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まだ知らなかった距離  作者: 遠井エイト
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第9章 パート1 — キャンプの準備

キャンプの準備 — ユキ 

 


朝食が終わる前に、ユキはカイトに送ったリストにはまだ手を入れる必要があると気づいた。

 

ユキは片手にスマホを持って、台所の調理台のそばに立っていた。炊飯器からは、最後の細い湯気が上がっている。画面には昨夜作ったキャンプ用の食べ物リストが表示されていて、机で打ち込んだときよりも、今は少しきちんと分けられていた。

 

土曜の昼。

 

夕食。

 

朝食。

 

日曜の昼。

 

飲み物。

 

その他、忘れないもの。

 

日曜の昼は、明かりを消したあとに追加したものだった。一度横になってから、やっぱりその考えが離れなくて起き上がった。日曜の午後にカヤックを返すなら、漕いで戻る前に食べるものが必要になる。カイトなら、ちゃんと見ればたぶん気づくようなことだった。

 

ユキは画面を下へ送った。

 

ウェットティッシュ。紙コップ。割り箸。小さなビニール袋。お茶のティーバッグ。マシュマロ。

 

チョコビスケットかも。

 

そこだけは、ほかの項目より必要なものには見えなかった。「かも」を消そうかと思って、それからそのままにした。

 

リストは、ユキの手を止めさせるものではなかった。整っていて、変えられて、小さな判断ばかりで、あと一行足せば直せるものだった。アルバイト応募の結果のメッセージとは違う。

 

今でもまだ、昨夜のカイトの姿が見える気がした。リビングに立って、スマホを手に持ち、学校の連絡や天気予報を言うときと同じ平らな声で、採用されなかったと言っていた。ひどく落ち込んでいるようには見えなかった。それがかえってよくなかった。スマホをしまう前の、ほんの少しの間だけで、十分だったから。

 

そのとき、階段を下りてくる足音がした。

 

ユキは振り返る前にスマホをロックした。

 

カイトが制服姿で台所に入ってきた。朝のランニングのあとにシャワーを浴びたせいで、髪の先がまだ少し湿っている。彼の視線はまず、ユキの手にあるスマホに向いた。まるでそのリストも、彼を待っていたみたいだった。

 

「もうリスト見てるの?」

 

「レトルトカレーを足したがってた人がいるから」

 

「レトルトカレーを足し忘れてた人がいたから」

 

「忘れてない。夕食のこと考えてた」

 

「夕食より先にマシュマロ書いてた」

 

「デザートの方が簡単だから」

 

「それ、認めたってこと?」

 

「確認リストであって、裁判じゃない」

 

カイトは調理台の方へ来て、ユキがもう一度ロックを解除すると、画面をのぞいた。スマホを彼女の手から取ることはしなかった。

 

「日曜の昼、足したんだ」

 

「うん」

 

「いいと思う」

 

「確認するつもりだったみたいな言い方」

 

「するつもりだった」

 

「じゃあ手間を省いてあげた」

 

彼はもう少しリストを見下ろした。

 

「飲み物、もっといる」

 

「キャンプ場に自販機あるでしょ」

 

母が、椀を一つ手に持ったまま動きを止めた。

 

「今回はないわよ」

 

ユキはスマホから顔を上げた。

 

「ないの?」

 

ダイニングの方から父が答えた。

 

「そういうキャンプ場じゃないんだ」

 

カイトが父の方を向いた。

 

「じゃあ、どういうところ?」

 

父はもう少し得意そうな顔で入口まで来た。

 

「正式なキャンプ場じゃない。お母さんと昔見つけた、いい場所だよ。レンタルの店より下流の方にある」

 

ユキの指が画面の上で止まった。

 

「適当な場所?」

 

「きれいな場所」と父が訂正した。「そこは違う」

 

「正式じゃないとも言ったよね」とユキは言った。

 

母が椀をテーブルに置いた。

 

「そこが気になったのね」

 

カイトはリストへ視線を戻した。

 

「少し」

 

「安全よ」と母は言った。「お父さんは、実際より少し冒険っぽく聞こえる言い方をするのが好きなだけ」

 

カイトは飲み物の欄を見下ろした。

 

「じゃあ自販機はなし」

 

「自販機はなし」と母が言った。「売店もなし。レンタルの店を出たら、必要なものは全部持っていく」

 

ユキはもう一度リストを見た。

 

「じゃあ飲み物、大事だね」

 

「水は十分持っていくから大丈夫」と、母はどちらかが沈黙を大きくする前に言った。「大きいボトルはお父さんがもう確認してあるわ」

 

「あとフィルターも」と父が足した。

 

ユキは顔を上げた。

 

「フィルター?」

 

「小さい浄水フィルター。念のため」

 

カイトの注意が少し鋭くなった。

 

「何の念のため?」

 

「予定より必要になったときのためだよ」と父は言った。「たぶん使わない」

 

ユキはそれでもリストに水を足し、その横に括弧でフィルターと書いた。

 

カイトが近づいて画面を見た。

 

「もう持ってるなら、フィルターまで書かなくていいだろ」

 

「リストに見えてる方がいい」

 

「分かった」

 

「水はこっちで用意しておくから」と母が言った。「あなたたちは重くならないように、スポーツドリンクを一人一本ずつと、飲みたければお茶のティーバッグを買ってきて」

 

カイトはまたリストを見た。

 

「じゃあお茶は多め。カヤックのあと用にスポーツドリンクも」

 

