表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改稿版】異世界転移した俺は万能スキルでスローライフを謳歌する  作者: みなと劉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/26

23 アイスクリームを作ろう

 これは少し時間を巻き戻した話だ。

 マヨネーズを仕

 卵を割って、白身と黄身に丁寧に分ける。

 白身の入ったボウルに電動泡立て器をあてて、スイッチを入れた。ぶわっと白身が泡立ち始める。ある程度泡立ったところで、

「グラニュー糖、容器付きで」

 ぽんっ。

 容器に入ったグラニュー糖が現れた。大さじ一杯をボウルに加えて、さらに撹拌を続ける。

 メレンゲには段階がある。ゆるくて角が折れる状態、しっかり角が立つ状態、そしてそれよりもさらに細かく均一なクリーム状。今日はアイスクリームを作るから、一番最後の状態まで持っていく必要がある。生地の中で氷の結晶が大きくなるのを防ぐためだ。きめが細かいほど、冷凍してもなめらかに仕上がる。

 電動泡立て器の音を聞きながら、ボウルの中を観察する。泡がどんどん小さくなって、表面に光沢が出てきた。持ち上げると、ゆっくりとリボン状に落ちる。

(これくらいでいい)

 次は黄身だ。別のボウルで同じように撹拌していく。黄身は白身より粘度があるから、少し時間がかかる。でも根気よく続けると、淡いクリーム色のなめらかなペースト状になってくる。ここまで来たら十分だ。

 白身と黄身を合わせて、ヘラでさっくりと混ぜ合わせる。泡を潰さないよう、底からすくい上げるように。全体が均一な色になったら、スプーンで少し舐めてみた。

 甘い。やさしくて、ふんわりとした甘さだ。卵だけとは思えない。

 これを冷凍庫へ。一時間から二時間冷やせば完成だ。


---


 そして時間は現在へ戻る。

 夕飯の配膳を終えて、テーブルに料理が並んだ。

 海老フライ、海老天ぷら、鯵フライ、蟹の天ぷら、付け合わせのサラダ。色とりどりの揚げ物が皿を埋め尽くしている。

「よし、食べるぞ」

「はい!すごいご馳走ですね……!」

 メセタの目が輝いている。

 俺も箸を取って、まず海老フライを一口。衣がサクッと割れると、中からぷりっとした海老の身が現れた。噛むほどに甘みが広がって、後からタルタルソースのまろやかな酸味が追いかけてくる。

 鯵フライは青魚らしいしっかりとした旨みがあって、衣の香ばしさと合わさるとどこか懐かしい味がした。蟹の天ぷらは衣が薄くて軽く、蟹の身のほんのりとした甘みがそのまま口に入ってくる。

 丁寧に揚げた甲斐があった。


---


 夕飯を食べ終えてしばらくした頃、メセタがぽつりと言った。

「なんか、口が寂しい感じしますな」

「デザートが欲しい感じか?」

「流石我が君、分かっていらっしゃる」

「じゃあ、ちょうどいい頃合いかもな」

「何がですか?」

 俺は答えずに冷凍庫へ向かった。扉を開けて、中を確認する。表面がうっすらと固まっていて、スプーンを入れるとすっと沈む。

(よし、いける)

「特別に甘くて冷たいデザートを出してあげよう」

 尻尾が高速で揺れ始めた。

 アイスクリーム用の器を念じると、プラスチック製のしゃれた容器が現れた。ガラスにしなかったのは理由がある。万が一落として割れたとき、破片がメセタに刺さると困るからだ。メセタ用には広めの深皿を用意して、金属製のアイスクリームスプーンも念じて出した。

 スプーンで丸くすくって器に盛り付けると、白くなめらかな山ができた。

 メセタの前に置く。

「これはなんですか?」

「アイスクリームだよ。口を開けて」

 素直に口を開けるメセタに、スプーンにすくったアイスクリームをそっと乗せてやる。

 一瞬、静寂が落ちた。

「っ……」

 目が見開かれた。

「つ、冷たい……!!そして、甘い……!!なんだこれは!!」

「どうだ?」

「牛乳を使っていますよね、これ!?あの甘くてクリーミーな感じは絶対そうです!!」

「実は卵だけだよ」

 メセタが固まった。

 二秒。三秒。

「……卵だけで」

「白身をクリーム状になるまで丁寧に撹拌するとね、まるで牛乳を使ったみたいにクリーミーになるんだ」

 メセタはしばらく何も言わなかった。ただ、目がじわじわと輝きを増していった。

「我が君は……最高の逸材であります」

 声が少し震えていた。

「大袈裟だよ」

「大袈裟ではありません。卵だけでこの味が作れるなど、わたし、生まれてから今日が一番驚いた日であります」

 メセタは目をキラキラさせながら、大事そうに一口ずつアイスクリームを食べていった。

 俺も自分の分をすくって口に運ぶ。冷たさが舌の上でゆっくりと溶けて、やさしい甘さが広がっていく。卵だけとは我ながら思えない、まろやかな仕上がりだ。

「夕飯の後にこれは、反則だな」

「反則でも食べますとも」

 メセタが即答した。尻尾はまだ全力で揺れていた。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