第10章 パート1 — キャンプ
キャンプ — カイト
ポールは、カイトが思っていたより冷たかった。
気にするほどではない。けれど、山道を歩いているあいだにすでに冷えていた手には、少しだけ不快だった。金属は空き地の空気をそのまま含んでいて、袋から継ぎ目を引き出すと、室内で練習したときより鋭い音でかちりとはまった。
カイトはそれを赤いテントの布の横、草の上に置いた。根の近くで地面が少し沈んでいるところの土に、継ぎ目が触れないようにする。布にはもう、空き地の乾いた草がついていた。外で見ると、リビングで見たときより色が濃く見えた。キャンプ道具というより、明かりが消える前に屋根にならなければならないものに見える。
ユキは向かい側にしゃがみ、片手にペグの袋を持っていた。
テントの向こう側の空き地は静かだった。時々、葉が動く音だけがそれを破った。
カイトはポールを二本つなげた。
ユキは木々の方を見て、それからテントへ視線を戻した。
「家で見たときより、小さくなりそう」
「家でももう小さかった」
「家では周りに家具があったから。それで助かってた」
「家具でテントが大きくなるとは思わないけど」
「私には少し大きく見えたの」
カイトはもう一本ポールをつなげ、横に置いた。
「そこの角、持ってて」
ユキは布の反対側へ移動し、折れ込まないように、端に片足を軽く乗せた。風がゆるい赤い布を何度も拾い上げ、小さく、役に立たない波を作っていた。
後ろでは、父が火を使う場所を整えていた。灰色の防火シートはもう淡い砂利の上に広げられ、四隅は石で押さえられている。黒い焚き火台のケースは、その横で開かれていた。母は食べ物の袋の近くに膝をつき、夕食に必要なものを確認している。
空き地にはテーブルがなかった。売店もない。自販機もない。ほかのテントもない。
印のある薪置き場と、灰入れと、古びた標識と、木々と、それから自分たちが袋に詰めて持ってきたもので作る場所だけだった。
カイトは一本目のポールをスリーブに通した。
途中で引っかかった。
一度押して、それ以上曲げすぎる前に止めた。
「待って」とユキが言った。
「分かってる」
「違う、こっち」ユキは近づき、もう一枚の布の帯を持ち上げた。「通すところ、違う」
カイトは交差する位置を見て、それからポールを見た。
彼女の言う通りだった。
無理に通せば、フレームがねじれる。
カイトはポールを引き抜いた。
ユキは布が草の上を引きずらないように押さえていた。
「あとで面倒になるところだったね」
「ん」
「反論しないの?」
「明らかに違う」
「いつもそれで止まるわけじゃないのに」
「テントを終わらせて休みたい」
カイトは直した方のポールの端を渡した。ユキはそれを受け取り、小さく笑ったが、風がまた彼女の角を持ち上げると、その笑みは消えた。
「もっと押さえて」
ユキは手のひらで布を押さえた。
二度目は、ポールが前より楽に通った。両側が交差すると、テントは地面から少し持ち上がり、不格好な形になった。真ん中はまだたるんでいるし、片方の角は内側へねじれようとしていた。それでも、もう無理そうには見えなかった。
火を使う場所から、父がこちらを見た。
「テントの下に石や根がないか確認しておけよ。小さい石でも、一晩中当たると分かるからな」
「分かってる」とカイトは言った。
父はうなずくだけで、焚き火台へ戻った。
ユキが肩越しにそちらを見た。
「ありがとうって言ってもいいと思う」
カイトは袋からペグを二本取った。
「ありがとう」
「遅い」
「言ったからいい」
二人でテントを張る場所を確認し、下にあった小さな石をいくつか取り除いた。
そのあと、最初のペグはきれいに地面へ入った。二本目は土の下の何かに当たり、斜めになった。カイトはそれを抜き、数センチずらして、もう一度打った。空き地の端から拾ってきた平たい石は、手の中で重かった。主に、前腕がまだパドルを覚えていたせいだった。