ユキはもう一度リストを見た。

 

「実際、どのくらい漕ぐの?」

 

「数キロくらい」

 

「何でもないみたいに言うね」

 

「何でもないとは言ってない」

 

「お父さんみたいな言い方だった」

 

カイトは少し心外そうに見えた。

 

「それは何でもないより悪い」

 

その返事が思ったより自然に出てきたので、ユキは気をつけることを少し忘れそうになった。

 

少しだけ。

 

カイトはもう一度リストを確認するために近づき、ユキの頬に彼の息がかかるくらいの距離になった。

 

不採用になったことが消えたわけではない。けれど今、彼の注意には向かう先があった。ユキはそれがうれしかった。

 

うれしすぎたのかもしれない。

 

ユキは画面に目を落とし、必要以上に早く文字を打った。

 

母が引き出しを開け、小さな封筒を取り出した。

 

「放課後の買い物にはこれを使って。できればレシートも取っておいてね」

 

ユキは両手で受け取った。

 

「うん」

 

「道具はお父さんと私で見るし、あなたたちが何か忘れても、今夜ならお店に行けるから」

 

「そんなに忘れないよ」とカイトが言った。

 

ネクタイを直しながら父が入ってきた。

 

「そう言う人が、ランタンの燃料を忘れるんだ」

 

「それはあなたでしょ」と母が言った。

 

「一回だけだし、火は起こせた」

 

カイトの口元がかすかに動いた。笑顔と言うほどではなかったけれど、昨日よりはそこに近かった。

 

「ミックスナッツとドライフルーツもいいわね」と母が言った。「準備しなくても食べやすいもの」

 

「お父さん、小魚とアーモンドのやつも好きかも」とユキが言った。

 

ユキはそれもリストに足し、もう一度確認してから画面を閉じた。

 

朝食は、そのまま旅行の話の中で続いた。父は仕事から帰ったらテントと足りない道具を確認すると言った。母は、土曜の夕食用でないなら、すぐ傷むものは買わないようにと念を押した。カイトは、クーラーボックスの蓋がまだちゃんと閉まるかを聞いた。

 

ユキはクラッカーとおにぎりなら、どちらが持ち運びやすいかを聞いた。

 

「土曜はおにぎりね」と母が言った。「朝作っておくわ」

 

「そのあと用にクラッカー?」カイトが聞いた。

 

「クラッカーは粉々になる」とユキが言った。

 

父が湯飲みを置いた。

 

「外では粉々でも食べ物だ」

 

母が父にやわらかい視線を向けた。

 

「旅行のあとで私が直さないといけない癖を、子どもたちに教えないでください」

 

そのあとは、朝が家を少しずつ出ていく形になった。朝食の食器。スクールバッグ。ユキの前ポケットの中の封筒。後ろで鍵を確かめるカイト。外の空気は一晩で冷えていた。寒いわけではないけれど、夏の終わりにあった重たい明るさはもう日差しから抜けていて、低い塀に沿う影がはっきりして見えた。

 

学校では、一日が連休の周りを動いていた。

 

文化祭準備の跡が、あちこちに残っている。教室の入口近くの壁には段ボールの束が立てかけられていた。誰かが途中まで描いたポスターを後ろの掲示板に貼り、その角に「さわるな」と書いていたけれど、それで誰かが本当に触らなくなるかは分からなかった。ホームルームで、サクライ先生は、月曜日の振替休日は模試の準備を無視する口実ではありません、と言い、その文が終わる前に何人かがうめいた。

 

ユキは、この週末に勉強する時間はないと分かっていながら、その連絡を書き写した。

 

模試の注意の下には、その週の初めに、もう進路面談の時間を書いてあった。

 

九月二十六日 金曜日 三時間目 — カゲツ・カイト

 

九月二十六日 金曜日 四時間目 — カゲツ・ユキ

 

旅行の次の金曜日だった。予定表はもう何日も前から貼り出されていて、自分の時間を確認するために掲示板の前に集まる生徒は、ほとんどいなくなっていた。文化祭の連絡、試験日程、教室当番表のあいだにある、もう一枚の紙になっていた。

 

ユキはその二行を少し見た。

 

彼が先。

 

その次が自分。

 

自然なことだった。名字が同じだし、続けて行う方がたぶん楽なのだろう。

 

それでも、そう並んでいる名前を見ると、来週が頭の中で思っていたより近く感じられた。

 

その考えが重く居座る前に、ユキはページをめくった。

 

昼になるころには、教室のざわめきはもう少し明るいものに変わっていた。机が向きを変えられ、ランチクロスが広げられる。窓際の誰かが、三連休なのに半分が宿題でつぶれるなんてもったいない、と文句を言った。別の生徒が、宿題があるから三日あるんだと返した。

 

サトシは大げさにため息をつきながら、カイトの机のそばへ椅子を引きずってきた。

 

「俺は振替休日を、学校で受けた心のダメージの回復に使うことにした」

 

カイトは呆れたように目を動かした。

 

ユキが弁当を持っていくと、アイコも教室の後ろから加わった。

 

「一日だけ遅くまで残って、段ボールに色を塗っただけでしょ」とアイコが言った。

 

「大きい段ボールだったんだよ」

 

「木を塗ってたよね」

 

「枝がすごく細かかった」

 

カイトが弁当箱を開けた。

 

「大きな負担だな」

 

「やっと分かってくれる人がいた」

 

「いや、アイコに同意した」

 

