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第4話  その9 「ピンチの後って、おなかが空くよね」

 ハクタクくんのカウントダウン決行中です。

 

 お嬢さまは倒れてまだ立ち上がれていません。転ばせたのわたしだけどね。テヘッ。すでに後ろで火吹き変態ユニコーンがその火を吹こうと息を溜め出してます。


 いわゆる絶体絶命万事休すです。

 どうする? ルナリア!


 (前回のおさらい)


* * * *

 

 

《……4》

 

「バカ言ってないであっちいって!」

 

《……3》


「い や で すー」

 

《……2》

 

「変な笑顔浮かべて、来ないで! ひっ!」

「お嬢さま、伏せますよっと、エーイ!」

 

 お嬢さまにフライングダイビングアタックで覆い被さるように地面に突っ伏す。

 

 《……1》

 

 ユニコーンはもう火を吐く寸前。でもわたしは確信してた。白択をギフトに持つあのキャラなら、次の一撃が生まれる場所に、今、当然のようにいるはず。

 

《……0》

 

 突っ伏した視線の先、ユニコーンとわたしを挟んで相対する位置に、大きな褐色の獣が後ろ足で立ち上がっていた。


 今まさに、頭を振り下す瞬間そのままで――

 

 自然にさも当然のように突然そこにいた。

 

 ゴンッ!!

 

 振り落とされた頭部が、ユニコーンの鼻骨を押し潰しその内に蓄えられてた炎が逃げ場を無くし溢れ出て自らを焼いた。

 

「な、なんなんですのこれ?」

 

 覆い被さっているわたしより仰向けで倒されてる、お嬢さまのほうが大迫力で見えてるものね。

 

 しかも、わたしたちを挟む位置に出現して頭突きをかましてるから現在、突然出現した獣に跨がれて見上げてる状態。多分、お嬢さま何が起こったかなんてミリも把握できてないんだろうな。


 獣がわたしたちをの上を跨ぎ切り、ユニコーン側に近づきさらに立ち上がるともう一度勢いつけての頭突き!


ゴン!! って音と振動とともに、炎上中のユニコーンは突き飛ばされ背中から地面にひっくり返って全身に火が回る……


 それでね、今はというと……

 

「お嬢さま、飲み物を振り回しちゃダメですよー」

「そこですわ! イケー! 駄馬を転がせ―!」

「もうこっちに、ピシャピシャ飛んできてますって」

 

 魔獣大戦眺めながら、ほのぼのランチ中です。

 

 助かったと安心すれば、体って次は、お腹すいたーって欲求してくるものよね。もうとっくにお昼過ぎてますし、これはいた仕方ありません。

 

 2匹の魔獣の戦いをお嬢さまは、サンドイッチと飲み物を片手に興奮の坩堝(るつぼ)

 

 わたしは、ぶつかり合う魔獣を眺めながら、あーあんなのと戦ったら秒で殺されちゃうよなー、同じギフトとかありえないでしょー。なんて考えながらのほほんとサンドイッチ食べてます。


 戦いの方は褐色の獣のほぼワンサイドゲーム。それでも最後の抵抗とばかりに駄馬が全身に真紅の炎を(まと)った。

 

 こんなに離れてるのに、熱気ここまで来てる。

 

「暑苦し駄馬ですわ。ムキ―!」

 

 そんな興奮したらサンドイッチ握り潰しちゃいますよー。


 ジリジリと互いの間合いを測りながら周りこむ2匹

 泉を背にしたあたりで、褐色の獣が不意に体勢を崩した。その隙を見逃さず、ユニコーンが突進!

 

「あっ!」

てお嬢さまが隣で小さく叫ぶ。

 

 いや、あれわざと誘ったよね。


 案の定褐色の獣はヒョイと横に飛んで突進を交わす。勢い止まらずユニコーンがそのまま泉にダイブ!


 ドッカーン!!

 

 爆音と噴き上がる水蒸気と水飛沫が、あたり一面に舞い上がる。


 あんなマグマみたいに燃え盛って水に落ちれば、水蒸気爆発もするわよね。

 

 褐色の獣はもう、わたしたちを爆風から守る位置に佇んでいた。

 

 勝負ありだね。


「あら、まだ生きてましたの」

 

 泉から満身創痍のユニコーンが這い上がってきた白い毛もところどころ焦げ禿げ上がり、尾もタテガミもチリチリカールで見る影もない。

 

 それでも、ブヒブヒブヒ――ンみたいな捨て台詞吐いて逃げてった。

 

「おとといきやがれですわ。たわいもない。フフン!」

 

 お嬢さまは何にもしてませんよ。むしろベソかかされてましたよ。


「まあ、それはともかくですわ」

 

 お嬢さまが立ち上がると褐色の獣の方に近寄り

 

「この度はわたくし セシリア・フォン・アーネストの危うきところを、お救いくださいありがとうございます」


 とスカートの裾をちょいとつまんで腰を落としての淑女のご挨拶。

 