ユキは、彼が何か言う前に、少し顔をしかめたのに気づいたようだった。
「兄さんも腕、痛いんだ」
「何でもない」
「それは、うんって意味でしょ」
「大丈夫って意味」
ユキはペグの袋を求めて手を出した。
「いくつかちょうだい」
カイトはペグを二本渡し、残りは自分の膝の近くに置いた。
ユキは袋を見た。
「ほとんど残してる」
「そっちはその側だろ」
「この側にもペグはいる」
カイトはテントを見て、それから袋を見た。
また彼女の言う通りだった。
さらに二本渡した。
「簡単なところだけ渡さなくていいよ」とユキが言った。
カイトは膝の横に残っているペグを見た。
「そういうつもりじゃない」
「なりかけてた」
「ユキも腕が痛いって言っただろ」
「使えなくなるほどじゃない」
カイトは膝の横のペグを見てから、さらに二本渡した。
ユキは一秒ほど彼を見て、それから奥の角のそばにしゃがみ、自分でペグの角度を決めた。
「よし」
そのあと、作業は均等になった。彼女が次の角を決めるあいだ、カイトが布を押さえる。ユキの置いたペグをカイトが打ち込み、そのあと彼女にロープを渡して、自分の側へ手を伸ばす。一本がきつく引きすぎていると、彼女が緩めた。風で布がずれると、折れ込む前にカイトが端をつかんだ。
どちらも、それについては何も言わなかった。
誰が疲れて見えるかで作業を分けるのをやめると、テントは前より落ち着いた。
そのあとは、二人でテントの周りを反対向きに回った。ユキが後ろ側のロープを持ち、カイトが前を調整する。最後のロープを締める前に、カイトはファスナーを確認した。入口の引き方がおかしくなると、出入りするたびに面倒だからだ。ユキは空のポール袋が木の方へ飛ばされる前に集め、ドライバッグの一つの下へ差し込んだ。
最後のロープを結ぶころには、赤いテントはきちんと立っていた。ただ、片側の布だけは、袋の写真より少したるんで見えた。
ユキは一歩下がって見た。
「使える」とカイトは言った。
ユキはテントの片側を見た。
「そっち、もう少し打ち込んだ方がいい」
カイトもその視線を追った。確かに、一つの角だけほかより頼りない。
「直す」
彼は石を取り、ペグをもう少し強く打ち込んだ。
ユキは終わるまで布を押さえ、それから一緒に下がった。
母が調理場所の方からやってきた。手をタオルで拭きながら、触れずにテントを見た。
「いいわね。思ったより早かった」
「ユキがスリーブに気づいた。俺が悪くする前に」とカイトは言った。
母が笑った。
「じゃあ、よく気づいたわね」
「見れば分かることだったよ」とユキが言った。
「見れば分かることでも、誰かが見ないとね」
父は焚き火台のメッシュの受け皿を確認していた。
「こっちももう少しだ」
焚き火台はシートの上にきちんと立っていた。脚は固定され、小さな焚きつけは大きめの薪と分けられている。父は誰かに言われる前に、水のボトルをシートの端から少し離した。
カイトはそれに気づいた。
父も、カイトが気づいたことに気づいた。
「熱は人が思うより遠くまでいくからな」
「ん」
「特に、疲れて考えなくなったときは」
ユキがカイトの方を見た。
「それ、私たちに言ってるみたい」
「俺も入ってる」と父が言った。
それなら、納得できた。
母はテントの入口から、積んである寝るときのマットへ視線を移した。
「夕食の前に全部敷いておきましょう。足は入口の方。左からユキ、私、お父さん、カイト」
父がドライバッグを一つ入口の近くに置いた。
「重いバッグはカイトの側に寄せておこう。真ん中に置くと、誰かを踏まないと出られなくなる」
「俺は荷物置きか」とカイトが言った。
「今夜だけだ」と父が言った。