サトシは半秒だけ傷ついた顔をして、それから会話を取り戻した。

 

「で、二人は連休どうするの?」

 

「キャンプ」とユキが言った。

 

アイコが弁当から顔を上げた。

 

「本当に?」

 

「親と一緒に」とカイトが足した。

 

「それとカヤック」とユキが言った。

 

サトシはしばらく二人を見た。

 

「カヤックって、普通の追加情報みたいに言ったな」

 

「旅行の一部だから」とカイトが言った。

 

「だからって普通にはならない」

 

「カヤックか」サトシはカイトを見た。「お前、下手かもな」

 

カイトは箸を持ったまま止まった。

 

「なんで?」

 

「初めてだろ?」

 

「うん」

 

「じゃあ考えすぎそう」

 

アイコがサトシを見た。

 

「そういう決まりはないよ」

 

「説明を丁寧に読みすぎる人にはある」

 

カイトは少し考えた。

 

「それはあるかもしれない」

 

アイコがユキを見た。

 

「ユキは行ったことある?」

 

「ない」とユキは言った。「両親はあるけど、私たちが生まれる前」

 

「じゃあ分かってるんだね」とアイコが言った。

 

「たぶん」とカイトが返した。

 

「たぶん?」ユキは彼を見た。

 

「お母さんは信じてる。でもお父さんが『冒険』って言いすぎてた」

 

「それは心配だね」とアイコが言った。

 

サトシが箸で指すようにした。

 

「ほらな。だからうちは自然を避けてるんだ。父親は外に出ると妙に張り切る」

 

ユキは笑った。その音は、自分で思ったよりも楽に出た。

 

しばらくのあいだ、昼休みはそのままそこにあった。テント、川、近くにコンビニがなかったらサトシは生き延びられるのか、行くわけではないのにアイコはキャンプに向いた服を持っているのか。カイトは昨日の昼よりも多く答えていた。大きな声ではないし、はっきり楽しみにしているというほどでもない。それでも、返事に同じ迷いはなかった。

 

ユキはそれを聞けてうれしかった。

 

そのとき、まだ野菜をつまんでいたサトシが言った。

 

「でも、タイミングはよかったよな。書店に採用されてたら、この週末に研修とか書類とかあったかもしれないし」

 

彼はいつものように軽い声で言った。でも、雑ではなかった。そこに冗談はなかった。

 

カイトは弁当に目を落とした。

 

「かもな」

 

「嫌な週のあとに予定があるのは、たぶんいいことだし」とサトシが続けた。「それだけ」

 

アイコはサトシを見て、それからユキを見た。

 

ユキはお茶に手を伸ばしかけていた。その手は、パックに触れる前に止まった。

 

週末は違う形になっていたかもしれない。

 

もし本屋がカイトを選んでいたら、明日はもう、一部が別の何かのものになっていたかもしれない。研修の時間。シフトの説明。書類。店長からの電話。彼女とは関係のない予定へ踏み出す、最初の慎重な一歩。

 

代わりに、二人は放課後に食べ物を買いに行く。

 

代わりに、カイトは明日の朝そこにいて、一緒に出発する。

 

代わりに、週末は空いた。

 

そして、彼が不採用だったと言ったとき、ユキが最初に思ったのは、彼がどれだけ落ち込んでいるかではなかった。

 

この週末がそのまま残る、ということだった。カイトが研修や初めてのシフトに引っ張られず、自分の隣にいる。

 

心配より先に、気遣いより先に、自分がそう感じた方がいいと思うどんなものよりも先に、安堵が来た。

 

ユキはお茶のパックを取り、弁当箱の横に置いた。

 

アイコが、逃げ場をふさがないくらいのやさしさで聞いた。

 

「楽しみ?」

 

「うん」とユキは言った。

 

本当だった。

 

それが問題だった。完全に本当だった。

 

「というか」と彼女は続けた。自分でも返事が短すぎた気がしたからだった。「カヤック初めてだから、ひどいことになるかもしれない」

 

カイトがこちらを見た。

 

「最初はたぶん」

 

「そこは同意しないで」

 

「落ちないといいな」

 

「落ちたら兄さんも連れていく」

 

サトシが背もたれに寄りかかった。

 

「巻き込まれたら、写真撮ってくれ」

 

アイコがため息をついた。

 

「それは緊急時の対応じゃないよ」

 

「自業自得なら緊急じゃない」

 

「それも違う」

 

会話は流れていった。ユキはそれに任せた。弁当を食べ、アイコに食べ物のリストを見せてほしいと言われて見せた。

 

放課後は、文化祭準備を手伝うために少し残った。クラスで使うテーブルに合わせて、黒い布を切る作業だった。

 

廊下には、絵の具とテープの匂いがかすかに残っていた。別のクラスの生徒二人が、屋根の形をしたパネルを階段の前へ運んでいく。数歩ごとに不自然に傾き、その後ろで誰かが「左、左——違う、そっちじゃない左」と言い続けていた。カイトは彼らを通すために立ち止まった。ユキは壁沿いに彼の隣で立ち、段ボールの屋根が危うく窓にぶつかりそうになるのを見ていた。

 

「あれ、明日までは絶対もつな」とカイトが言った。

 

「すごく前向きに聞こえる」

 

「その先は分からないけど」

 

外では、生徒たちが駅、自転車置き場、商店街の方へ分かれていった。午後のあいだに空気は少し暖まっていたけれど、風はその中をすっきり通っていた。ユキはスマホのリストを開いたまま歩いた。

