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【改稿版】異世界転移した俺は万能スキルでスローライフを謳歌する  作者: みなと劉


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31/49

31 物語は中盤まできました

警察の捜査が始まった。

 画面に登場したのは、いかにも一癖ありそうな顔つきの警部だった。鋭い目つきに、どこか相手を見下すような物言い。被疑者への聞き込みの場面でも、言葉の端々に棘がある。

「この警部とやら……なんともいけ好かないですね」

 メセタが眉をひそめた。

「この役者さん、こういう役柄が多いんだよ。でもキャリアはもう20年以上のベテランで、こういう嫌味な役を自然に演じられるのがこの人の持ち味なんだ」

「なるほど……憎たらしく見えるのも、それだけ演じる力があるということですね」

「そういうこと。嫌われる役をうまく演じられる役者ほど、実は実力があったりするんだよ」

 メセタが感心したように何度か頷いた。


---


 捜査が進む中で、警部は温泉宿に宿泊していた全員から話を聞いていった。主人公の由紀かおるとパートナーのヨシオは、特に怪しまれることもなく聴取を終えた。

 しかし、第一発見者である青年の知り合いは、そうはいかなかった。

「警察署で取り調べを行う、ということになったようですね」

「ああ。警察の鉄則のひとつに『第一発見者を最初に疑え』というのがある。発見した時刻や状況、その場にいた理由……全部が確認対象になる」

「発見したからといって犯人とは限らないですよね。でも……」

 メセタが少し考えながら続けた。

「真実から目を背ける前に、まず一つひとつのピースを繋いでいくということですね。疑うのではなく、確認する」

(メセタ……めちゃくちゃ賢いな)

 俺は思わずメセタの頭を撫でた。

「そうだよ。よくわかったな」

「ミステリーというのは、そういう積み重ねで出来ているんですね」

「それともうひとつ。『完璧すぎるアリバイは有り得ない』という考え方もある。アリバイが完璧であればあるほど、逆に疑いが濃くなることもあるんだ」

「なるほど……作られたアリバイ、ということですか」

「鋭いな」

 メセタがふふっと得意そうに尻尾を揺らした。


---


 箸でキャベツのおかか和えをひとつまみ口に運びながら、俺は画面を眺め続けた。メセタはプレーンスコーンをもぐもぐと食べている。

 ドラマは静かに、しかし確実に次の場面へと動いていた。

 夜の温泉宿、薄暗い廊下。宿泊客の部屋のひとつで、物音がした。翌朝になって、その部屋の扉が外から開かれる。そして悲鳴。

 第二の犯行が起きていた。

「今度は部屋の中ですか……しかも扉に鍵がかかっていたようですが」

「これが『密室殺人のトリック』だよ」

「密室……殺人……トリック?」

 メセタが真剣な顔で聞き返した。おつまみを食べる手が止まっている。

「ミステリー、特に殺人事件を扱う小説には、ひとつ以上の『密室』を物語に組み込む必要があるという定義がある、と聞いたことがある」

「密室とは……鍵のかかった部屋、ということですよね。その中で殺人が起きたなら、犯人はどこから入ってどこへ消えたのかという謎が生まれる」

「そう。その謎が解けないうちは、犯人に辿り着けない。それがミステリーの醍醐味でもある」

「要は、犯行の手口というパズルのピースが一枚多く隠されているということですね」

「うまいこと言うな」

 メセタは満足そうにスコーンをひとかじりした。


---


 第二の犯行が起きたことで、捜査の対象が絞られていく。

 事件の現場となった部屋の周辺にいた人物、つまり主人公の由紀かおるとヨシオ、両隣の部屋の宿泊客、向かいの部屋の客、そして温泉宿の従業員と女将が容疑者の枠に入った。

「随分と絞られてきましたね」

「まあ、現場に近い人間から当たるのが基本だからな」

「この中に犯人がいるということですか」

「ドラマの作り的にはそうなるだろうな。ただ、かおるとヨシオは犯人じゃないよ」

「なぜわかるのですか?」

「この作品は、この二人が事件を解決していく小説が原作なんだ。二人が犯人だったら物語が成立しない。それを覆すとしたら、原作への相当な悪意を感じる」

「なるほど……原作ありきのドラマには、そういう前提があるんですね」

 そういえば、と俺は思った。

 この原作小説、願えば出てくるんじゃないか。

「この作品の原作小説」

 ぽんっ。

 テーブルの上に、文庫本が現れた。表紙には『湯けむり温泉郷殺人事件 〜由紀かおるの事件簿〜』と書かれている。主人公の由紀かおるをモデルにした女性のイラストが、表紙の中央に描かれていた。

 メセタがちらりとそれを見て、にんまりとした。

「由紀かおる……このドラマの主人公ですね。そして我が君の好みのタイプの女性」

「ななな!だから違うと言っているだろうが!!演技がいいと言っているだけで!!」

「いやいや……素直になってもいいんですよ、我が君」

 ぽんぽんと肩を叩くメセタ。どこまでも飄々としている。

 俺はそれ以上言い…

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