ユキは一枚目のマットを持ち上げた。
「一時的な荷物置き」
カイトは次のマットを取った。
「それで良くなるわけじゃない」
中に入ると、テントはさらに小さかった。
ユキは左側に、自分のマットを足が入口へ向くように広げた。カイトは右側に自分のマットを広げ、それから両親のマットを間に敷くのを手伝った。四枚のマットは入った。けれど、ところどころ端が重なっているから入っただけだった。寝袋を足すと、真ん中の細い通り道はほとんど消えた。
ユキは寝袋の端の丸まりを、両手で押さえて平らにした。カイトはその隣で母の寝袋を伸ばし、それから父の分も広げた。残りのドライバッグは右側の壁ぎわに置くしかなく、外で使わない荷物は、ひとまずカイトの寝る場所の上に積むしかなかった。
彼が座れる場所は、父の寝袋の端くらいしかなかった。
「そこ、唯一空いてる場所なんだけど」とユキが言った。
カイトはテントの中を見回した。
「空いてる場所なんてない」
「それが問題なの」
彼はマットの端へ少し寄り、ユキが最後のドライバッグを中へ引き入れられるだけの場所を作った。
彼女はそれを壁ぎわに置き、腰を下ろした。
「よし」
カイトはそのままの場所にいた。
外では、両親がまだ調理場所の周りで動いていた。何か金属のものが一度、焚き火台に当たった。袋が開く音。母が聞き取れないくらい低い声で何か言い、父が少し離れたところから答えた。テントの布を通して、音はやわらかく、不揃いに届いた。
ユキは入口を見た。
それからファスナーに手を伸ばし、ほとんど閉めた。
キャンプ地は一気に静かになった。
完全にではない。赤い布の向こうに空き地はまだあって、両親も数歩先にいる。それでも風はテントの壁でやわらぎ、薄れていく光は中で色を変えた。すべてが暗く、温かく見える。バッグ、マット、袖、膝の上に置かれたユキの手の淡い曲線。その全部が、外の世界から少しだけ離れたものに見えた。
カイトはファスナーを見た。
「虫よけ?」
「だいたい」
ユキは寝袋の上に座り、膝を抱えていた。すぐには答えなかった。
「私たちの仕事、だいたい終わったし」
「ん」
作業が止まってから、ようやく静けさが二人に届いた。ポールと、ペグを打つのに使った石のせいで、カイトの手は冷えていた。腕は重かった。カヤックをこぎ、荷物を運び、ロープを張り、バッグを持ち上げたせいだった。向かい側で、ユキは一度指を曲げ伸ばしし、それから手をズボンの上に落とした。
「横になれば」とカイトは言った。
「横になったら、起きたくなくなる」
「どっちにしてもそうなるかも」
「それに、寝袋、整えたばかりだし」
説明は短くて、ほとんど雑だった。けれど、彼女はやっぱり横にはならなかった。
代わりに、慎重に体を動かし、カイトに背を向けて、彼にもたれた。
カイトは動きを止めた。
最初、彼女の重さは軽く触れるだけだった。どのくらい預けるか決めきっていないみたいに。それから、カイトが離れないでいると、もう少しだけ体を預けた。上着があるせいで、その接触は普通のものにとどまっていた。布と布。彼女の背中の線が、カイトの胸と肩に当たっている。
それでも彼女は、目の前の寝袋ではなく、そうする方を選んだ。
「これ、いい?」ユキが聞いた。
「うん」
カイトは、母のマットの上で後ろへ滑らないように片足を調整した。それから、そのままでいた。
しばらく、彼はただ支えだった。
ユキの呼吸はゆっくりになった。眠るほどではない。けれど、外で見せていたより多く疲れを抱えていたのは分かった。風でテントの布が一度動いた。壁の向こうで夕方が深くなり、赤い光はもう少し暗くなった。
カイトは閉じた入口の方を見た。
後ろへ倒れすぎれば、ユキは支えを失う。前に寄りすぎれば、彼女を押す。だから彼はそのままの位置にいて、彼女の重さに合わせて、あまり考えずに釣り合いを取った。
