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第6話 その1 「大きなリボンと最強戦術」

「ふふーん! 今日の予行練習は、上出来ね」


 自室で机に向かいながらそんな独り言をセシリアが呟いていると、ドアをノックする音といつもの間の抜けた彼女の駄メイドの声。


「お嬢さまー、ついに届きましたよ! お嬢さまの学園の制服がー」


 両手いっぱいに荷物を抱えてるから、足で失礼しますね。ドアを体で押し開けながら、お嬢さまの部屋に入り足でドアを閉める。


「本当ですの! 早く! 早くこっちに持ってらっしゃい」

「はい、ちょっと待ってください」


 ティーテーブルの椅子を引いて、両手に抱えた荷物を降ろす。たまらずお嬢さまが書机からこちらにきて、もう一つの椅子を引いて座った。


「えーと、まずはこれ……」

 一つ目の箱を開けて中身を取り出す。


「ジャーン! スカートですね」


 スカートを広げてお嬢さまに見せてから、側のベッドの上に置く。その後も箱を開けベッドの上に、制服を着たお嬢さまを模して並べてみます。


「素敵、素敵ですわ!」


 お嬢さまの目がもう釘付けてす。ベッドの上にコーデされた制服。黒の膝丈のプリーツスカートは、裾に赤のラインで縁取り。プリーツの左右に1本づつ赤色ステッチ。それに黒のニーソックスが合わさります。


 上は真っ白なブラウス、腕の部分はふんわり大きく作られ、指先が綺麗に見えるよう手首でキュと絞られてる。


 特徴的なのがその上に着るケープ。黒い厚めの布で作られたたそれは、ケープというよりマントに近いけどマントほど長くなく腰くらいの丈で、スカートと同じ赤のラインで縁取りされてる。


 そして、最後は大きな黒いトンガリ帽子。魔女のトンガリ帽子のイメージより、もっと素朴なストンとしたシルエット。普段被るんじゃなくて儀礼的な時に被るものっぽい。


「あー可愛いわ! この学年になれて正解よね。黒髪のわたくしには、青ラインとか似合わなそうですもの」


 お嬢さま今、黒髪の上級生を、すべて敵に回されましたよ。まあ、わたしもそう思うけどね。


「あとこちら、『王立サピエンティア・プラム学園』からも荷物が届いてますよ」

「えっ! 早く言いなさい。ほら開けて、すぐ開けて!」


 小さめな小包を開けると、中からいくつかの書簡と何やら布系のものを包んだ手触りの紙袋。


「早く、早く!」


 犬みたいに腕に縋って急かすお嬢さまを抑えながら、紙袋を丁寧に開けて中身を取り出す。中から出てきたのは学園の校章の刺繍された胸章と、すでに蝶々型に縫い付けてあるかなり大きな赤いリボン。


「きましたわー! 『大リボン』ですわ! ルナリア、わたくしやりましたわー!」

「おめでとうございます、お嬢さま。頑張ってらっしゃいましたものね。本当に、よかったです」


 そう言われて、ちょっと気恥ずかしくなったのか


「いえ、当然ですわ。驚くことじゃなくってよ。このセシリア・フォン・アーネストにかかれば、学年主席なんてお茶の子さいさいですわ」


 お嬢さまったら舞いあがっちゃて、ご令嬢は「お茶の子さいさい」なんて使いませんよ。


 お嬢さまが何をそんなに喜んでいるかといいますと、学園では入学後のクラス編成のため学力検査の名目で入学前に筆記の試験があるのです。


 これで落とされたりすることはないとのことですが一番良い成績をとった生徒、すなわち学年主席には学年代表の任が与えらます。とりあえずの使命は入学式での新入生代表あいさつ。お嬢さまが大好きなお目立ちイベントだものね。頑張るわけです。


 その証として男性なら大きな金の襟章、女の子の場合は他の生徒より一回り大きな襟のリボンが与えられます。


 リボンは大きいほど正義とは言うけどね。お嬢さま小さいからそれ、ちょっとオーバーサイズすぎません。リボンに着られちゃいません?


