18 今日の夕飯は揚げ物とパスタとサラダだ!
タルタルソースは、マヨネーズの応用だ。
まな板の上にらっきょを取り出して、包丁でみじん切りにしていく。らっきょは丸くて小さいから、転がらないよう指の腹で押さえながら慎重に刻む。細かくなるほど、ソースに混ざったときの食感がよくなる。
切り終えたらボウルへ。マヨネーズを適量加えて、菜箸でぐるぐると混ぜ合わせる。最後に塩をほんのひとつまみ。味を引き締める程度でいい。
「できた」
「また何か作ったんですか?」
「タルタルソース。マヨネーズを使った調味料だよ」
「また新しいやつ!?食べたいです!!」
もはや条件反射だ。スプーンに少量取って差し出してやる。
「あむ……すっぱぱぱぁ!でも、このつぶつぶが深みあって……美味あ!!」
わかる人間にはわかる、あの感覚だ。らっきょの独特の食感と酸味が、マヨネーズのクリーミーさの中にアクセントとして溶け込んでいる。
「このつぶつぶ、なんですか?」
「これだよ」
らっきょの瓶をメセタの前に出した。
「これがあのつぶつぶの正体!?」
「そう。みじん切りにしてマヨネーズと和えて、塩を少し入れただけ」
「でも塩の味、全然しなかったですよ?」
「酸味が強い味わいだと、少量の塩は前に出てこないんだ。隠し味に近い感じかな。塩があることで全体の味が締まるんだけど、塩そのものは主張しない」
「難しいですね、料理というのは」
「奥が深いんだよ」
メセタが感心したように何度も頷いた。料理の理屈を話すのは、俺自身も整理になって悪くない。
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さて、本格的に夕飯の準備を始めよう。
「フライ用バット」
ぽんっ。
テーブルの上に、金属製の長方形のトレーが現れた。中に網がついていて、揚げたものを乗せると余分な油が下に落ちる仕組みだ。これがあるとないとでは、仕上がりの油切れが全然違う。
(よし、まずは鯵から)
食品トレーのラップを剥がすと、三枚おろしにされた鯵が並んでいた。スーパーで売っているフライ用の鯵とまったく同じ状態だ。骨の処理も済んでいて、このまま衣をつけて揚げるだけでいい。願って出てくる食材は、毎回ちゃんと使いやすい状態になっている。本当に助かる。
「パン粉」
ぽんっ。
袋入りの徳用パン粉が現れた。かなりの量が入っている。
(徳用か。まあ、今日は揚げ物をたくさん作るから丁度いいか)
次に海老のトレーを確認すると、「フライ・天ぷら用」と書いてあった。
(フライと天ぷら、両方作れるな)
天ぷらには片栗粉が要る。小麦粉だけより、片栗粉を混ぜた衣の方がサクッと軽く仕上がるからだ。
「片栗粉」
ぽんっ。
袋入りの片栗粉が加わった。テーブルの上が、だんだん賑やかになってきた。
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揚げ物の段取りが見えてきたところで、俺はもう一つ献立を考えていた。
海老の一部とあさりは、パスタに使おう。ホワイトクリームソースで仕立てれば、揚げ物との組み合わせでボリュームのある夕飯になる。
ホワイトクリームは、バターと小麦粉と牛乳があれば作れる。バターを溶かして小麦粉を炒め、そこに牛乳を少しずつ加えながら伸ばしていく。塩で味を調えれば完成だ。一見難しそうに見えるが、手順を守れば失敗が少ない。そしてこの作り方をマスターしておくと、クリームシチューにも応用できる。覚えておいて損はない。
(今後も出番がありそうだな)
まずはホワイトクリームから取り掛かろう。揚げ物は後回しにして、ソースを先に仕上げてしまった方が、仕上げの段取りがスムーズになる。
バターを念じると、紙に包まれた一箱が現れた。
「我が君、今日の夕飯はどんな感じになるんですか?」
メセタが待ちきれないように聞いてくる。
「鯵フライに海老の天ぷら、海老とあさりのクリームパスタ、それからさっき作ったサラダにタルタルソース」
一瞬、静寂が落ちた。
「……全部食べていいですか?」
「一緒に食べるんだから当然だろ」
尻尾が最高速になった。
俺はフライパンにバターを落としながら、今夜の夕飯の段取りを頭の中で組み上げていった。
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