しばらくして、ユキが肩を少し動かした。
「兄さん、すごくまっすぐ座ってる」
「唯一空いてる場所を取りすぎないようにしてる」
「それが言い訳?」
「理由の一つ」
彼女は一秒黙った。
それから、ほんの少しだけ、さらに背中を預けた。カイトは、自分まで彼女から離しておかなくてもいいのだと分かった。
カイトは少し向きを変え、自分の重さも慎重に彼女へ預けた。
多くはない。背中がそれほど頑張らなくて済むくらい。彼女の姿勢は受け止め、それから彼に合わせて少し変わった。二人のあいだで圧力が均等になり、彼が一方的に支えているだけではなくなった。狭いテントの中で、二人は背中合わせに座り、一人で座っているよりその方が役に立つというだけの理由で、互いを支えていた。
沈黙が長くなっても、どちらも話さなかった。
外では、空き地が小さく動いていた。ドライバッグがずれる音。父が砂利の上を歩く音。母が低く短く笑い、その音が消える。テントはそれらを少し遠くに置いていた。
カイトは、自分の肩の力が抜けていることに、抜けたあとで気づいた。
一日は、動きを止めてから分かる種類のもので満ちていた。長い車移動、レンタル受付、カヤックでの最初のぎこちない回転、流れがやっと分かり始めた川の区間、船着き場、歩き道、テント。その多くは楽しかった。思っていたよりも楽しかった。それと同時に、起きているあいだには気づかなかった分まで、彼を使っていた。
手ですることがなくなると、それが一度に追いついてきた。
上着の層越しでも、彼女がもたれているところには、まだ温かさがあった。
テントの空気は涼しいままだった。手はまだ冷たかったが、しばらくすると、そればかりを気にしなくなった。
先に話したのはユキだった。
「カヤック、思ってたよりよかった」
カイトは、最初に浅く入りすぎていた二人のパドルや、ユキのカヤックの先が葦へ向かっていったこと、川が直す前に自分で直さなければならないと気づいたときの彼女の顔を思い出した。
「川の端に突っ込みかけてた」
「一回だけ」
「一回以上」
「二回目はそこまでじゃなかった」
声はいつもより角が少なかった。訂正はまだある。けれど、疲れと閉じた静けさでやわらいでいた。
「そのあとはうまくなった」とカイトは言った。
「兄さんも」
「ん」
「落ちかけたけど」
「落ちてない」
後ろでユキが小さく音を出した。笑いに近かったが、疲れすぎていて最後まで笑いにはならなかった。
テントはもう一段階暗くなった。
カイトには、ファスナーの細かいところまでは見えなくなっていた。ただ線だけが見える。屋根近くの赤い布は、外から夜が押してくるせいで、ほとんど茶色に変わっていた。
「一キロ半くらいより長く感じた」とユキが言った。
「荷物があったから」
「あと、カヤックのあとだったから」
「たぶん」
「お母さんたち、もっと楽だったって覚えてたのかな」
カイトは少し考えた。
両親はそれなりに慣れた動きで進んでいた。けれど、どこも痛くないという動きではなかった。空き地に着くと、二人ともすぐ座っていた。
「道より、場所の方を覚えてたのかも」
そのあと、ユキは黙った。
それから言った。
「そうかもね」
「ん」
彼女の重さが、もう少しだけ後ろへ落ち着いた。カイトは自分の重さでそれに答えた。そうしない理由はなかった。釣り合いは保たれていた。
不思議なのは、この休み方をすると、テントが狭く感じなくなることだった。
マット同士はまだ触れている。寝袋は床をほとんど占めている。余分なバッグはカイトの寝る場所の半分を覆っている。それは何も変わらない。それでも狭さは、解決しなければならない問題ではなくなった。ただ、自分たちのいる空間になった。
『仲のいい四人』
父の言葉が頭の中で響いた。
