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幕間 「ツノと思春期お嬢さま」

 今回は少し先のお話です。


 もう学園入学までひと月を切ったとある日の午後、今日は予定していたレッスンの先生がお腹を壊して頭が痛いとのことでおやすみです。昨日の晩に食堂で近衛の皆様の馬鹿騒ぎに巻き込まれていたのを見たので多分そういうことでしょう。

 

 なんとかは飲んでも、呑まれるなでございます。


 というわけで、ひまを与えると碌なことしないお嬢さまに、暇を献上してしまいました。案の定、半刻も持たずに暇を持て余した動物園のシロクマみたいに部屋中ウロウロしてらっしゃいます。


 なにかないかと、クローゼットの中を覗き込んでガサガサしてるお嬢さまをティーテーブルに肩肘ついて顎を乗せながらボーっと眺めてました。夏ももう終わりですねーとか、ノホホンとまどろみそうになってたのに……


 クローゼットにあたまを突っ込んでオシリフリフリ物色してたお嬢さまから、ピコーンとピンクの大きな『!』、いわゆるエクスクラメーションマークが見えた気がする。


 あ、またなんか変なもの見つけましたね。イヤだなーまったりした午後さん、さようならです。


「ルナリア、これ、これ!」


 オシリフリフリ、クローゼットから後退(あとずさ)って頭を抜いて、こっちにクルリと向き直る。その手には、細長い淡いピンクの円錐状の物体が握られていた。


「お嬢さま、それってまさか……」


手から顎がずり落ちました。

まさか、あれ持ち帰ってらしたのですね。


「ジャンジャーン! 『ユニコーンのツノ』ですわ!」


持った手を高々とあげて特級呪物のご紹介です。


「変態駄馬でも、聖獣って呼ばれるくらいだから、何か役に立ちそうじゃありません? ルナリアちょっと調べてちょうだい」

「はーい。お嬢さま、ちょっと待ってくださいね。ユニコーンのツノについて検索:ピーガガガ……」


(プラム、何か役に立つ物なのこのピンクのツノ?)

《検索……完了 水の浄化作用や毒の中和効果があるという伝説・伝承があります》


「水を綺麗にして毒を消してくれるぽいです」

「なんか、すごいけど、地味ですわね。まあ、いいわ、まず実際に試してみてちょうだい」

「じゃあ水の浄化から試してみますね」


洗面用のボールに水を注ぎまして、お嬢さまのお気に入り24色絵の具セットから何色か適当にと思ったら……


「赤3、ぐんじょうとビリシアンを1それと白を気持ち足してちょうだい」

「何かあるんですか、この配色?」

「いえ、なんか言ってみたかっただけよ」


イラッ! もうお嬢さま、どうして、そんな天然に人を逆撫でできるのてすか?


とりあえずなんかドドメ色の液体が、出来上がりました。


「お嬢さま、ではどうぞ」

「はい」


お嬢さまがツノをわたしの前に置いてベッドの上に逃げやがりました。わたしも逃げようと思ってたのにー


「お嬢さま、奇跡の瞬間ですよー。わたくしがやってもよろしいのですか?」

「そうね、でもわたくし優しいからその名誉は、ルナリアあなたにお譲りいたしますわ」

「いえ、私なんかにそんな大役もったいないです」


「いいからやりなさい!」


「はーい」


口尖らせてお返事です。お嬢さまのバーニャ! 爆発したら化けて出ますからね!


 ほんと、爆発とかしないよね。ユニコーンのツノを持って、なるべく腰を引いて手を伸ばしてビビり全開でツノの先をドドメ色の液体につける。


ブシュ!


変な音と共にツノからピンクの光と煙が立ち上った。周囲に何かトロンと甘い臭いが漂った。


 しまった!毒ガスの方だった。


 あれ、意外となんでもない。ピンクの煙が晴れてきて洗面器が見えてきました。ドドメ色の液体は透明度を取り戻して澄んだ液体へと変わってます。


 逃げてたお嬢さまが早速戻ってきて洗面器がを覗き込み。


「あら、本当に浄化できるのですね」

「みたいですねー でもお嬢さま、なんかほんのりピンク色じゃないですか?」

「そうね、ツノからの色落ちかしら?」


 これ、絶対になんか変な成分混ざってるやつで、お嬢さまは、飲んでみろって絶対言うんだろうな。もうやだなーお部屋に帰りたい。


 お嬢さまが、ティーセットから銀のスプーンを持ってきてピンクのユニコーン液をすくって反応を見る。銀がヒ素とか毒物に反応するんだったかな?