 

歩きながら、ユキは画面を見た。

 

「自販機くらいはあると思ってた」

 

「俺も」

 

カイトは前の交差点を見ながらそう言い、もうその勘違いをリストで直すべきものとして扱っていた。

 

「昔見つけたきれいな場所、だって」とユキは言った。

 

「お父さん、誇らしそうだった」

 

「私たちを不安にさせて楽しんでたみたいにも聞こえた」

 

「それもある」

 

ユキは少し笑い、リストを下へ送った。

 

「つまり、お店なし、自販機なし、近くにキャンプ場の管理棟なし」

 

「トイレもたぶんない」

 

彼女の親指が止まった。

 

「あ」

 

カイトは半歩ぶん黙った。

 

ユキは彼を見た。

 

「その間、安心できないんだけど」

 

「レンタルの店の近くにはあるかもしれない」

 

「それはカヤックの前でしょ」

 

「うん」

 

「そのあとは?」

 

「自然」

 

「そういう言い方しないで」

 

「そういうものだろ」

 

「ウェットティッシュを十分持っていく理由が増えた」

 

「あと石けん」

 

リストの感じが変わってきた。朝はほとんど食べ物だった。食べるもの、飲むもの、旅行を少しよくするもの。今は、その品目のあいだにあるものが見え始めていた。どこで手を洗うのか。ごみをどうするのか。全部をどうやって濡らさないようにするのか。

 

「ただの自然の中ってことは」とユキは言った。「テーブルもないってこと?」

 

「たぶん」

 

「椅子は?」

 

「折りたたみを持っていけばあるかもしれないけど、重くなりすぎるかも」

 

ユキはリストを見つめた。キャンプという言葉が、どれだけ多くを説明していなかったのか、急に分かってきた。

 

カイトはまた前を見た。

 

「大丈夫だよ。二人は前に行ったことあるんだから」

 

「私たちが生まれる前にね」

 

「それでもお母さんがもう一回行くって言った」

 

ユキは止まった。

 

「今まででいちばん強い根拠かも」

 

カイトは少し満足そうに見えた。見せないようにはしていたけれど。

 

そのやり取りで、何かが少し楽になった。全部ではない。手元には増えていくリストがあり、テーブルなしで夕食を食べること、限られた水で食器をどうするか、大事なものを川に落とさないようにすることが、急に頭に浮かんでいた。それでもカイトは隣にいて、不確かさを買えばいいものに変えていた。

 

「防水バッグ」と彼が言った。

 

「お父さんたちが持ってるって言ってた」

 

「服と食べ物用だろ。おやつは取り出しやすい方がいい」

 

「もうおやつ守ってる」

 

「誰かが守らないと」

 

「チョコビスケットのこと?」

 

「ほかの貴重品も含めて」

 

ユキは、取り出しやすいおやつ袋、とメモを足した。

 

カイトはそれを見て、何も言わなかった。

 

通りの先に、スーパーの看板が見えてきた。夕方の光の中で、そこだけ明るい。ユキはもう一度リストを見て、それから前の道を見た。

 

この数時間で、旅行は少し不便になった。

 

不思議なことに、その方が現実味があった。

 

スーパーの向こうには、いつも通る同じ角の商店街の中に本屋が見えた。カイトの視線がそこに一瞬だけ残るのを、ユキは見た。

 

ユキは彼を直接見なかった。代わりにスマホへ意識を向け、店に入るときに画面の明るさを調整した。

 

スーパーの自動ドアが開き、小さな冷たい空気が流れてきた。

 

中は、ユキが思っていたより混んでいた。入口近くではかごが重なる音がして、惣菜売り場には、仕事帰りに夕食を買う会社員の列がもうできていた。プリンの棚の前では、子どもが母親のかごに両手をかけ、選択肢をひどく真剣に眺めていて、ユキは思わず足を緩めそうになった。

 

カイトがかごを一つ取った。

 

何か言われる前に、ユキももう一つ取った。

 

「二ついるでしょ」

 

「反論してない」

 

「しようとしてた」

 

「判断してただけ」

 

「だいたいそれが反論の前に来る」

 

カイトは鼻から小さく息を抜き、ユキについて野菜売り場の方へ向かった。

 

買い物は、リストで見るよりずっと早く進んだ。

 

野菜売り場は少し見ただけで通り過ぎた。にんじん、玉ねぎ、じゃがいも、果物の明るい列は、川を下る荷物というより、普通の夕食に見えた。それでもユキはりんごの前で足を止め、結局やめた。

 

「重い?」カイトが聞いた。

 

「傷みやすい」

 

「りんごってそんなに傷まないだろ」

 

「カヤックだとたぶん傷む」

 

「それでも食べられる」

 

「選べるなら、傷まないものの方がいい」

 

彼はそれを受け入れたようだった。少なくとも、傷んだ果物を食べるかどうかで言い合うのはやめた。

 

代わりに、二人はドライフルーツ、ミックスナッツ、せんべい、それから母が言っていた小魚とアーモンドの小袋を選んだ。カイトはそれぞれの袋の封がちゃんとしているか確かめてから、かごに入れた。

 

「けっこう細かく見てるね」とユキが言った。

 

「袋が開いたら、全部が小魚の匂いになる」

 

「それは説得力ある」

 

海苔やふりかけの並ぶ通路で、カイトはふりかけの前で止まった。

 

「おにぎり用?」ユキが聞いた。

 