カイトは肩を少しずらし、頭も少しだけ後ろへ傾けて、ユキの方へ預けた。ユキは離れずに、その動きに合わせた。
カイトは、ユキの手が寝袋の端の近くに置かれているのに気づいた。指はもう曲げ伸ばししていなかった。
「腕、まだ痛い?」彼は聞いた。
「うん」
「俺も」
「さっきは何でもないって言ってた」
「さっきはまだ使ってた」
ユキの肩が、背中越しにかすかに動いた。
「何でもないって、そういうものじゃないと思う」
「違うな」
彼女はそれ以上言わなかった。
静けさが戻った。今度は、少し穏やかだった。
しばらくのあいだ、カイトは焚き火台のことも、外の荷物のことも、テントのロープをもう一度確認するべきかどうかも考えなかった。それらがそこにあることは分かっている。あとで確認する。けれどテントの中では、もう少しだけこのままでいていいと思えた。
数分は、それで足りた。
外では光がさらに引いていった。やがて母の声が、布越しにはっきり届いた。
「どっちか、紙コップを持ってきてくれる?」
ユキはすぐには動かなかった。
カイトも動かなかった。
それから彼女は小さく息を吐き、前へ身を起こした。
「私が取る」
「俺の方が近い」
「兄さんは、自分が取った場所を直して」
カイトは下を見た。
座っているあいだに、ドライバッグがまた真ん中へ近づいていた。
ユキも同時に気づき、それを壁ぎわへ押し戻した。
「ほら」
「直すつもりだった」
「知ってる」
彼女はカイトが手を伸ばす前にファスナーを開けた。涼しい夕方の空気がテントの中へ入ってくる。
木々、砂利、荷物、木の匂い。それから、両親が空き地を夕食の場所へ変え始めている気配。キャンプ地が二人の周りに戻ってきた。
カイトは少し遅れて外へ出た。涼しい空気は、まず、彼女の重さがあった上着の背中に触れた。
食べ物の袋に気づく前に、彼はそのことを考えていた。それが少し珍しくて、半秒ほど立ち止まった。
それからユキが荷物のそばにしゃがみ、その瞬間は扱いやすいものへ変わった。
カイトは、彼女が探す前に紙コップを取った。
作業しているあいだに、空き地は変わっていた。
木々の上の空は、もう遅い午後ではなかった。夕方の手前の青へ深まり、幹のあいだの影は濃くなっている。まだ火のついていない調理場所は、今ははっきりした場所に見えた。灰色のシート。黒い焚き火台。鍋。水のボトル。食べ物の袋。砂利の向こうの灰入れ。大きさごとに積まれた薪。両親は外の空気の中に、小さな秩序の角を作っていた。
カイトはごみ袋を食べ物の袋の近くに置いた。
「そこじゃないわ」と母が言った。「それは夕食のあと用。食べ物と間違えないように、水の方へ寄せて」
彼は動かした。
ユキは食べ物の袋のサイドポケットを開けた。
「コップ?」
カイトはもう持っていた。
彼はそれを渡し、それからウェットティッシュを彼女の膝のそばに置いた。
「ありがと」
「ん」
母がスープと味噌汁の袋を渡した。
「これ、分けてくれる?」
ユキはうなずいた。
「お父さんは味噌汁?」
「そう」と焚き火台の方から父が言った。
「ほかに何があるか見てもいないのに」
「選択肢を信頼している」
「味噌汁の方が好きなだけでしょ」と母が言った。
「それもある」
ユキは袋を分けた。父とカイトには味噌汁。自分と母にはスープ。カイトは大きいボトルから鍋に水を入れた。母が片手を上げたところで止める。
「それくらいでいいわ。先にスープ。カレーはそのあと」
彼はボトルを、いつもよりシートから離して置いた。父の言っていたことは正しかった。人が周りで動き始めると、熱の届く場所は見た目より広くなる。
父は火打ち石と、小さな木くずのかたまりで火をつけた。
最初の火はゆっくりついた。一度小さく縮んでから、乾いた焚きつけの端を見つけた。父は、すぐに薪を足さずに待っていた。