「とりあえず、毒ではなさそうですね。そういえば毒の中和効果もあるって言ってましたものね。じゃあ、安心ね」


「さ、ルナリア、アーン」


何が、「アーン」ですか。無駄に可愛い顔しないでください。


「お嬢さま、それ無理ですよ、絶対によからぬもの入ってますよ。イヤですよー」

「だから、何が入ってるか調べるんじゃない。ルナリアは前に、わたくしの体質調べるとか言って舐めて分析したことありましたはよね?」


お嬢さま、無駄に記憶力いいですね。


「ちょっと舐めれば、何が入ってるか分析できるのですよね、ル・ナ・リ・ア!」

「……はい、できます……」


あー、聞かれちゃった。終わったわ。涙目でご返事です。


頭の中のVRルームで、プラムロボが「ロボット三原則、絶対遵守」ってプラカード掲げてデモ中。


 実は、わたし達『ギフト』はこの制約、ロボット三原則に縛られてるのよね。


「人間に危害を加えない」「命令に従う」「自己防衛する」


 これです。解釈は、だいぶ緩い倫理規定になってるんだけどね。今回はふたつ目の「命令に従う」です。言わないで隠しておくことはできるんだけども、マスターに聞かれれば嘘はつけないのです。


悲しきロボの宿命なのです。


チョコっと舐めればいいだけよ。頑張れわたし!


「でわ、分析を始めます」

「ウフッ、いい子ね。はい、アーン」


お嬢さまが、とってもいい笑顔でスプーンをわたしの口元に差し出してきます。


震えながら小さく口を開いて、スプーンを受け入れます。ユニコーン液を舐めると、頭の中では、『ブヒヒ。ブヒヒンー♡』ってあの変態ユニコーンの下卑た嘶きがなり続けてます。イヤすぎる。


「んー」


甘い! なんか予想外に美味しい。


『ビービービー!』

VR空間で赤色灯が点滅して、ネコ耳ルナリアが警告音を叫んでます。


《警告.警告:ナノマシンコントロールに、不正ハッキング》

(何それ、プラム大丈夫なの?)


《現在、周囲のナノマシンを不正プロトコルでリプログラミング中……解析開始します》

『ピーガガ んぐっ』


 うるさいので、ネコ耳ルナリアの口に手を当てて塞ぎます。


「ガッ、んぐ。ピッ!」

足パタパタさせて塞いでもやっぱりうるさいな。


《解析完了 ナノマシンによる周囲の他者の感情への介入改変プロトコルです。こちらに対する好意感情の増幅を意図してます。特に身体的好意に特化》

(つまりどういうこと?)


『フェロモンぷんぷん、わたしモテモテのサキュバスちゃん』


ネコ耳ルナリアちゃん、わかりやすい解説ありがとう。


ようは周囲の人を惑わす、媚薬とか催淫剤なわけね……


一大事じゃない! いきなりこんなアダルトな薬物がくるなんて思ってなかったわ。あの変態駄馬め! どこまで危険生物なの。


はっ、お嬢さまが大変なことに……


「なんかチクチク痛いですわね、なんなんですか」


《ナノマシン無効化体質でブロックされてますね》

あっなるほどね。お嬢さまその体質が、初めて役に立ったんじゃないですか。すごいです。


《抗生プログラムの構築を開始します》

わたしの視界の下隅に横バーと『〇〇%』のインフォメーションが表示されました。

バーの、のび具合から小一時間ってとこかしら。

ひとまず、安心ね


「それでわかりましたの?」

チクチク刺激があるのか、不快な顔して聞いてくる。


「お嬢さま、お耳を」

「フーってやったら殴りますからね」


チッ!


