表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/24

マクシミリアン

──ジュスティーヌ、なんてことしてるんだ⁈あのバカ……!


エレオノールは席から立ち上がり、「こら!はしたない真似はやめろ!!」とジュスティーヌを叱りつけようとした。


「おおっ、そこの黄色いドレスの美しいお嬢さん、いい食べっぷりだ!」

新郎の父は、ぱちぱちと盛大に拍手しながら、嬉しそうにジュスティーヌを見た。

その意外な反応にエレオノールは驚いたが、反感を買わずに済んだのはありがたいと思い、ホッと胸を撫で下ろした。


「ありがとうございます。旦那さま」

ジュスティーヌはにっこり微笑むと、深々と頭を下げる。


「さあ、みなさん!どうぞどうぞ!たくさん用意しましたからね!どうぞ召し上がってくださいませ!!」

新郎の父が言うと、さっきまで遠慮がちだった招待客たちがこぞって器を手に取り、食べ始めた。



ジュスティーヌは、何気なくフルーツが盛られたカートに目をやった。


──おっ、アタシが持ってきたスイカが置いてある!


ジュスティーヌが持ってきたスイカは、今までに見たことがないほどに美しく飾り切りされていて、オレンジやイチゴ、キウイなんかのフルーツと一緒に、キレイに盛り付けられている。


──実にありがたいことだ、息を切らして持ってきた甲斐があるというもの…


ジュスティーヌはそこに盛られているフルーツを1切れずつ取って食べた。

どれも新鮮で実に美味しい。


──アタシの持ってきたスイカがかすんでしまうな…


口の中でイチゴをもぐもぐ動かしながら、ジュスティーヌは辺りを見回した。

どの料理も、きらびやかで美味しそうだ。


──せっかくだから、たらふく食べて帰るとするか、残したらもったいない!


「ジュスティーヌ!来てくれてありがとう!嬉しいわ!!」

ジュスティーヌがほかのカートに乗っている料理を取ろうとしたところ、背後から懐かしい声に名前を呼ばれた。

ジュリエット嬢の声である。


「おや、ジュリエットさん。花嫁姿がなんともお美しいですねえ」

ジュスティーヌは、ジュリエット嬢の方に向き直って微笑んだ。


今日というおめでたい日のために、着飾ったジュリエット嬢は美しかった。

フリルとリボンとレースたっぷりの真っ白な姫袖ドレスに、花模様のレースで作られたベールと、白薔薇の花かんむり。


「ありがとう。今日のために、仕立て屋さんに無理を言ってあつらえてもらったのよ!」

ジュリエット嬢は上機嫌な様子で、その場でくるりと回ってみせた。


大きく広がったベルラインの裾がふわりとたなびき、腰についたリボンとバッスルが華やかだ。


「バックデザインも見事なものですねえ」

ジュスティーヌは、そのドレスの華やかなと美しさに感心して。

「そうでしょう⁈あ、マクシミリアン。この人、ジュスティーヌというのよ。昔、すごくお世話になったの!」

2人で会話していると、新郎のマクシミリアンが近づいてきた。


「はじめまして、マクシミリアンさん。わたくし、ジュスティーヌと申します」

ジュスティーヌはドレスの両端をつまんで、深々とお辞儀をした。

「ああ…」

マクシミリアンは眉間にシワを寄せながら、ぶっきらぼうな返事をした。

座っていたときには気づかなかったがこの男、なかなかに背が高くてがっしりしている。

顔だって整ってはいるけれど、強面というのか、どこかいかつい雰囲気を醸し出していて、人によっては「怖い」と煙たがるであろう外見をしている。


──おや、何やら機嫌が悪い?


どうしたことだろう。

ジュリエット嬢と2人仲良く並んで座っていたときは、機嫌良さそうにしていたというのに。

ジュリエット嬢もこれを不思議に感じているらしく、キョトンとした顔でマクシミリアンを見つめている。


「ジュリエットから、君の話はよく聞いているよ。「優秀で頼もしい」とか…「もしジュスティーヌが男だったら結婚していた」とか…」

マクシミリアンの眉間のシワが、より深くなる。


──なるほど、そういうことか!


ここでジュスティーヌはようやく、マクシミリアンの不機嫌の理由がわかった。

「やきもちでございますか、マクシミリアンさん」

ジュスティーヌは、ジュリエット嬢に聞こえないようにマクシミリアンの耳元に唇を近づけて囁いた。

すると、マクシミリアンの肩がビクリと動いた。

図星であったらしかった。


「……ちがう」

マクシミリアンは口では否定するものの、ジュスティーヌは確信していた。

新郎たる彼がやきもちを焼くのも仕方のないことかもしれない。


古くからの知り合いがいる以上、自分はポッと出でしかないし、花嫁がポッと出の自分を放置して、古くからの知り合いと楽しそうにしていても、抗議のしようがない。

そうなってくると嫉妬もひとしおだし、素直に相手を歓迎できないのだろう。



「いやあ、たいへん美しい方でございますね、マクシミリアンさん!お体も大きくていらっしゃるから、こんな方がそばにいてくれれば、さぞかし安心できますでしょう?」

ジュスティーヌは、今度はわざとジュリエット嬢に聞こえるように声を発した。

これには、マクシミリアンも驚いたようだ。

「ええ、もちろん!それに、とっても優しいし、頼りになるのよ!!」

婚約者を褒められたジュリエット嬢が、嬉しそうに笑った。


「はっはっは!結婚式から早々ノロケはよしてくださいよお!いやあ、なんです、マクシミリアンさんも、ジュリエットさんのことお好きでしょう?こんなに可愛らしくてお上品な方はめったにいらっしゃらないんですから!!」

ジュスティーヌが意味深に微笑んでみせると、マクシミリアンはかあっと顔を真っ赤にした。


「ああ…」

マクシミリアンが小さな声で答える。

さっきまでのぶっきらぼうはどこに消えたのか、少し嬉しそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