「それ、そんなに弱くていいの?」ユキが聞いた。
「最初はな」
父は細い枝を一本、上に渡した。火はゆっくりそれを取り、それから保った。
母がユキに紙コップを渡した。
「はい。夕食の前にお茶」
ユキは受け取った。
「ありがとう」
カイトはボトルから半分だけ注ぎ、返した。それから母の分、父の分、最後に自分の分を注いだ。
カレーのパウチを湯に入れるころには、火は落ち着いた橙色の光になっていた。パウチはすぐに見分けられた。母が詰める前に印をつけていたからだ。母は甘口、ユキとカイトは中辛、父は辛くないもの。
カイトは辛くないパウチを取り出し、父の近くへ置いた。
父がそれを見た。
「俺の評判も一緒に来たか」
「去年の冬、中辛カレーが辛すぎるって言ってた」とユキが言った。
「辛かった」
「中辛だったよ」
「中辛でも辛いことはある」
母は甘口のパウチを自分の器の横へ置いた。
「食べるときに、誰も何かを証明しなくていいの」
父は一度うなずいた。
「いい家族方針だ」
食べ物に使う紙の器は、地面の上ではうまく平らにならなかった。カイトは食べ物の袋の蓋の上で位置を直し、それから諦めて、畳んだパッドの一つを低い台にした。温めたご飯を置くためだ。ユキはそれぞれの器の横に箸を置き、風でナプキンが動かないよう、片手で軽く押さえた。
夕食は、少しずつ形になった。
まずご飯。
それからカレー。
それから紙コップのスープと味噌汁。
盛りつけてみると簡単だった。パックご飯にレトルトカレー、インスタントの汁物、お茶、そして、熱いカレーには少し酸っぱいものもいるからと母が小さな容器に詰めてきた梅干しがいくつか。
カイトは、自分たちが来る前から火のそばにあった丸太の一つに座った。ユキは隣に座った。火の光は届くけれど、さっき煙が流れていた方からは少し離れている。両親は左右に座り、調理場所の周りにゆるい輪ができた。
最初の一口は、飲み込む前に少し止まらなければならないくらい熱かった。
家で食べるカレーよりおいしいわけではない。それでも、周りの空気が冷えていく中で紙の器を持っていると、その方がよく感じた。
ユキはいつもよりゆっくり食べていた。口に運ぶ合間、両手で器を包んでいる。
「おいしい?」母が聞いた。
ユキはうなずいた。
「すごく」
父は火の明かりの向こうで暗く見える赤いテントを見た。
「暗くなる前に全部終わってよかったな」
「テントが残ってたら、夕食どころじゃなかった」とカイトが言った。
ユキもそちらを見た。
「今は違って見える」
カイトも視線を追った。火の光の中では、赤い布はもう、袋に入れて運んできたものには見えなかった。
「うん」と彼は言った。
母はスープに目を落として笑った。
「それは、ちゃんと立てられたってことね」
カイトはテントのロープを一度見てから、自分の器へ戻った。
しばらく、あまり話さずに食べた。火が時々動いた。誰かの箸が紙の器に小さく当たった。光の外で、葉がかすかに揺れた。
夕食のあと、母はデザートの前に片づけると言い張った。
「カレーのごみのあとで手がべたつくのは、面倒のもとよ」
誰も反論しなかった。カレーのパウチはもう、触るのがあまり気持ちよくない冷え方をし始めていたからだ。
カイトは使い終わったパウチを小さなビニール袋にまとめて閉じた。ユキは鍋が触れるくらい冷めてから一度拭き、母に渡した。父は火を確認し、大きめの薪を一つ内側へ動かして、煙が出るのではなく均等に燃えるようにした。ごみ袋は縛られ、それから大きい密閉袋へ入れられた。
普通の台所を片づけるより、時間がかかった。
気軽に何かを置ける場所がない。足元に置いた包み紙は飛ばされるかもしれない。コップは倒れるかもしれない。ウェットティッシュにも専用の袋がいる。食べ物の匂いは閉じ込めなければならない。