「いま、舌打ちしませんでした?」

「いえ、何も、それでですね。この液体、実は……ゴニョゴニョ……なんです」


耳元でこのアダルト液体の説明をいたしました。


「さすが、変態駄馬ですわね。まったく」


といいつつ、お嬢さまはどこから出したのか、ポーションの小瓶みたいなのにユニコーン液を詰め替え始めた。


やっぱり、取っておくのですね。だと思いました。もう、これくらいじゃツッコミませんよ。


「はい」

「はい?」


瓶詰めが終わると、お嬢さまがユニコーンのツノをわたしの顔の前に押し付けてきた。


「だから、本体も舐めて分析してちょうだい。このままじゃこのツノ、町の井戸に投げ込むぐらいしか使い道がないじゃない。他の用途も調べないとでしょ。はい、舐めて」

「はい、舐めてじゃないですよ。お嬢さま、抽出液だけでもとんでもないのに、直接舐めて安全なわけないじゃないですか。もう! イヤですよ」


お嬢さまがなんかニヤニヤして、さらにピンクのツノを顔に押し付けてくる。


「何を泣き言を吐いてるのです。知的好奇心は人の成長に欠かせないのよ。いいから舐めなさい」

「もし、とんでもないことになってもね。わたくし見なかったことにいたしますから、心置きなく乱れていいですわよ。ほらお舐め!」


何、息荒くしてるんですかお嬢さま。怖いですって。


あっ! なるほどわかりました。この思春期のエロお嬢さまめ! そっちも興味津々というか、そっちのほうがみたそうですね。


 本当に何にでも興味があるお年頃なんですね。始末に終えません。


「わかりました。いいですか、もしとんでもないことになったらお嬢さまなんて簡単に組み伏せれますからね。大人を舐めて後悔しても責任取りませんよ」


お嬢さまから、ユニコーンのツノを奪い取る。そう言われると身の危険を感じたのか、お嬢さまが怯んで


「ちょっと待ちなさい!ルナリア」

「イヤですー もう遅いですー」


ペロン!


なんか、ねちょとした甘さが口の中に広がった。オエ、なにこれ。


VRルームはサイレンと赤色灯の点滅状態です。


 それでもこらえながら、

(プラム、ツノの分析結果は?)


…… ややしばらくツノの組成に関して脳内会議……


「お嬢さま、分析結果出ました」


お嬢さまが変化ないの? って顔でワクワクしながらこちらを覗き込んでる。


「あっ、ええ。教えてちょうだい」


なに残念そうな顔してるんですか、もう!


「ええと、まず粉末にして服用すればとんでもなくあれな効果がありまして、その筋からは絶大なな需要があり巨万の富を得られるかもですが、多分規制されて捕まります」


「魅力的なお話ですけど、捕まるのはイヤですわね」


魅力的とは思っちゃうのね。性根が外道です。


「あと、もう一つは然るべき鍛治職人に焼き入れして精製して貰えば凄まじく強度がある武器になります。アダマンタイト以上の強度と魔法の吸収蓄積放出もできる次元すら切りさけるほどの武器になります。よければ製法を書き出しますか?」


「そっちはすごいのね。さすが聖獣と言われるだけありますね」

「はいあの時のユニコーンの状態じゃないと採取できない貴重なツノです。さすがお嬢さま」

「そうですわね! さすが、わたくし」


 あの変態駄馬の妄執が詰まってるキモい逸品なのです。


「でもこれだけじゃ剣はちょっと無理ですわね」

「レイピアか槍の穂先ぐらいでしょうかね」


お嬢さまが、んーとあたまを捻ってから、ピコーンと何か思いついたらしい

 

「そうね。槍なら、クエルク兄様に送れるじゃない。たまには媚び売っておくのも手かもですわね」

「あの……お嬢さま。お兄様がおられたのですか?」

「いるわよ。言ってませんでした? ふたつ離れてて今年で学園の3年生になるのよ」


《透香の記憶野には『クエルク・フォン・アーネスト』セシリアの実兄、攻略キャラとのログが存在してます》


 うーん。あっ!いたね。『完璧超人 次元のクエルク』


ウンウン、いた。いた。


 そんなことよりも、わたしもそろそろ限界です。


「では、お嬢さまわたし自室でツノの精錬方法書き出してきますね。では、後ほど」


 そう言って頭をペコリ下げてお嬢さまの部屋から逃げるように出たら、ダッシュで自室に急ぎます。


(もう無理!プラム早く中和プログラム作成して!)

《現在12パーセント完了。予想終了時間残り78分です》

(まだ、そんなにー)


 お嬢さまの手前隠してこらえてましだけど、ユニコーンのツノがめちゃくちゃ効いてます。ダメ気を許したらおかしくなりそう。


 自室に逃げ込んでベッドに潜って我慢です。必死にこらえてると


トントンとノックの音


「ねえ、フフフ…… ねえ、ルナリア大丈夫?」


興味津々の思春期エロガキがやってきました。


「ねえ、ほら、セシリアお嬢さまですわよー ねえ、入れてちょうだい」


「ねえ、ねえ……」



ドアを叩く音が鳴り止むことはなかったです……

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