第4話 その8 「ハッタリとツノと救世主」
そうわたしには勝算があったのだ。いままでのこの駄馬ユニコーンの行動とあのホログラムで写し出された
「disqualification【不合格】」の文字。
そう、この駄馬は間違い無く人の言葉を理解してる。
言葉が通じるということは、演出が効く。
いやこの場合、はったりが効く!
「わたしの言うことを理解できますね ユニコーン」
ユニコーンがわたしの足の下で、肯定するように小さく嘶く。
「これ以上お嬢さまに狼藉を働くならその自慢のツノを叩き切りますよ」
ユニコーンの目に恐怖が宿ったのを見て、わたしは勝利を確信した。
本当はもう腕プルプルでガーンと叩き折るとか絶対無理なんだけどね。
やったわ、わたし。ハッタリの勝利!!
ガーン!!
ガーン?
…………?
刀に衝撃を受けた。えっ!なに?
衝撃の原因が何かと刀を見ると、刀はすでに振り下ろされた状態。ユニコーンのツノがポッキリ地面に転がってる。そして、メロンパンぐらいの岩を持ってるドヤ顔のお嬢さま。
そう、ツノに当てていた刀の峰に、持ってる岩を思いっきり叩きつけて、ツノを折っちゃったのね。
「あの下品な鼻先をへし折ってやろうかと、隠し持ってた岩が最後に役に立ちましたわ!」
「あの―― お嬢さま、何をなさっていらっしゃるのでしょう?」
「何って、この変態駄馬に報復ですわ。我がアーネスト家は受けた屈辱は忘れず倍返しが家訓ですのよ!」
さっきまで半べそ書いて震えてても、復讐心は忘れないのね。
「ルナリア、まずは助かりましたわ感謝いたします。でも、どうせ刃を当てるならツノなんて半端な所で無く首筋に当てなさい」
得意気に恐ろしいこと言ってるし、多分そっちでも躊躇ちゅうちょなく岩を叩きつけますよね。
驚いてカチーンと固まってたのは、ユニコーンも一緒だったみたい。で、我に返り地面に転がるご自慢のツノを見つけ、再びカチンコチンに固まった。
すかさず、お嬢さまが追い討ちをかける。
「どうですか?ご自慢のツノ落とされた気分は」
「あはっ、これじゃ馬と違いがわかりませんわね」
「いえ、その派手なグラデーションのタテガミ、まるでサロンにのさばる厚化粧の下品な貴婦人ですわね」
「おなじだなんてあらやだ、馬に失礼でしたわね」
煽る煽る、溺れたメイドをさらに棒で叩くような容赦ない煽りです。ダメですよその駄馬、ちゃんと言葉分かるんですから激怒しますよ。
案の定、煽られたユニコーンが怒り頂点
血管がさらに浮き上がってついにコメカミから血がブッシュー
「ルナリア、早くその駄馬を斬り伏せなさい!」
流石にまずいと思ったのか、お嬢様から即座に指示が飛ぶ。
「無理ですー! もう腕プルプルです。それに血とか吹いたら、わたしがショック死しますぅ!」
「先程の勇姿もまたハッタリでしたの、少しときめいた、わたくしの純情を今すぐ返しなさい。この駄メイド!」
「また、駄メイドって言った。非道いです」
「泣き言言わないの!」
「そうだ。ルナリア汚名返上のチャンスですわ」
「あの変態駄馬をここで足止めしなさい。わたくしがここから逃げる時間をを作るのよ」
見事なクズっぷりですお嬢様。
そうこう言い合ってるうちに、変態駄馬が変態してた。
尾もタテガミも燃えあがってるし、折れたツノから紅蓮の炎が吹き出し。鼻と口からも息を吐くたびに、チョロチョロと火を吹いてる。
《ユニコーン完全戦闘モードに変態完了》
《戦闘シミュレーション解析……完了》
《予測確率82% 戦闘開始後約3分で当躯体炎上し戦闘不能》
いやもうねそんな予想を聞く前から無理でしょこんなの。離れててもすでに熱いもの。
とにかくお嬢さまだけでもなんとか逃がさなきゃ!
あれ?
……?
…………?
もうとっくに、わたしを置いて逃げてらっしゃいました。
「お嬢さまの裏切り者ー! 置いてかないでー」
なんとかお嬢さまに追いついたけど、もう、すぐ後ろに燃え上がる怒りの駄馬が迫ってます。
「お嬢さま――」
「ルナリア、アレ!」
急にお嬢さまが横を指差した。
わたしもつられててそちらを見ると、ズッテーン!
この状況でまさかの足を引っ掻けとか、あの性悪お嬢さま。
悪役令嬢どころか、ひとでなしのド畜生でした。
「こっのー!」
近くにあった木の枝を拾いながら素早く立ち上がった。
《軌道計算 完了》
《投擲シーケンス開始)
ヒュンと投げた木の枝は計算どおり回転しながら、お嬢さまの足に絡みついて「びきゃっ!」とお嬢さまを転がした。
これが転生ものの醍醐味「ざまぁ」なのね。
んー気持ちいい!
『違うと思うけど 透香、後ろ大変』
VR空間でルナリアに声かけられた。
後ろ!?
ユニコーンが口から火を吐こうと大きく息を吸い込んでた。
「うんきゃっ――!」
危機一髪で回避!
火を吹いたとこ地面ごと溶けて穴空いてるじゃない。あんなの食らったら燃えるどころか溶ける!
これ無理かも。
転んだお嬢さまも今の火は見たみたいで青ざめてる。火吹き変態駄馬を引き連れてお嬢さまへと走る。
「お嬢さま、わたしお嬢さまのメイドになれて幸せでした」
「変なこと言いながらこっちこないで」
「そんな――最後は一緒です」
「バカ言ってないであっちいって!」
「い や で す ――」
とおバカなやりとりしているのと同時進行で脳内VRルームではちょっとした事件が起こってた。
(これはさすがに、無理かもしれないわね)
《逃走成功確率計算しますか》
(低そうだし聞きたくない)
突然、プラムが喋り出した。
《トゥルルル! アカシック経由で通信です。トゥルルル》
通信?
ネコ耳ルナリアがプラムの頭の三角帽子を取って耳に当て
『はい、もしもし ルナリアだよ』
そこ電話だったのプラムロボ。
『あ、ハクタクくん ひさしぶり えっ!お昼寝?うるさい うん、うん』
ルナリアがこっち見て
『あのね、透香。ハクタクくんがこっちにきてくれるって』
(ハクタクくんって誰?)
『ハクタクくんはね、アカシックに直接アクセスできるヤギさんなの』
(でそのヤギがどうするって)
『うん、うん。わかった。ありがとう。じゃあね』
三角帽子をプラムの頭に戻して
『あと8秒で出るからお嬢さまと一緒に伏せろって』
《カウントダウン始めます 8……》
(ハクタクくん……? 白択? それってあのキャラのギフトの白択!)
《7……》
『うんそのハクタクくん。でもねお嬢さまには内緒にしてねって言ってた』
ルナリアが頭の上で手を丸にした。
《6……》
お嬢さま!なんか助かるかもですけど、また問題発生です。
《5……》




