4 テレビは転移前の世界の番組が映るようです。
テレビの電源を入れた瞬間、俺は箸を止めた。
画面に映っていたのは、見覚えのある番組だった。
奇想天外ワンダホー。
司会の安斎誠さんが、いつものテンションでカメラに向かって喋っている。現実で起きた不思議な出来事を映像化するバラエティ番組だ。転移する前、たまに観ていた。
でも、ここは異世界のはずだ。
(なんで映ってるんだ、これ)
突っ込む気力もなく、ただ画面を眺めた。
電波がある。
元の世界の番組が届いている。
どういう仕組みなのか、さっぱりわからない。
わからないが、映っている。
まあ、いいか。
考えても答えが出ないことはとりあえず保留にする。それが俺の処世術だ。箸を再び動かしながら、画面の中の安斎さんに相槌を打つ。
「なるほどなあ」
ご飯を食べながら観て、食べ終わってから片付けをして、また観た。番組が終わったのは、ちょうど皿洗いが済んだ頃だった。
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さて、風呂だ。
脱衣場へ向かいながら、ぼんやりと思い描く。どうせなら広い方がいい。システムバスで、室内エアコンがあって、自動湯沸かし器も欲しい。脱衣場も余裕があると助かる。
ぽんっ、ぽんっ。
心の中でそう願いながら脱衣場のドアを開けると――
(さっきの音、これか)
広かった。ちゃんと広かった。
一旦外に出て確認すると、壁に自動湯沸かし器が設置されている。スイッチを押すと、湯はりが始まった。
風呂の扉を開ける。
かなり広めのシステムバスに、室内エアコン完備。タイル一枚一枚まで、なんとなく思い描いていた通りだった。
「ここまで再現できるのか」
感心を通り越して、少し怖くなってきた。この力には限界がないのだろうか。
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湯が張り終わるまで時間がある。リビングに戻りながら、ふと思った。
柔らかいソファ、あったらいいな。
ぽんっ。
(は)
リビングの中央に、どっしりとしたソファが鎮座していた。恐る恐る腰を下ろすと、ぽよん、と沈み込む。弾力があって、でも底つき感がない。いい素材だ。
俺はしばらく、そのまま天井を見上げていた。
池に落ちてから、まだ半日も経っていない。なのに今、広い風呂が湯を張っていて、元の世界のテレビが映って、柔らかいソファに座っている。
(優雅すぎて逆に落ち着かないな)
湯沸かし器の完了音が、静かに響いた。
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