 そういえば一緒に入ってた書簡てなんだろ? それを手に取って見ると入学までの手続きとか準備関係の要は入学のしおり的なものだったが、「重要」のタグ付きで「成績優秀者について」と書かれた紙が入ってた。


 内容を読んで見る。フムフム……


 マズイわ。いきなり接触イベントとか、急すぎる……


「ルナリア、どうしました。何か書いていましたの?」

 紙を持って固まってるわたしに、気づいてお嬢さまが声をかけてきた。


「ヒャい!」

 びっくりした!


「いえ、お嬢さま今回の学年主席についてのお知らせなのですが……」

「なんですの?」

「読みますね。『今回のテストにて、セシリア・フォン・アーネスト、リリィ・レインの両2名が共に満点の回答に付き今学年の代表は異例だが2名とする』です」


 それを聞いたお嬢さまが、すぐさま机に向かうと一冊のスクラップ帖を取り出した。ペラペラとページをめくって手を止めた。


「ありましたわ、これですわ!」


 そう言ってスクラップ帖の1枚の新聞記事をこちらに向けた。「南に聖女現る!」のタイトルの記事。


「この記事の聖女こそが、さっき言ってた「リリィ レイン」ですわ」


 そうなのです。南の聖女「リリィ レイン」彼女こそわたしが作った乙女ゲーム『聖女と薔薇の刻証 ~Rose et Sainte~』の正規ヒロイン。こんなに早く接触することは、なかったはずなのに――


「いいわね。こんなに早く会えるなんて嬉しいわ。しかも一緒に学年代表とかお近づきになるチャンスだわ!」


 お嬢さまが攻略キャラ見つけた主人公ムーブです。しかし学年代表ふたりとか目立ちがり屋の自己承認欲求モンスターの、お嬢さまは嫌いそうなもんなのに。


「お嬢さま、学年代表ふたりとか、お嫌じゃ無いんですか?」

「なんで? ふたりいれば仕事は2倍できるし、嫌な仕事はやってもらえるからいいじゃない。それに、さっきも言いましたが、わたくしこの娘『リリィー レイン』狙ってますのよ。まずは、お友達になることからですね」


 まさかのお嬢さまがヒロイン攻略?


「あのお嬢さま、その南の聖女様に何か思い入れがあるのですか?」

「あっ、そうねルナリアは知らないのね。大きな声では言えないんだけどね、我がアーネスト家には、絶対無敵と言われる秘伝の『無限転生陣』と呼ばれる究極の戦術があるのよ」


 いかにも、"秘密ですわよ"みたいな、もったいぶった小声ですが自慢気に耳元で囁かれました。自慢したかったのですね。


「それを行うには、優秀な治癒能力者(ヒーラー)が絶対不可欠なのよね。でもアーネスト家は現在、聖女だった母様(かあさま)が教会に幽閉状態だから治癒能力者(ヒーラー)が不足してるのよね」


 お嬢さま、お母様が聖女で幽閉とかすごい秘密をサラッと流さなないで。


「彼女は商家出身で貴族でもないみたいですし、あわよくばこのリリィって娘をうちで雇えないかなって思ってますのよ」


 なんか色々驚愕の話も出てるけど、とりあえずお嬢さまにお聞きしたいのは……


「お嬢さま、その「無限転生陣」って戦術って治癒能力者(ヒーラー)の他に転移魔法が必要ですか?」

「あらよく知ってるわね。セバスにでも聞いてました? 転移魔法の方は兄様が得意だから大丈夫よ」


 ……。あっ! もうわかっちゃいました。


 それ、『ゾンビアタック』ですよね、絶対!


 可能でも、それ現実ではやっちゃいけない戦術ですよ。人としてどうなのレベルです。


 でもアーネスト家の誇る戦闘民族どもなら、嬉々としてやりそうだなー

 イッテー。足取れちゃったぜ。治療ヨロ!とか笑って言いそう……

 やだなー。見たくないなー。


『フラグ立ててどうするの?』ってプレートをVR空間でネコ耳ルナリアがこちらに向けてた……


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