終わるころには、そこは夕食の前とほとんど同じくらい整っていた。ただ、少しだけ温かくなっていた。
ユキがマシュマロを取り出した。
彼女は袋を丁寧に開け、中をのぞき込んだ。
「無事だった」
カイトはそちらを見た。
「危なかったのか?」
「潰れるかもしれなかった」
「潰れても食べられる」
「焼きにくいでしょ」
父が焼き串を配った。
「焼くために持ってきたんだからな」
ユキはその支持を得て、少しうれしそうに見えた。
「そういうこと」
カイトは串を受け取った。
「二人とも決めるの早いな」
父は自分の串の先にマシュマロを刺した。
「俺はやりながらルールを覚えている」
最初のマシュマロはユキのものだった。
彼女は、カイトがマシュマロに必要だと思うよりずっと慎重に、火の低い縁の上へそれをかざした。火の明かりの中で、顔は真剣に見えた。勝負にする必要のないもので負けず嫌いが出るときの顔だった。
「一番いいのを作ろうとしてる」とカイトは言った。
「焦がさないようにしてるの」
「ユキにとっては同じだろ」
ユキは串を少し回し、それから彼のマシュマロを見た。
「私のが兄さんのよりよければ、それでいい」
「じゃあ、俺が勝ったらどうする?」
彼女はカイトのマシュマロを少し見た。片側はもう、むらのある色になり始めていた。
「勝った方が、負けた方に一つだけ何かさせられる」
カイトは彼女を見た。
「何でも?」
「無理なこと以外」
「かなり広い」
「兄さんはどうせ、つまらないことを選ぶでしょ」
すぐには反論できなかった。
近くでお茶を持って座っていた母は面白そうにしていたが、口は挟まなかった。父はもう一つ目のマシュマロを食べ終え、さっきより慎重に二つ目を準備していた。
カイトは自分の串を見た。
「じゃあ、新しいので始めた方がいい」
ユキの目が彼に戻った。
「正式なルールがほしいの?」
「半分焦げたマシュマロにしては、賞品が大きすぎる」
「負けてる人が言いそう」
「まだ負けてない」
彼女は、彼の串の先で少し垂れ始めているマシュマロを見た。
「それなら負けるよ」
カイトは、それが正しかったので受け入れた。
最初の分は数に入れずに食べた。ユキの方がうまくできていたが、カイトは言わなかった。ユキも聞かなかった。つまり、彼女は分かっていた。
本番の勝負では、二人とも新しいマシュマロを取った。
父は串の先が汚れていないか確認してから、カイトにもう一本の焼き串を渡した。
「火に直接入れるなよ。炭に近いところで持つ」
「分かってる」
「今のは全員に言った」
ユキは持ち方を直した。
「私は触れるつもりなかったよ」
「今はそう言う」と父が言った。
母は折りたたみのパッドに少しもたれた。
「必要なら私が判定するわ」
ユキが母を見た。
「客観的に?」
「マシュマロでできる範囲で」
「厳しくなさそう」
「いちばんいいきつね色を選びます」
二人は焼き始め、カイトは今度、マシュマロを火から少し遠ざけた。
ユキが気づいた。
「下げた」
「さっき、傾いてるって言ったから」
「助言のつもりじゃなかった」
「役に立った」
彼女は串をゆっくり一度回した。
「じゃあ私に加点がいる」
「ない」
火はさっきより熱く落ち着いていて、炎の低い縁だけでも十分熱があった。二つのマシュマロはすぐに変わり始めた。カイトは今度、表面をよく見て、一面が垂れすぎる前に回した。
ユキはいつもより静かだった。
こういうことでユキの負けず嫌いが出るのを、カイトは昔から少しだけ好ましく思っていた。口に出さない方がいいことも覚えていた。言えば、彼女は彼をにらんで、勝つためにさらに集中する。
彼女は串を安定させ、表面がつやを持ち始めるまで待ち、それから次の面に熱が当たるだけの分を回した。表情はあまり変わらない。それでも、かなり集中しているのは分かった。
そのとき、煙の向きが変わった。
