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まだ知らなかった距離  作者: 遠井エイト
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第6章 パート2 — 応募の手伝い

応募の手伝い — カイト

 


夕食は、全員が食べ終えたあとにいつも訪れる、少し静かな流れへゆっくり落ち着いていった。

 

皿が食卓の上でやわらかく動き、父は空になった椀を一つずつ流しへ運んでいた。冷蔵庫の低い音の下で、水の音が台所に途切れ途切れに広がり、母はコンロの横の調理台を、慣れたゆっくりした手つきで拭いていた。

 

外の窓は、もうすっかり暗くなっていた。ガラスには台所の温かい明かりがかすかに映り、一時間前より部屋が囲まれているように感じられた。

 

カイトは小さな皿をいくつか重ねてから、流しの方へ運んだ。

 

「それは洗うわ」と母が言った。

 

「俺が終わらせる」

 

「もう十分手伝ったでしょう」

 

カイトは皿を調理台の横に置き、父の方へ短く目を向けた。

 

いつもと比べても、二人とも今夜は少し疲れて見えた。

 

特別にというほどではない。

 

ただ、週の終わり近くに少しずつ積もる、普通の疲れだった。

 

父は、交通機関やインフラ設備に使われる産業用制御システムや機械部品を作る製造会社で働いていた。

 

仕事の多くは、仕入れ先との調整、生産日程の管理、大きな案件に関わる技術資料の確認だった。最近は、その案件のせいで帰りが遅くなることが増えているようだった。

 

カイトは履歴書を書くのを父に手伝ってもらおうかと考えていたが、いつもより疲れている様子を見て、やめることにした。

 

父のネクタイはもう半分ほど緩められていて、湯を温め直しているやかんが終わるのを待つあいだ、片手を調理台についていた。

 

少しして、やかんが小さく鳴った。

 

「今夜、書店の応募を送らないといけない」カイトは言った。「履歴書を作るのに、少し父さんのパソコン使ってもいい?」

 

「もちろん」父はすぐに答えた。「大事なものだけ閉じないようにな。仕事のファイルをまだ開いてある」

 

「閉じない」

 

「あと、履歴書のテンプレートはネットで確認してみろ。その方が助けになるはずだ」

 

「そうする。ありがとう」

 

母が流しからこちらを見た。「履歴書、手伝いはいる?」

 

「自分でできる」

 

父は湯飲みに息を吹きかけながら短く笑った。「お前なら、たぶん俺より早く分かるだろう」

 

「それはあまり安心できない」

 

母は静かに笑ってから、また皿洗いへ戻った。

 

カイトは手を拭き、背後の会話が少しずつ普通の夜の音に戻っていく中、二階へ向かった。

 

二階は静かだった。

 

カイトはまず父の書斎に入り、机の明かりの下、キーボードの横に書店の応募用紙を置いた。参考にするためにネットで履歴書のテンプレートをいくつか探してから、父のパソコンで空の文書を開き、基本情報を打ち込んだ。名前、学年、入れる曜日と時間、連絡先。

 

自己紹介の欄には時間がかかった。

 

数分たっても、画面の中の文章は自分で見ても硬すぎた。一文を消し、別の文を書き直し、それから全体を読み返すと、なぜか前よりさらに形式ばって聞こえた。

 

結局、カイトは椅子にもたれ、廊下の方へ短く目を向けた。

 

ユキのドアは少し開いたままで、淡い机の明かりが床板の上に細く伸びていた。前を通ると、中からページをめくる小さな音が聞こえた。

 

彼は少し足を緩め、それから戸口の近くで止まった。

 

ユキは机に座り、片足を椅子の下にゆるく折り込んで、開いた問題集の横のノートをめくっていた。シャープペンは手の中ではなく、片耳の上に挟まれていた。

 

履歴書を作るのをユキに手伝ってもらえれば安心だろう、とカイトは思った。

 

「まだ勉強してるのか?」彼は聞いた。

 

「そうでもない」

 

彼女の前のノートには、実際のメモより、線を引いて消された見出しの方が多かった。

 

カイトは片方の肩を軽くドア枠に預けた。

 

「今夜、書店の応募を作ってる」

 