「お母さん、朝作るって言ってたから」

 

「じゃあ、お父さんが文句言わないのを選んで」

 

「棚の半分が消える」

 

ユキはシンプルな鮭味を選び、それから小さな梅干しのパックも入れた。

 

カイトがそれを見た。

 

「それ、自分用だろ」

 

「変化のため」

 

「好きなの、ユキだろ」

 

「持っていきやすいし」

 

彼はそれを受け入れ、両方をかごに入れた。

 

次の棚には、レトルトカレー、インスタントスープ、インスタント味噌汁が並んでいた。生の材料ほど明るい感じはしなかったけれど、川やドライバッグ、正式なキャンプ場ではなく父が見つけた小さな場所を想像すると、ずっと現実味があった。

 

カイトはいくつか一人前のカレーを手に取り、表示を比べた。

 

「甘口?」ユキが聞いた。

 

「お母さん用」

 

「中辛?」

 

「俺たち」

 

「お父さんは?」

 

カイトは表情を変えずに、辛くないものを一つ足した。ユキは笑った。

 

ユキはリストの夕食にチェックを入れた。

 

チェックの印は小さかったけれど、旅行は大人たちが決めたものではなく、もう始まっているもののように感じられた。

 

その次はお茶だった。昼間用の麦茶、朝用の温かいお茶のティーバッグ。ユキは一度数えて、またその数を見た。

 

カイトがのぞき込む。

 

「もう一つ足して」

 

「誰用?」

 

「お母さん、外だとお茶を多めに飲む」

 

ユキは彼を見た。

 

彼はそれが当たり前の答えだという顔で見返してきた。

 

それからユキは、家族で出かけたり公園で昼を食べたりするとき、母がなぜかいつも誰より先に自分のボトルを空にしていたことを思い出した。もちろんカイトも覚えている。

 

ユキはもう一袋足し、ほかの食品に押しつぶされないようにカレーの横へ置いた。

 

飲み物の棚では、母に頼まれたスポーツドリンクを買い、それからユキが日曜の昼もあると指摘したあとで、お茶のボトルを二本追加した。

 

カイトはそれをかごに入れてから、ユキを見た。

 

「お父さんが重いって言ったら、ユキが足したって言う」

 

「かごに入れたのは兄さんでしょ」

 

「ユキの影響で」

 

「それは弁解にならない」

 

「お父さんには通じるかもしれない」

 

ユキは彼がボトルを戻す前に、リストの飲み物にチェックを入れた。

 

そのあとは紙用品の棚を早く回った。割り箸。紙コップ。ナプキン。ウェットティッシュ。濡れたものを入れる小さなビニール袋。

 

ユキは大きいゴミ袋のロールに手を伸ばし、それから止まった。

 

「大きいの、いる?」

 

カイトはかごに入っている小さな袋を見た。

 

「たぶんいらない」

 

「生ごみ、包装、濡れたもの」と彼女は指で数えた。

 

「小さい袋で分ける」

 

「それでリュックに戻す?」

 

「お母さんが許せばドライバッグ一つ」

 

ユキは大きなロールを戻し、代わりに小さい袋をもう一パック入れた。

 

「紙は?」

 

「お父さんが焚き火に入れていいって言ったものだけ」

 

「包装はだめ」

 

「当たり前」

 

ユキは用品の欄にチェックを入れた。小さい袋の方がよさそうだった。

 

カイトはウェットティッシュをもう一パック取った。

 

ユキは彼を見た。

 

「なくなっても、向こうじゃ買えない」と彼は言った。

 

「それはそうだね」

 

ユキは彼がそれを入れるのを止めなかった。

 

おやつの棚は最後だった。

 

そこは店のほかの場所より明るく、地味なキャンプ用品のあとでは色が多すぎるくらいだった。チョコレート、クラッカー、ポテトチップス、ドライフルーツ、ミックスナッツ、米菓。通路の端では、中学生らしい二人が味で言い合っていた。

 

カイトはチョコビスケットの前で足を緩めた。

 

ユキはそれを見た。

 

彼が取る前に、ユキは箱を一つ取って自分のかごに入れた。

 

「決めたの?」と彼が聞いた。

 

「リストにあったから」

 

「かも、付きで」

 

「かもは消した」

 

「いつ?」

 

「心の中で」

 

「それ、確定してるように聞こえない」

 

「現物を見たら迷いがなくなった」

 

その答えで、彼の表情が少しだけ変わった。笑顔とは言えないけれど、近かった。

 

ユキは次にマシュマロを入れ、それから数棚先でコンソメ味のポテトチップスも入れた。

 

カイトはすぐ気づいた。

 

「いつもその味選ばないだろ」

 

「キャンプの食べ物には、しょっぱいものも必要」

 

「ほかにもしょっぱいものあった」

 

「これは袋がしっかりしてる」

 

「半分以上空気だぞ」

 

「だからたぶん潰れない」

 

「破裂しなければ」

 

彼は少しユキを見て、それからチョコビスケットの横にそれを入れた。どちらも潰れないように。

 

ユキはリストのおやつにチェックを入れ、何も言わなかった。

 

レジでは、カイトが重いものを先に詰め、おやつと紙用品を上の方に残した。ユキは母から預かった封筒のお金で支払い、お釣りとレシートを一緒に折りたたみ、出口へ向かいながら最後にもう一度リストを確認した。

 

