12 1時間後外に出たら驚くことが起きていた。
ホットケーキを食べ終えて、ふと喉が渇いた。
オレンジジュースとりんごジュース、飲みたいな。
ぽんっ、ぽんっ。
テーブルの上に、取っ手付きの瓶が二本現れた。一本は中身が淡い黄色で、もう一本はやや濁った半透明だ。黄色い方がオレンジジュース、半透明の方がりんごジュースだろう。
「また現れましたぞ!?いきなり!!」
メセタが身を乗り出してくる。
「オレンジジュースとりんごジュースだよ」
「飲ませてください!!」
即答だった。尻尾が揺れている。断る理由もないので、メセタ用に深皿のコップを念じると出てきた。俺用のグラスも同様に。
深皿にりんごジュースをとくとくと注いでやる。メセタはさっそく舌を使ってぺろぺろと飲み始めた。
「我が君!少し酸っぱいのに甘くて美味しいです!!」
「それはよかった」
俺もグラスにオレンジジュースを注いで、一口飲む。
んくんく。
ぷはっ。
「旨い」
果物の甘さと爽やかな酸味が喉を通り抜けていく。後味がすっきりしていて、ホットケーキの後にちょうどいい。
窓の外を見ると、空が明るくなっていた。
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そういえば、雨が降り始めてからもう1時間ほど経つ。
外に出ると、雨はすっかり上がっていた。濡れた地面に太陽の光が反射して、きらきらと輝いている。空気が澄んでいて、メセタとの契約で鋭くなった嗅覚に土と草の清々しい匂いが届いてきた。
「雨、上がりましたね」
メセタがさらりと言う。
(まさか俺が降らせたとは言えないな)
腰を抜かしそうだったので、黙っておいた。
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裏手に回って、畑の様子を見に行く。
そして、足が止まった。
「……芽が出てる」
畝のあちこちから、小さな緑色の芽がひょっこりと顔を出していた。トマト、キュウリ、キャベツ、白菜、大根。朝に声をかけた畝それぞれから、ちゃんと対応した芽が出ている。
「早すぎないか、これ」
「畑を耕したのは今朝では?」
「そう。耕して、雨が降ってきたから家に戻って、おやつ食べて、ジュース飲んで……それだけの時間しか経ってないよな」
「早すぎませんか!?」
メセタも目を丸くしている。普通の感覚を持っていてよかった、と思った。俺だけがおかしいわけじゃない。
「だよねえ」
「どういう成長サイクルなのでしょう……」
俺にもわからない。ただ、想像はできた。おそらくこの畑も、俺の能力の延長線上にある。願えば物が出てくるように、願って植えた作物は異様な速さで育つのかもしれない。
しゃがんで、そっと芽に触れてみた。柔らかくて、みずみずしくて、確かに生きている。
(ちゃんと育つんだな)
なんだか嬉しくなった。願えば出てくるのと、育つのを見守るのは、やっぱり少し違う。後者の方が、じんわりと温かい気持ちになる。
「明日は新しく耕した区画に、樹木でも願ってみようかな」
「樹木ですか!?どんな木を?」
「果物の木とか、いいかもな。リンゴとか、みかんとか」
「リンゴ!?あのジュースになっていたやつですか!?」
尻尾の速度が上がった。
「そう。うまくいけばここで収穫できるかもしれない」
「楽しみです……!!絶対やりましょう我が君!!」
メセタが前のめりになっている。畑仕事の動機が果物ジュースというのは少々単純な気もするが、まあ俺も似たようなものだ。
芽の並ぶ畝を眺めながら、今日もここでの暮らしが少し豊かになった、と思った。
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