ユキは机から顔を上げた。

 

「ああ」

 

「まずメールで履歴書を送るらしい」

 

「うん」

 

一瞬、やっぱり自分でどうにかしようかと考えた。

 

それから彼の目は、階段の方へ短く流れた。そこからは、どちらかが教科で助けを必要としたときに、いつも一緒に勉強するテーブルの方が見えた。

 

かすかな水音の下で、母が台所の戸棚を静かに閉める音が聞こえた。

 

「手伝う時間ある?」彼は聞いた。

 

その質問は、ユキを少しだけ不意に打ったようだった。

 

表情がはっきり変わるほどではない。

 

ただ、返事がすぐには出ないくらいには。

 

「手伝ってほしいの?」彼女は聞いた。

 

「書式はユキの方が得意だろ」

 

「兄さんの書式って、全部同じ大きさにすることだからね」

 

「伝わればいい」

 

「目的はいつもそれだけじゃないよ」

 

自分の返事が、たぶん手伝いが必要なことを知らないうちに証明していたのだと、カイトは気づいた。

 

かすかな間がもう少しだけ残ってから、ユキはようやく目の前のノートを閉じた。

 

「……いいよ」

 

カイトはドア枠から体を起こした。

 

「助かる」

 

その迷いは、意識の奥の方に少しだけ引っかかった。授業中に返事が遅れたり、会話のタイミングが少しずれたりしたことに気づくのと同じくらいの形で。けれど二人で階下へ向かうころには、その考えはもう、目の前の実際の作業の下に薄れていた。

 

パソコンのある部屋は、一階の奥、居間の隣にあった。

 

父は主に仕事の書類や予定表を作るためにそこを使っていた。壁の一面には、ファイルや古い技術書の並んだ棚がプリンターの下まで続いていた。机の角の近くには、工学関係の雑誌が積まれ、生産表や手書きのメモが書かれた紙が何枚か置かれていた。

 

カイトが机の明かりをつけると、ユキは二つ目の椅子を彼の横へ引き寄せた。

 

しばらくのあいだ、部屋は静かな集中に落ち着いた。聞こえるのは、キーボードを打つ音、プリンターの音、ときどき紙がこすれる音だけだった。

 

カイトはまず基本情報を入れた。名前、学年、入れる曜日と時間、連絡先。

 

ユキは数分間黙って見ていたが、自己紹介の欄まで来ると、ようやく少し身を寄せた。

 

「硬すぎる」

 

「書店の応募だ」

 

「でも、国の研究費に応募してるみたいに見える」

 

カイトは画面へ目を戻した。

 

「夕方のシフトに応募してるだけだけど」

 

「だから言ってるの」

 

彼は少し横へずれて、ユキがキーボードに手を伸ばしやすいようにした。

 

ユキは彼の前に少し身を乗り出し、二文を書き直してから、また止まった。

 

「これくらいでいいと思う」

 

カイトはその段落を読み返した。

 

言葉は前より簡単になっていた。

 

自然でもあった。

 

「ユキは何でも短くするな」

 

「兄さんは何でも組み立て説明書みたいにする」

 

「それはユキが全部説明しようとするからだろ」

 

「説明は必要でしょ」

 

「今まで考えたこと全部は必要ない」

 

カイトは短く横目で彼女を見た。

 

「ほとんど全部書き直しただろ」

 

「直す必要があったから」

 

二人の声は低く、家の他の音はかすかな背景としてしか部屋まで届かなかった。

 

その後、いつものやり取りが戻ってくるにつれて、空気はだんだん見慣れたものに落ち着いていった。

 

ユキはページの下の方で余白が少しずれていることに気づき、配置を整え直した。カイトは日付を確認し、入れる曜日と時間を調整した。

 

途中で、ユキは余白を直しかけたまま画面を見て、少し眉を寄せた。

 

「この状態で本当に出すつもりだったの?」

 

「そこまで悪くなかっただろ」

 

「行が本当にそろってない」

 

「近かった」

 

「ちゃんとして見せたいなら、近いだけじゃ足りないよ」

 

カイトは、机の横のプリンターが小さく動き出す音を聞きながら、彼女がもう一度書式を整えるのを見ていた。

 