外に出ると、商店街には夕方が降り始めていた。背後のスーパーの明かりが、濃くなっていく窓の青に対して明るく光っている。数歩のあいだ、二人とも話さなかった。ビニール袋の持ち手がユキの指に食い込み、袋は歩くたびに足に軽く当たった。

 

カイトは重い袋を持っていた。それでもユキが手を差し出すと、分からないふりはせず、紙用品とおやつの入った袋を渡してきた。

 

「これは」と彼が言った。

 

「おやつだけならもっと持てるよ」

 

「ウェットティッシュも入ってる」

 

「それなら全然違うね」

 

「だと思った」

 

ユキはそれを受け取った。

 

家に近づくほど、買い物はただの買い物ではなくなっていった。ティーバッグ、ドライフルーツ、せんべい、紙コップは、もうただ買ったものではなかった。

 

明日の朝で、川で、漕いだあとの昼食で、食べる前に手を拭くことで、密封してしまう小さなごみ袋で、どこかのバッグの上の方で濡れずにあるおやつだった。

 

カイトは冷蔵品の袋を片手に、飲み物をもう片方に持って、彼女の隣を歩いていた。また静かになっていたけれど、あのメッセージが来たときの重い静けさとは違った。今の静けさには、持って帰るものがあった。

 

玄関に着くと、二人が靴を脱ぎ終える前に、母が「おかえり」と声をかけた。

 

「ただいま」とカイトが答えた。

 

台所はすぐにスーパーの袋でいっぱいになった。冷やしておくものは冷蔵庫へ。おやつ、お茶、紙用品は調理台へ。飲み物は一度流しの近くに並び、それから母が場所を作るために脇へ動かした。

 

父はリビングで、床にテントの袋を開いていた。

 

それだけで、家の様子が変わった。

 

長い緑の布が、室内にあるものではないように畳の上へ広がっている。テントポールはその横にきちんと並べられ、ペグ、ロープ、小さな木槌が父の膝の近くに置かれていた。父は袖をまくっていて、必要以上に楽しそうだった。

 

「家の中で広げるものなの?」ユキが聞いた。

 

「試し張りだよ」と父は言った。

 

台所の入口近くでタオルを分けていた母は、顔を上げなかった。

 

「リビングのほとんどを使っているものでもあります」

 

「一時的だよ」

 

「二年前のキャンプ用コンロのときもそう言いました」

 

「あれは違う」

 

「三日間、台所の調理台にありました」

 

「燃料缶を比べてたんだ」

 

「ちゃんと使えるものを一つ持っていたのに」

 

父は軽く咳払いをして、テントに戻った。

 

カイトは買い物袋を置き、テントのそばへ行った。

 

「手伝う?」

 

「ちょうど頼もうと思っていた」

 

「頼まないふりをしようとしてたでしょ」

 

父は彼を見た。

 

「厳しい指摘だな」

 

「違う?」

 

「……その角を持って」

 

カイトが布のそばにしゃがみ、ユキはおやつの袋を片手に、入口近くで見ていた。

 

最初の数分は、テントを立てるというより、大きな布を何とか言い聞かせているように見えた。ポールはスリーブの途中まで入ってから引っかかった。父は片端を角の近くの輪に通すのだと言い張ったが、正しい輪をもっと下の方で見つけたのはカイトだった。布がローテーブルの端に引っかかり、カイトが角を引き抜くあいだ、ユキがそれを持ち上げることになった。

 

「気をつけて」と父が言った。

 

「気をつけてる」とカイトが答えた。

 

「テーブルにぶつけないようにって意味だ」

 

母が畳んだタオルを持ってユキの後ろを通った。

 

「赤い印が左側よ」

 

父はポールを持ち上げたまま止まった。

 

「分かってる」

 

「右にしていました」

 

「違いを確認してただけだ」

 

「あまり自信がありそうには見えなかったけど」

 

カイトは手に持ったポールを見下ろした。口元をきちんと保っているので、笑わないようにしているのだとユキには分かった。

 

ユキはポールから父へ視線を移した。

 

「本当に何回かキャンプ行ったことあるの?」

 

父は少し心外そうにこちらを向いた。

 

「何回かある」

 

「このテントで?」

 

母がまた別のタオルの束を持って入口を通った。

 

「お父さんは、設営よりも、行ったことそのものの方をよく覚えているの」

 

「設営も楽しいんだ」と父が言った。

 

「たまに、空の下で寝ることになるのもね」と母が足した。

 

ユキは顔を上げた。

 

「テントなしで?」

 

「いい寝袋があれば」と父が言った。「かなり違う」

 

「だから、あなたたちの分も、ちゃんとした寝袋と下に敷くマットを買ったの」と母が言った。

 

カイトがそちらを見た。

 

「新しい寝袋?」

 

「いいものだよ」と父が言った。「今回だけじゃなく、また使える」

 

「次のキャンプ用?」ユキが聞いた。

 

「今回楽しかったらキャンプにも使えるし、非常用にもなるわ」と母が言った。「一晩中寒くない方が、楽しむのも楽だから」

 

「マットって、重さが増えても持っていくくらい大事?」カイトが聞いた。

 

「大事」と母が言った。

 

父もうなずいた。

 

「地面の小石やでこぼこを全部感じたいなら別だけど」

 

「感じたくない」とユキが言った。

 

「ならマットは持っていく」と母が返した。

 

父は新しい寝袋の一つを手に取った。

 

「これはいいものだけど、主に暖かさのためだ。マットがなければ、結局地面で寝ている感じは残る」

 

