24 夜のおつまみを風呂前に作る
夕飯も片付いて、風呂に入る前にもう少しだけ台所に立つことにした。
茹でておいたキャベツと白菜がまだ鍋の中にある。このまま放置するのももったいない。夜のおつまみにでもしよう。
「調理用笊」
ぽんっ。
金属製の笊が現れた。鍋を傾けて、キャベツと白菜を笊に移す。余分な水分がしたたり落ちるのを待ってから、それぞれ別のボウルへ。キャベツはザクザクとした歯ごたえが残っていて、白菜はしんなりと柔らかくなっている。茹でることで、それぞれの甘みが引き出されていた。
「顆粒昆布だし」
ぽんっ。
袋入りの顆粒昆布だしがテーブルに現れた。一袋を開けて、キャベツと白菜それぞれに振りかける。
手を洗って水気をしっかり拭いてから、素手でぐるぐると混ぜていく。顆粒だしが野菜全体に馴染んでいくのを感じながら、頃合いを見て塩をひとつまみ。さらに混ぜる。最後に醤油を少し垂らして、鰹節をひとつかみ投入した。
醤油と鰹節の香りが合わさった瞬間、食欲をそそる匂いがふわっと広がる。シンプルな組み合わせなのに、どうしてこんなに食べたくなるのか。日本人の感覚というのは不思議なものだ。
これはすぐ食べるものではないから、ラップをかけて冷蔵庫へ。冷えた方が味が馴染んで美味しくなる。
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もう一品、作っておこうと思った。
「ドライイースト」
ぽんっ。
袋入りのドライイーストが現れた。
ボウルに小麦粉、牛乳、ドライイースト、塩を合わせて、手で捏ね始める。
こねこね、こねこね。
最初はパラパラとした粉っぽい感触が、次第にひとかたまりにまとまってくる。手に生地がくっつかなくなってきたら、だいたい捏ね上がりのサインだ。捏ねるという作業は単純なようで、生地の状態を手で感じながら進める必要がある。力を均一にかけて、押しては折り、折っては押す。リズムよく続けると、生地がだんだんなめらかになってくる。
テーブルに小麦粉で打ち粉をして、麺棒を念じると手の中に収まった。生地を少量ずつ手でちぎって、麺棒で薄く伸ばしていく。
厚さは均一に。薄すぎると焼いたときに固くなるし、厚すぎると中まで火が通りにくい。手のひらより少し小さいくらいのサイズに整えて、打ち粉をしたバットに並べていく。
今日はパンを作るわけではない。発酵させずに、このまま焼く。いわゆる「無発酵パン」に近いもので、もちっとした食感と素朴な風味が出る。チャパティやナンに似た、シンプルな焼きたてのパン生地だ。
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フライパンをコンロに置いて火にかけ、油を薄く引く。
生地を四枚ほど並べると、じゅっという音が立ち上がった。弱めの中火でじっくりと焼いていく。フライパンの上で生地がゆっくりと色づいていき、端がほんのり茶色くなってきたらフライ返しでひっくり返す。
ぷくっ。
裏返した瞬間、生地が膨らんだ。中に閉じ込めた空気が熱で膨張するからだ。この膨らみが出てくると、ちょうどいい焼き加減になってきたサインでもある。
両面がきつね色になったら皿に取り出して、次の生地を投入する。これを六回繰り返した。生地の量がそれなりにあったから、最終的にかなりの枚数が出来上がった。
焼きたての匂いが、またキッチンに広がっていく。小麦と油が混ざった、素朴で温かい香りだ。
全部焼き終えたら皿に重ねて、ラップをかけて冷蔵庫へ。風呂から上がった後のおつまみとして、キャベツと白菜の昆布和えと一緒に食べよう。
(これは合うはずだ)
作りながら、すでに食べている気分になってきた。
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台所を軽く片付けて、風呂場へ向かおうとしたところで、
「どこに行くのですか?」
メセタが廊下から顔を覗かせた。
「風呂の支度」
「お風呂!?わたしも入りたいです!!」
「え、犬系って風呂に入るの?」
メセタは少し考えてから、答えた。
「普段は毛を舌で舐めて、虫や菌を寄り付かせないようにしています。自前の手入れで大抵は足りるんですが……たまに温泉には浸かることもあって。だから一度、ちゃんとしたお風呂というものに入ってみたいと思っていました」
「わかった。じゃあ一緒に入ろう。身体、洗ってやるよ」
「やったーであります!!」
尻尾が全力で揺れた。
こうして、今夜の風呂は二人分になった。
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