最初は薄く、低く焚き火台を横切ってきた。木々のあいだを風が変わると、少し濃くなる。ユキは一度まばたきをして、身を引いた。それでも串は同じ場所に残していた。
「煙」とカイトが言った。
「気づいてる」
「そっちに行ってる」
「それも気づいてる」
最後の言葉で、声が少し引っかかった。彼女は一度咳をし、もう一度咳をした。火の光で目が潤んでいる。
カイトは彼女の串へ手を伸ばしかけた。
「下がれ」
「今動かしたら、この面が冷める」
「それは大事じゃない」
「今は勝負中」
彼女は肩へ咳を逃がすくらいには顔を背け、それでも熱から外さないまま、マシュマロを慎重に回した。
父が火ばさみで薪を直した。
「少し待て」
小さな薪の周りで火がきれいにつくと、煙は薄くなった。ユキは何度かまばたきをし、それから指の横で目尻を拭いた。
カイトは彼女のマシュマロを見た。
焦げていなかった。
なぜか。
「頑固すぎる」と彼は言った。
「それはもう知ってるでしょ」
「褒めてない」
咳のせいで、彼女の声はまだ少しかすれていた。
カイトが自分のマシュマロに目を戻すと、彼女を見ているあいだに片側が早く色づいていた。
ユキも同時にそれに気づいた。
彼女は笑った。
「左側」
カイトは急いで回した。
「遅い?」
「たぶん」
「うれしそうに聞こえる」
「違う」
「顔はそう言ってる」
最後の判定は難しくなかった。
カイトのマシュマロには濃くなりすぎた側が一つあり、最後まで追いつかなかった白い側が一つあった。ユキのものは完璧ではないが、全体に均等に色づき、縁はかすかにきつね色で、煙で邪魔されたところの一角だけが少し濃くなっていた。
母が身を乗り出して、両方を見た。
「ユキの方が均等ね」
父がうなずいた。
「同意」
カイトは自分のマシュマロを見て、それから彼女のものを見た。
「煙があったのに」とユキが言った。
彼女は自分のマシュマロを、火から離して大事そうに持っていた。目はまだ少し潤んでいたが、口元が動いた。
「一つね」
「分かってる」
「何でも一つ」
「やる」とカイトは言った。「無理なことじゃなければ」
彼女はそれで満足したようだった。
そして、はっきり満足げにマシュマロを食べた。
カイトも自分のを食べた。むらがあっても、まだおいしかった。濃い側も、焦げた食べ物にありがちなほど悪い味ではなかったし、中はほとんど液体に近いくらい溶けて、薄くぱりっとした外側に対して柔らかかった。
「わざと焦がす人もいるよ」と父が彼を見ながら言った。「その味が好きらしい」
カイトは串に残った色づいた縁を見た。
「分かる気はする」
ユキが横から見た。煙で潤んでいた目はほとんど戻っていたが、端はまだ少し湿っている。
「だからって、兄さんの方がおいしかったわけじゃないよ」
「そうは言ってない」
「ならいい」
父は空になった串を指のあいだで一度回した。
「念のため、味と見た目は別部門にしてもいいかもしれないな」
「だめ」とユキはすぐに言った。
カイトは彼女を見た。
「早かったな」
「兄さんが使うから」
たぶん使った。
母はお茶に目を落として笑った。
「じゃあ、公式結果はこのままね」
ユキは満足そうだったが、何をしてほしいのかは言わなかった。
火が二人のあいだで小さく動いた。
カイトは空の串を一度手の中で回し、その約束をひとまずそこに置いた。
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これから、いくつかのシーンをAIで画像生成していく予定です。AI生成であることが気にならない方は、ぜひリンクから画像を見てみてください。
こちらは、テントの場面を描いたイラストです。
https://imgur.com/a/updated-scene-ohAoRt5