カイトは丸められたマットをもう一度見た。

 

「じゃあ快適さが勝つ」

 

「朝に文句を言わないためにも、快適さは大事よ」と母が言った。

 

「それ、私たちに向けて言ってる?」

 

「少しだけ」

 

終わりかけたころ、テントは一度持ち上がってから本棚の方へ傾き、カイトが自分の角をずらし、父が両手でポールを調整した。

 

「もう少しそっち」と父が言った。

 

「こっち?」

 

「違う、そっちじゃない方のそっち」

 

カイトは止まった。

 

「俺の方って、そんなに何方向もないけど」

 

台所の入口から母が見た。

 

「赤い印はまだ左側よ」

 

父は咳払いをした。

 

「分かってる。今そこに行くところだった」

 

カイトがポールを収めると、今度はテントがちゃんと立った。

 

会話が止まると、彼は少し静かになった。けれど、手を動かしていることは助けになっているようだった。目の前に作業があれば、彼の手は何をすればいいかを知っている。ここを持つ。そこを強く引く。ポールがちゃんとはまっているか確かめる。下に入り込んだフラップを出す。楽しい、というのとは少し違う。それでも、そこにいた。

 

ユキはおやつの袋を台所の調理台に置き、テントがようやく自立するところを見に戻った。

 

思っていたより小さくて、想像していたより大きかった。

 

誰かが近くで動くたびに、布が乾いた音を立てる。正面のフラップは開いたままで、天井の明かりの下に薄暗い小さな空間が見えていた。中からは、ナイロンと埃と押し入れのような匂いがかすかにした。学校の鞄、畳まれたタオル、壁際に寄せられた見慣れたローテーブルに囲まれたリビングの中では、妙に不思議に見えた。

 

父はかかとの上に腰を下ろした。

 

「ほら。まだ使える」

 

母が見た。

 

「試行錯誤のあとでね」

 

「協力のあとだよ」

 

「そういう言い方もあるわね」

 

カイトは入口近くの縫い目を確認した。

 

「破れはない」

 

「よし」と父が言った。「去年、生地は見たからね」

 

「何年も使ってないって言ってたよね」

 

「確認と使用は違う」

 

ユキは入口のそばにしゃがんだ。

 

中は、リビングの中なのに、思ったより暗く見えた。彼女はフラップの端に触れた。赤いテントの布は指先にひんやりしていた。

 

「入っていい?」

 

父が笑った。

 

「もちろん」

 

ユキはスリッパを脱ぎ、入口から中へ入った。

 

中に入ると、家の音がくぐもった。布の壁の向こうで声がやわらかくなる。テントの天井は斜めに落ちていて、手を上げれば触れられるくらい近かった。床は薄く、畳の上で少ししわになっていて、空間全体にプラスチックと古い空気と、ずっと前に乾いた葉っぱのような匂いが残っていた。

 

これがテントなのか。

 

ユキはかかとの上に座り、床に細くもろい枯れ草がいくつか落ちているのに気づいた。何年も前、両親が行ったどこかから、折り目に入り込んだまま家まで持ち帰られたものなのだろう。ユキとカイトがまだ存在しなかったころの場所から。

 

布とポールと、昔の旅行の跡にすぎない。それでも、明日の夜はこの中で眠ることになる。

 

ユキは片側から反対側へ視線を動かした。

 

四人は入るのだと思う。そういうテントなのだから。それでも中から見ると、「四人用テント」という言葉は寸法というより、前向きな提案に聞こえた。

 

一瞬、今週ずっと感じていたよりも、自分が少し幼くなった気がした。

 

悪い意味で子どもっぽいのではない。ただ、知りたくなった。旅行が手で触れられるところまで近づいてきて、自分が楽しみにしていることに気づいたみたいだった。

 

外から父が言った。

 

「どう?」

 

ユキはもう一度中を見回した。

 

「私の部屋より小さい」

 

「それくらい大きかったら困るよ」

 

「四人には狭い気がする」

 

「テントはそういうものよ」と母が言った。

 

「本当に四人入る?」

 

「仲のいい四人なら入る」と父が言った。

 

ユキは斜めになった布の壁を見た。

 

「つまり四人って、相性込みの目安なんだ」

 

母が小さく笑った。

 

「そうかもしれないわね」

 

ユキはテントの床を一度手でなでてから、外へ這い出した。

 

カイトはポールの袋の近くに立っていて、読み取れない目でユキを見ていた。

 

「何?」

 

「別に」

 

「何か考えてそうだった」

 

「膝に埃ついてる」

 

ユキが下を見ると、彼の言う通りだった。

 

カイトはそばの山から小さなタオルを取って渡してくれた。

 

「ありがと」

 

「ん」

 

そのあと、テントは立てたときより早く片づけられた。父は十分前に手伝いが必要だった人とは思えない自信で、どのポールをどの部分の袋に入れるのかを説明した。カイトは父が一度目に巻いたときよりもきつく布を丸めた。ユキは袋を開いて、二人がそこへ滑り込ませるのを支え、母は玄関のそばに、タオルと乾いた服を別々の山にして置いた。

 

夕食はいつもより遅くなった。

 

誰も特に気にしなかった。

 

そのあとも、家は普通の学校の前夜の形には戻らなかった。玄関近くには鞄が残り、椅子の上には畳まれた服が置かれている。濡らしたくないものは、誰かがタオルと混ぜてしまう前に、別々の山へ分けられた。

