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第6話 その10 「みなさま、血の気多すぎです」

 程なくして、私たちは呼びにきた兵隊さんに連れられて上階へと移動、両開きの重厚な木製ドアの前に到着です。位置的に先ほどの騒動の際に、外から見上げてセバス様と目が合った部屋ですよね。兵隊さんがトン、トンとドアをノックする。


「アーネスト准尉、以下2名をお連れしました」


 兵隊さんがそう申告するとドアが中から開けられた。


「うむ、入りたまえ」


 部屋の奥から、野太い声がそう告げるとセシリア様がピシッと敬礼を決めてから部屋の中へと歩みを進めた。わたしもペコリと挨拶をしてお嬢さまの後に続きます。横のシャムロックがつまらなそうに頭の後ろで手を組んだまま部屋に入ろうとするので、シャムロックの脇腹を軽く小突いて小声で話しかける


「シャムロック、せめて手は下ろして、最低限の礼儀はどこでも必要ですよ」


 メイドらしく注意です。シャムロックもちょい不満気だけど、とりあえず手を頭の後ろで組むのだけはやめた。


 部屋の中はといいますと、ドアの上の「司令官執務室」のプレートどおりの偉そうなお部屋でございます。


 ドアの内は入ってすぐに、それなりに広いスペースが設けらています。多分有事の際には、ここに会議テーブルでも置いて地図を広げて偉い人が囲んでるよくあるシーンが出来そうな感じ。


 その奥に造りの良い革張りのソファーと落ち着いた色の木のテーブルの応接セット。その後ろが一段高くなってゴージャスな執務室机が大きな窓を背に偉そうに置かれてます。窓の左右には王国旗とアーネスト軍の軍旗が掲揚されて偉そう感さらにマシマシです。


 中央にドーンとある執務机からちょうど立ちあがろうとする人物に目がいく。というより目がいかない訳がないくらいゴツいです。


 多分この人がお嬢さまがおっしゃっていた『将軍さま』なんでしょうけども、どう見てもオークジェネラルです。ブモーとか言いそうです。


 言葉が通じる方なのかと不安覚える巨躯の向こう、窓にもたれてこちらを見ているセバス様を見つけてちょっとホッとしましたが、セバス様はセバス様でなんか長い刀を携えてます、もちろん抜身ではなく鞘に収まってますがこちらもちょっと不穏です。


 あとは数名の部屋付きの軍人さんと多分このピリピリっとする感覚は、いつもの隠密さんも数名は潜んでそうです。


 以上、現場よりルナリアのレポートでした。って言い残してこの場から逃げ出したいです。雰囲気悪い、空気が重いです。


 巨漢のオークジェネラル様が、こちらにズシン、ズシンと近づいてきた。


 そばで見るとますますデカいです。口髭とこめかみのあたりに白髪はありますが、頭頂部にはその生息を確認できません。割とコミカルなルックスのはずですが迫力がありすぎて逆に強者感バリバリです。


「うむ、まずはそちらですな」


 ジェネラル様が、シャムロックに目を向ける。わたしならその場でヘニョってなりそうな目力ですけども、シャムロックは臆することも無く、むしろ呼応して敵意を剥き出してます。やめて……


 一触即発のおふたりの後ろから渋い声が響く。


「まずは、あいさつといこう。わたしは、アーネスト家、執事長のセバスと申します。当家主人が不在の場合は家令として対外の取り仕切りを仰せ使っております。お見知りおきを、ノクスリア帝国、シャムロック・グラリス第二皇子殿」

「シャムロック! あなた、帝国の皇子でしたの! 確かに名前はそうだわ。山羊のくせに…… あ、いえごめんなさい。わたしとしたことが、はしたない。どうぞ、続きを」


 お嬢さまも、さすがにびっくりなされましたか? と思ってお嬢さまをみれば「山羊の裸族が皇子ですって生意気ですわ。ゴートマンめーどうしてやろうかしら……」メチャクチャにブーたれてます。本当にマウント取られるの嫌いですよね。


「当家のお嬢さまと、最近密かに懇意にされていたのは知っておりましたが、お嬢さまからのご接近とのことで不問にしておりましたが、本日のことはちょっと看過出来かねますな」

「なにを看過出来ないって?」


 シャムロックってば、故意に横柄な態度取ってるのが丸わかりですって、そんな挑発このおじさまには効きませんよ。


「なにもではないだろうが! あんな公衆の前で魔族バレしかかった上にセシリア様の手を煩わせおってどういうつもりだ」


 ありゃ、オークジェネラル様には効果的面でしたね。


「魔族バレがどうしたっていうんだい。オッサン! アーネストとの不可侵条約なんて始祖皇帝の頃の話だぞ。7年前にうちのオヤジ様が一方的に破棄して戦争ふっかけてから、帝国は兵を引いただけでなんの休戦条約も結んでないぞ。ボケてるのかオッサンども」


 シャムロックってば、とんでもないことを平気で口に出す。それじゃあ……


「アーネストとの戦争がお望みですかな? 自分で口火でも切られる気ですかな。この場でそれを言うのは正気の沙汰とは思えませぬが。今、黙るならこれ以上は問題とはせぬがお覚悟はいかがかな。ノクスリアの名も冠せぬ、シャムロック・グラリス皇子!」


 セバス様、けっこう怒ってません? シャムロックの態度とかじゃなくて、思慮のなさに怒ってる感じ。そうお嬢さまを嗜める時おんなじ感じではあるけどその何倍も怒ってるみたい。ちょっと不思議。でシャムロックはといえば、ダメです。完全に切れてます。闘志メラメラです。ダメだ手がつけられそうにないですね。


「だからどうした。こんなオッサン相手なら俺一人で充分だと言っている。ごちゃごちゃ能書垂れてないで、とっととおっ始めようぜ。あーなんならここにいる全員でも良いぜ。もちろん、こそこそ潜んでるやつ含めてな!」


 ひゃーダメです。部屋付きの軍人さんと隠密さんまで殺気を露わにしちゃった。


「吠えるな、小僧!」


 オークジェネラルが気合い一発、両の拳を握り締め力を入れる。その瞬間衣服が轟音を立てて砕け散りました。すごいです。こんなの現実に見るの初めてって言うよりできる人いるのね。感動です。


 筋肉オークジェネラルを手で抑えるようにしてセバス様がシャムロックに相対して話す。


「予知持ちの驕りにしては、少々目に余るがここはお言葉に甘えて、貴公の為にこの場の全員でお相手いたそう」


 オークジェネラルが、盛大に吹き出す。


「はっはは! こいつはいいや。セバス様はお優しい。そうだな人族相手にサシで負けたら魔族の皇子なんて名乗れなくなるもんな」


 シャムロックもセバスの挑発の意味がわかって、もうコメカミ血管が切れそうです。


「ごちゃごちゃとウルセー! その口塞いでやるからな! 始めるぞ」


 バトルスタートです。


「イケー! ゴートマン!」


 横でお嬢さまが大声援です。


「オシ! ヨッシャァ!」


 別の意味でも気合い入っちゃった。


「やっぱり男は戦ってナンボですわね! ルナリア、冷たい飲み物を作ってちょうだい」


 お嬢さまがソファーにスタスタと近づいてストンとすわる。完全にワクワク観戦状態です。仕方ない。


「お嬢さま、レモネードでいいですか?」

 もう少し刺激のあるスカッとしたのがいいわね」

「はーい、かしこまり!」


 もうどうでもいいや、わたしも楽しもう。



いつもの時間より遅くなってスイマセン

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