26 メセタと一緒にお風呂
着替えを用意して、メセタと一緒に風呂場へ向かう。
脱衣場の前で、ふと気になったことを聞いてみた。
「そういえば、耳とか洗う時はどうする?デリケートそうだけど」
「そこは確かにデリケートなので、何か専用のアイテムがあると助かりますね。あ、あと尻は穴まで洗ってくださって構いません」
さらりと言い切った。
(凄いことを言うな……)
メセタは首を傾けている。何がおかしいのかわかっていないらしい。
まあ、本人が言うのだから遠慮なく対応しよう。
(ハイランドウルフ用の風呂用品。尻の穴まで洗っていいらしいので専用手袋も)
ぽんっ。
手の中に、何かが収まった。見ると、『ハイランドウルフ用装着型シャンプーハットと専用手袋』と書かれたセットだった。
「メセタの種族専用のが出てきたよ」
「なんと!?」
「さっき尻の穴まで洗っていいって言ってたから、その専用手袋だって」
メセタが固まった。
(専用手袋があるのであるか!?)
心中でそう叫んでいるのが、表情を見ればはっきりわかった。
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脱衣場で俺が服を脱ぐと、メセタがさっと顔を背けた。耳の先がうっすら赤くなっている。
「どうした?」
「我が君の……裸姿を見るのは初めてだったので……その……なんとも恥ずかしゅうなって」
(なんて可愛いんだろう)
思わず口元が緩んだ。狼なのに、こういうところが妙に初々しい。
「気にしないでいいのに」
「そういうわけには……!」
耳がさらに赤くなった気がした。
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風呂場に入って、まず専用シャンプーハットをメセタに装着する。耳をしっかりガードできる形状で、よく考えられた作りだ。
「ハイランドウルフ用リンスインシャンプー」
ぽんっ。
『ハイランドウルフ用リンスインシャンプー・木々の香り』が現れた。ラベルに書かれた種族名を見て、メセタがまた目を丸くしかけていたが、今は黙っておいた。
「じゃあまずシャワーで濡らすよ」
「はいである!」
蛇口を捻ってシャワーを出す。温かいお湯がメセタの毛を濡らしていく。銀色の毛並みが水を含んでしっとりと重くなって、体のラインがはっきり見えてくる。
ある程度濡らしたところでシャワーを止めて、リンスインシャンプーを手に取る。適量を手のひらに出して、軽く揉んでから毛の中へ。根元から毛先へ向けて、丁寧に泡立てていく。
木々の香りが、湯気と混ざって風呂場に広がった。
「いい匂いであるな」
「木々の香りらしいよ」
「森で過ごしていたから、なんか落ち着く匂いですね」
そういうものか。生まれ育った環境の香りというのは、どんな生き物でも心を落ち着かせるのかもしれない。
全身の泡立てが終わったら、シャワーで丁寧に洗い流す。お湯が白い泡と一緒に流れ落ちて、銀色の毛がまたきれいに戻っていく。
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次が本番だ。
「じゃあ次は専用手袋をつけて、尻の方に行くよ」
「なんですかその『専用手袋』というのは正式には!?」
「尻の穴まで洗っていいって自分で言ったでしょ。その専用手袋だよ」
「……分かった」
観念したのか、メセタがこちらに尻を向けた。
手袋を装着して、専用クリームを適量取る。泡立てながら、尻の周囲から丁寧に洗っていく。手袋の素材が柔らかくて、デリケートな部分にも優しく使えるように設計されているらしい。さすが専用品だ。
「うおん!?うおおお!これは……なんとも……すごい体験であるぞ!!」
「終わり。洗い流すよ」
「……はい」
シャワーで丁寧に洗い流す。メセタはしばらく静かだった。
「すごい体験をしたである……」
「専用品ってよくできてるな」
「全くである……」
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俺も自分の髪と身体を洗い終えて、ふたりで湯船に浸かった。
お湯がちょうどいい温度で、肩まで沈むとじんわりと全身が緩んでいく。メセタも目を細めて、気持ちよさそうにしている。
しばらく、何も言わなかった。ただ、お湯の音だけが静かに響いていた。
それで十分だった。
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