 

母は食べ物を容器へ詰めた。父はランタンを二度確認し、そのあと三度目も確認しようとして、母に、三回確認しても明るくはならないと言われた。

 

「七時に出るわよ」と母が容器を一つ閉めながら言った。「自分が準備に必要な時間に合わせて、目覚ましをかけてね」

 

「そんなに早いの?」ユキが聞いた。

 

「レンタルの場所まで四時間近くかかる」と父が言った。「普通のキャンプ場より、川の奥の方だから」

 

「田舎なの」と母が冷蔵庫を閉めながら足した。「そこがお父さんの好きなところでもあるわね」

 

「不便みたいな言い方だな」と父が言った。

 

「不便よ。それもあなたが好きな理由でしょう」

 

カイトがユキの方を見た。

 

「ちゃんと起きないと」

 

「起きられるよ」

 

「起きられないとは言ってない」

 

「そういう意味に聞こえた」

 

ユキはおやつの袋を、玄関脇の荷物の上の方へ置いた。

 

カイトがそれを見た。

 

「いいね」

 

「みんな用だから」

 

「そうじゃないとは言ってない」

 

「ほっとしすぎに見えた」

 

「おやつは大事」

 

「チョコビスケットのこと?」

 

「士気のため」

 

「結局、買ってよかったと思ってるんじゃない」

 

「せっかくあれだけ移動してキャンプ場まで行くのに、甘いものが食べたくなっても何もないのはよくない」

 

「それは否定できない」

 

二階へ上がると、ユキの鞄は机の横の床で開いたままだった。もう一度確認して、必要なものは全部入っていると判断した。

 

机の反対側には、日記が置いてあった。

 

学校の本の横にある無地の表紙のノートは、最初の夜ほど背が硬くなくなっている。あれから毎日、そこに書いていた。たくさんではない日もあった。寝る前に数行だけのときもある。

 

ユキはこれまで書いたところをめくった。

 

『進路相談の仕事について少し調べた。』

 

『アイコに、ぼんやりしていることを気づかれた。』

 

『古い消しゴムだと消したところが汚れるから、新しいのを買った。』

 

『兄さんが私の選んだ本を読み終えた。面白かったと言って、その話を少しした。』

 

『書けば何かがはっきりするのかは分からない。でも、頭の中で動いているものが少しだけ止まる。』

 

だから続けていた。

 

自分の内側のことを書くのが上手になったからではない。ページが何かに答えてくれるからでもない。ただ、眠れるくらいのあいだ、物事をそこに留めてくれるからだった。

 

ユキは新しいページを開き、日付を書いた。

 

キャンプの食べ物を買った。

 

少し止まり、階下から聞こえるかすかな動きに耳を向けた。

 

それから書いた。

 

兄さんは今日、少しよさそうに見えた。

 

その下に。

 

うれしかった。

 

次の行には、少し時間がかかった。

 

気遣うより先に、ほっとした。

 

ユキはそれを見つめた。

 

たぶん他の人が読んでも、あまり意味は分からない。それでも、誰かに読まれたいわけではなかった。

 

消しはしなかった。しばらくして、その下に一行空けて書いた。

 

明日は朝七時に出る。

 

準備のためにたくさん買った。

 

その方が簡単だった。

 

開いたままのドア枠を、軽く叩く音がした。

 

カイトが、折りたたんだ防水バッグを片手に立っていた。

 

「濡らしたくないものはこれに入れてって、お母さんが」

 

ユキは日記を半分閉じた。自然に見えるほど遅くはなかったけれど、隠しているように見えるほど早くもなかった。

 

「ありがと」

 

彼の目が日記へ動き、それから外れた。

 

「持っていくの?」

 

「たぶん」

 

「濡れるの、心配じゃない?」

 

ユキは無地の表紙を見下ろした。

 

「まだ決めてない」

 

カイトは防水バッグを差し出した。

 

「持っていくなら厚い方を使って」

 

ユキはそれを受け取った。

 

透明なビニールは、いつもの台所用の袋より厚く、上に二重の封がついていた。母が持たせたものだけれど、カイトが用意しそうなものにも見えた。

 

「ありがとう、兄さん」

 

「ん。遅くまで起きない方がいい。明日早いし」

 

「起きない」

 

彼は部屋を出て、ドアを半分閉めた。

 

ユキは彼の姿が消えた戸口を見て、それから手の中の防水バッグを見た。

 

少しして、日記をその中へ滑り込ませた。

 

ほとんどぴったり入った。

 

ユキは封を一度押さえ、それからちゃんとかみ合っているか確かめるためにもう一度押さえ、取り出しやすいように鞄の上の方へ入れた。

 

使わないかもしれない。けれどここまで毎日書いてきたから、置いていく方が持っていくよりおかしく感じた。

 

階下で、誰かが棚を閉める音がした。家は、荷物と待っている朝を抱えたまま落ち着いていった。

 

ユキは机の明かりを消し、いつもより早くベッドに入った。

 

しばらくは眠れないと思った。

 

そのうち、あの光景が戻ってきた。内側から見たテント。薄暗く、近くて、リビングの床に立っていたときより広く感じられた場所。

 

明日は、あれが家の中にはない。

 

明日、自分はカイトと両親と一緒に川の上にいる。

 

カイトが冗談で言ったみたいに、本当に落ちなければいい。

 

ユキは目を閉じた。旅行のことをまだ頭の中に抱えたまま、眠りがその形をほどいていった。


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