考える前に、その流れは落ち着いていた。

 

ユキが句読点を確認し、カイトが応募の詳細をもう一度書店のサイトで調べた。途中で、二人が同時に机の上へ手を伸ばし、マウスの近くで指先が短く触れた。

 

どちらも反応しなかった。

 

数分後、プリンターが印刷を終えた。

 

ユキは自然にその紙を集め、端をそろえてから彼に渡した。

 

カイトは受け取り、ざっと目を通した。

 

余白は前よりまっすぐだった。

 

詰まりすぎてもいない。

 

彼は椅子から立ち上がり、廊下へ出た。

 

父はまだ居間で起きていて、老眼鏡を少し下げたままスマホで何かを見ていた。

 

「終わったか?」父が聞いた。

 

「だいたい」

 

カイトはその紙を渡した。

 

父は温かい居間の明かりの下で、履歴書に数秒間静かに目を通した。テレビは背景で小さく流れていた。

 

「いいんじゃないか」と、やがて父は言った。「うちの会社に来る履歴書のいくつかより、ずっときれいだ」

 

「それは安心できない」

 

「正直に言ってるだけだ」

 

父は自己紹介の欄のあたりで少し止まった。

 

「接客のことをもう少し入れてもいいかもしれないな」

 

「働いたことないけど」

 

「分かってる。でも書店も人と接する仕事だろ」父はその段落の近くを指で軽く叩いた。「今のままだと、倉庫で在庫整理をしたい人みたいに見える」

 

カイトは紙へ視線を落とした。

 

「……それはそうかも」

 

「大げさにしなくていい。ただ、話しかけやすそうに見せればいい」

 

カイトは一度うなずき、紙を受け取った。

 

パソコンの部屋へ戻ろうとしたところで、父が付け足した。

 

「それと、明日の面接は考えすぎるな。アルバイトはだいたい、きちんと来る人を探してる」

 

ユキが彼の肩越しに、また紙をのぞいた。

 

「面接に持っていくなら、紙ももう少しいいものにした方がいいよ」

 

「明日買える」

 

「文房具売り場、早く閉まるよ」

 

カイトはモニターの隅の時間を確認した。

 

八時を少し過ぎたところだった。

 

「コンビニならまだあるだろ」

 

ユキは自動的にうなずいてから、少しだけ止まった。

 

「私も行く」

 

「来なくていい」

 

「いいよ」

 

その答えは静かで、部屋の中が一瞬、言葉のあとで黙った。

 

カイトは机の横の棚から財布を取った。

 

「じゃあ、遅くなる前に行こう」

 

外の空気は、その日の午後よりはっきり冷えていた。

 

残っていた夏の暑さは弱まり、家々の間を抜ける風には、かすかな乾きが混じっていた。街灯の淡い光が舗道に伸び、近所の家の少し開いた窓から、遠いテレビの音がやわらかく流れてきていた。

 

しばらくのあいだ、二人はあまり話さずに歩いた。

 

それでも歩く速さは、自然に互いに合っていた。

 

途中の交差点で、自転車が前を横切ったのでカイトは縁石の近くで足を緩め、ユキもほとんど自動的に隣で動きを合わせてから、また一緒に歩き出した。

 

大通りの角の近くにあるコンビニの明かりが、前方に見えてきた。周りの暗い住宅街の中で、そこだけが明るかった。

 

中に入ると、入口の上の電子音と一緒に、冷たい空気がすぐに二人に触れた。

 

カイトはまず文房具の棚へ向かい、ユキは隣で紙のパッケージを比べた。

 

「厚い方がよく見える」

 

「書店用だぞ」

 

「それでも第一印象は大事だし、今までの経験もないんだから」

 

カイトはそれ以上反論せずに、彼女が渡したものを受け取った。

 

そのあと、二人は文房具以外の小さなものも、ほとんど何となく集めながら、棚の間を少しゆっくり歩いた。

 

修正テープ。

 

シャープペンの芯。

 

黒いペン。

 

冷蔵棚の近くで、カイトはユキがいつも買うレモンティーへ自然に手を伸ばし、自分の水のボトルの横へ入れた。

 

ユキは一度、かごの中を見下ろした。

 

