。
たぶん日記だ。
彼女がそういうものを欲しがっていたことは知らなかった。あるいは、前から欲しがっていて、自分が気づき始めたのが最近なだけかもしれない。
ユキはランプの方へ少しページを向けた。隠してはいなかった。完全には。
カイトは、ページそのものではなく、ノートの端を見た。
「それ、最近使ってるノート?」
彼女の鉛筆が止まった。
一瞬、聞き方が直接すぎたかと思った。
それから彼女はまた下を見た。
「気づいてたの?」
「よく見かけるようになったから」
「それだと、家の中を歩き回ってる物みたい」
「だいたいユキの近くにある」
ユキは、書かないまま鉛筆を紙に軽く当てた。
「ただ、いろいろ書くためのもの」
「日記みたいな?」
「そんな感じ」
それで十分答えになった。
カイトはうなずき、上着を畳み終えた。
「分かった」
ユキはもう少しだけ彼を見ていた。彼がそれ以上聞くかどうか確かめるみたいに。
彼は聞かなかった。
外では、両親が焚き火台の周りで、低く普通の音を立てて動いていた。コップを拾う音。何かを留める音。父の靴が一度、砂利をこする音。
ユキの鉛筆がページに触れ、止まり、それからまた動いた。
カイトは見ずに聞いていた。
小さな音だった。テントの布と外の葉音の下に、ほとんど隠れてしまうくらい。
彼は上着を畳み終え、少しだけ寝袋に入った。両親が戻ってくる前に、邪魔にならないようにするためだった。入口の近くは、雨よけの下へ移したドライバッグでもう狭くなっている。あとで誰かに踏まれずに余分な服を広げられる場所はなかった。
彼は内側のファスナーの向こうにある、守られた場所を一度見た。
大きめのバッグは今夜そこに置いておいて大丈夫だ。たぶん。けれど明日の服を別に入れてあることを思い出し、寝る前に着替えた方がよかったのかもしれないと気づいた。けれど、今また動いて着替える気にはならなかった。
明日でいい。
今は違う。
ユキの鉛筆がまた動いた。
カイトは片腕だけ寝袋の外に出したまま、じっと横になって聞いていた。音は小さなかけらになって届いた。黒鉛が紙をこする音。止まる。短い線。もう一度止まる。雨や葉とは違う音だったが、別の意味で少し落ち着いた。
しばらくすると、目が重くなってきた。
そのとき、外から母の声がした。
「みんな忘れる前に歯を磨きなさい」
カイトは目を開けた。
ようやく温まってきたところだった。
「洗面道具はさっきまとめておいた」と彼は言い、寝袋を押し下げて起き上がった。
「よかった。小さいバッグを持ってきて」
彼はテントのファスナーを開け、入口のそばからそれを取った。
洗い場はテントから少し歩くだけだったが、寒さのせいで遠く感じた。懐中電灯の光が砂利、根、落ち葉を切り取り、その外側はすべて消えた。
誰もあまり話さなかった。
水は、カイトを完全に目覚めさせるくらい冷たかった。彼は口をすすぎ、コップを一度振って、小さなバッグへ戻した。父は歯ブラシのキャップを落としかけ、袖で受け止め、静かに息を吐いた。
ユキはそれに気づき、口元を押さえた。
「取れた」と父が言った。
「見た」とユキが言った。
母は、また落ちる前に父からキャップを取った。
「ほかに何かなくす前に戻りましょう」
戻る道は、さらに静かだった。
火がないと、空き地はまた仮の場所のように見えた。赤いテントだけがぼんやり明かりを持ち、椅子は暗く空いていて、覆われた焚き火台からは濡れた灰の匂いだけがかすかに残っていた。
カイトは眠さで視線を下げ、みんなのあとを追ってテントへ戻った。
母がファスナーを開ける音は、さっきより大きく聞こえた。中には、布、乾いた草、寝袋の近い匂いがまだあり、外より暖かかったが、全員が一度に戻ると狭かった。
ユキが先に奥へ行き、日記を近くに持ったまま、寝る場所の上の方、テントの壁から離して置いた。母が続き、それから父が入った。洗い場へ行く前よりも、どの動きも少し遅くなっていた。
「誰かにぶつからないようにね」と母が小さく言った。
父が膝をずらした。
「分かってる」
カイトは手伝うためにランプを少しだけ持ち上げ、みんなが場所を見つけると、また下げた。最後に入り、入口近くのドライバッグに膝が触れた。
彼は自分のマットに座り、寝袋へ戻った。残していた温かさは、もう抜け始めていた。地面は前よりはっきりとパッド越しに押してきて、肩と腰の下で固かった。体勢を変えると、マットが小さくきしんだ。
「ごめん」と彼は言った。
「必要なら動きなさい」と母が小さく言った。「いないふりをしても眠れないわよ」
カイトはもう一度、ゆっくり動いた。
奥の方で、ユキがまだ少し動いていた。
彼は待った。
「まだでこぼこする?」
少し間があった。
「少し」
「上着を下に入れれば」
暗がりで布がこすれた。
「二つに畳んで」と母が足した。
ユキは今度はもう少し慎重に動き、それから落ち着いた。
「まし?」カイトが聞いた。
「少し」
「それで十分だ」と父が言った。もう半分眠っているような声だった。
そのあと、テントは少しずつ静かになった。風が触れると布が動いた。誰かの寝袋がこすれた。ランプが冷えながら、かすかに音を立てた。外では、覆った焚き火台の近くで、葉が砂利を引きずる音がした。
カイトは仰向けになり、上の薄暗い縫い目を見た。
火は消えている。
食べ物は閉じてある。
水は入口の近くにある。
ユキの日記のポーチは壁から離してある。
雨よけの下のバッグは守られている。
彼は目を閉じた。
しばらくは、ひとつひとつの音をまだ分けられた。母が一度動く音。父が鼻で息をする音。ユキが最後に小さく動いて落ち着く音。テントの外で葉がこすれる音。
それから、その音たちは少しずつ届かなくなった。
カイトは、どれが最後の音だったのか分からなくなるまで聞いていた。