 お嬢さまがお礼をのべれるなんてすごーいと、一瞬、驚愕しましたが、よく見れば目が獲物を狙う猛禽類です。そのままススっと獣に近づいて

 

「つきましてはぜひ! お礼を……今ですわ!」


 がばっと首を抑えようと飛びかかる。

 

 ヒョイっとかわされお嬢さまが頭から地面に突っ伏し、獣は少し距離を取ってなにもなかったように佇んでる。

 

「なかなか、やりますわね」

 

 立ち上がって両手をワシワシしながら、獣にまた向かってる。はーもう、後ろからワシワシの手を捕獲。


 あらやだこっちの捕獲は簡単でした。

 

「放しなさい、ルナリア」

ジタバタするお嬢さまを吊り上げてランチを広げてた敷物まで連行。

 

「なにをなさってるのですか、お嬢さま」

「いや,そのね。捕まえてちょっと召喚獣にできないかなーなんてねっ! うふ♡」

 

 はーやっぱり、その作戦まだ諦めてなかったのですか。しぶといですね。

 

「はぁ―、先ほどの戦いご覧になられましたよね、あれがお嬢さまの力でどうにかなるわけないじゃないですか」

「でもーこんな可愛いわたくしに抱きつかれたら案外メロメロってなるかもしれないじゃない」

 

 ゴチン!

 

「いたーい なにするのよルナリア!」

「そんなお考えは許しません! 自分から媚びへつらいそれを武器にしようなんてもっての外です。お嬢さまは公爵家令嬢としていえ,人としての誇りと矜持を持って生きなければいけないお人なのですから」

 

 ちょっときつかったかな?

 

「わかったわよ、じゃあ代わりにルナリアがやってよ」


ゴチン!


「人にやらせるのはもっとダメです!」

「冗談ですわよ」


 この嘘つき娘は―。

 

「とにかくもしお嬢さまが本当にそう望まれるなら誠意と真心を持って真摯にお願いしてみればいいのです」


「相手は瑞獣「白択」知恵の獣と呼ばれる者ですから無下ににはしないと思いますよ」

 

 あっヤバい思わず言っちゃた。内緒にって言ってたのにごめんねハクタクくん。ま、名前ぐらい許してくれるよね。

 

「知恵の獣! 知恵の獣ってなんて素敵な呼び名なの!」


お嬢さまが、胸の前でお祈りみたいに指を組んで目がキラキラです。


「ねえ、ルナリアあれこそ高貴なわたくしにピッタリじゃありません」

 

 あー食いつくのそっちかー。

 そうだよね。そのフレーズかっこいいものね。

 

「決めた、決めましたわ。わたくしあの子に決めました、ぜひ我が召喚獣として飼いたいわ。ねえどうすればよくって?」


 また即断即決丸投げですか懲りないな――

 

 とため息をついたとこでふっとあるフレーズがダンディーな声で頭をよぎった。

 

 “帰着時間は、ヒトハチマルマル(18時00分)厳守のこと。”

 

 ハッと、懐中時計を確認すると午後2時40分。


 お屋敷までは3時間はかかるからマズイ、今すぐ帰路に着かなきゃ!

 

「お嬢さま、この件はまた日をあらためてということで今すぐ帰りますよ」

「なによまだお願いしてませんのに」

「いえそんなことよりお屋敷に18:00までに帰るようセバス様に申しつけられております」

「もし間に合わなかったらお嬢さまにも想像つきますよね」

 

"320秒遅れだ!セシリア様・ルナリア その場で各自伏せ、今すぐ腕立て伏臥腕屈伸320回だ! はじめ!"

 

 鮮やかに、脳内再生された。

 

「か、帰りますわよ ルナリア」


 2人でそそくさと後片付けしながら、そういえばと「白択」に目をやると、足を崩して伏せてのんびりと草をモグモグ喰んでる。

 

 ちょっと待って,あなた白択でなく「ギフト白択」内包の人でしょ?


《魔族で間違いありません》


 なんで雑草を平然とモグモグ食べてるの、人としていいのそれで?

 

 わたしが人のアイデンティティに思い悩んでいるときにも、お嬢さまはせっせと今の推しの、勧誘に余念がないです。

 

「本日は助けていただいたことあらためて感謝いたします。本日はこれにて失礼致しますが、まだお話ししたいこと、おねがいしたいことございます」


「明日も……うーん、明日も来るのは無理よね……」

 

「そうだわ、ぜひ我がアーネスト家にお越しください。家人には申し伝えておきますので、特上の牧草用意させておきますわ。明日の午後でどうでしょう。うん、約束ですわよ」


「でわ、ごきげんよう。失礼致します」

 

 屈託のない笑みで、一方的に約束押し付けちゃいましたね。

 

 白択が「メェェェ――!」と鳴いた。

 

 ……それ、了承……でいいのかな?

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