「その味、好きなの覚えてたの?」

 

「買ってたの、そんなに前じゃないだろ」

 

「覚えてなくてもいいのに」

 

ユキはもう一秒ほど彼を見てから、カイトが近くの棚のサンドイッチへ手を伸ばすあいだ、静かにかごを彼の手から取った。

 

その動きは自然に過ぎて、二人ともそれ以上何も言わなかった。

 

コンビニを出るころには、近所はさらに静かになっていた。

 

近くの家々の一階の明かりはほとんど落ち、駅の近くの大きな道を、たまに車が通るだけだった。街灯の下で二人の間のビニール袋がかさりと鳴り、もっと先の方で蝉の声がかすかに響いていた。

 

「すぐ連絡来ると思う?」しばらくして、ユキが聞いた。

 

「応募を送ったら?」

 

「うん」

 

「分からない」

 

「直接、応募のことも聞いてきたんでしょ」

 

「ああ」

 

「それは助けになるんじゃないかな」

 

「分からない。応募してる人、何人かいるだろうし」

 

会話はそこでまた薄れた。

 

居心地の悪い沈黙ではなかった。

 

ただ、さっきより静かなだけだった。

 

自分たちの通りへ曲がったところで、カイトはユキの手にある袋へ一度目を向けた。

 

「持つ」

 

「軽いよ」

 

「ほとんど俺が買ったし」

 

ユキがさらに返す前に、カイトは手を伸ばして袋を取った。

 

家に戻るころには、家の中はほとんど夜の静けさに落ち着いていた。

 

階下の洗濯機はもう止まっていた。壁の中で配管がかすかに動き、外からは大きな道を一瞬通り過ぎるバイクの音がして、すぐに消えた。

 

カイトはコンビニの袋を台所へ運び、ユキは厚めの履歴書用紙を調理台の横に置いた。

 

「今夜送った方がいいよ」彼女は言った。

 

「うん」

 

数分後、二人はまたパソコンの部屋へ戻った。

 

カイトは父のパソコンで応募メールを開き直し、履歴書のファイルを添付した。ユキは机の横に軽くもたれ、画面を最後にもう一度読んでいた。

 

「また挨拶文忘れてる」

 

「件名は書いた」

 

「それは同じじゃない」

 

ユキが隣で静かに見ている中、カイトは抜けていた一文を足した。

 

もう一度メールを読み返してから、彼はようやく送信を押した。

 

少しして、画面が更新された。

 

応募が完了しました。

 

それから数秒、二人ともあまり何も言わなかった。

 

やがてユキが机から少し体を起こした。

 

「遅くなる前にお風呂入る」

 

「うん。手伝ってくれてありがとう。助かった」

 

「別に」

 

彼女は階段の方へ向かいかけて、廊下の入口近くで少し止まった。

 

「直したあとの履歴書、前よりよかったよ」

 

「ほとんどユキが直した」

 

「ひどいところだけ」

 

「ほとんどそこだった」

 

ユキの口元に、小さな笑みが一瞬だけ浮かんで、それから薄れた。

 

「頑張って」

 

そして彼女は二階へ消えていった。

 

カイトはその後も、少しだけパソコンの部屋に残っていた。

 

印刷した紙はまだ、机の明かりの下、キーボードの横に置かれていた。彼はそれをもう一度そろえてから、コンビニで買った厚めの紙と一緒に、フォルダーへ丁寧に戻した。

 

二階で、ドアが静かに閉まった。

 

そのあと、家は少しずつ、いつもの夜の静けさへ完全に戻っていった。

 

その夜初めて、応募はもう考えるのをやめてもいいくらいには終わったものに感じられた。

 

 

次の午後、最後の授業のチャイムが鳴る少し前に、カイトのスマホが机の端で震えた。

 

周りの教室には、終礼前の数分によくある、低く落ち着かない空気がまだ残っていた。桜井先生がまだ黒板に書いているのに、窓の近くではもう鞄をまとめている生徒がいて、後ろの方では何人かが机の下で模試の点数を小声で比べていた。

 

カイトは通知へ目を落とした。

 

ご応募ありがとうございます。

 

短時間の面接を設定させていただきたく……


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