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ロヴァノリヤ禽獣旅紀  作者: 南部 八十一朗
第Ⅰ章 禽獣は騎兵民族国家への旅を致す
7/11

禽獣は旅を委ね往く Ⅱ

そして、蒸気機関の甲高いヴォルンヴォルンと言う唸り叫びが(きこえ)る。景色は変わり、人工的な物へ変わる、着いたようだ。騎兵民族(コサック)馬舎(国家)に着いた。

「さぁ、降りよう、早く審査終わらせに行くぞ」

「そうだな」


列車を降り、駅の広場(ホーム)へ参り着く。

壮大な騎兵の壁画に高いドーム状硝子張りの天井、落ち着かない。

「あそこに人溜まりが出来てる、あれが、検査官か...」

「とっとと済ませよう...此処は全然落ち着かない、終わらせよう」

「解ってるって」


人溜まりの沼は、検査場であった。

「次の方、自己証明書(パスパート)を出してくれ」


厳つい長髭の人間の爺の検査官が、低い声で私に言う。

「はい、見せろ」

「ほらよ」


そう言い、私の自己証明書(パスポート)を渡す

爺は、右から左、左から右と目を動かし、舐め回すかの如く、自己証明書(パスポート)を眺める

「いいぞ」


其れが入国審査合格の言葉だ。つまり、私は行けたのだ。この騎兵民族(コサック)の国に入れるのだ。さて、今から何をしようか?座り疲れたし、少し運動もとい周辺の建物の確認をしたいものだ。

今見える範囲での印象は、馬が居ないと言う事だ。何なら、馬より機械の方が使われている。路面列車にエンジンと呼ばれる機械動力を備えた車等、馬が見当たらない。

「なぁ...全然馬を見掛けないな、本当に騎兵民族(コサック)だよな...?」

「私に言ったって知らないよ...でも、周りの者、殆どが騎兵民族(コサック)じゃない気がする」

「私達みたいな異国人が多いって事か?」

「そう、顔つきがロヴァノ人に近いと言うか...騎兵民族(コサック)は他民族だから、ロヴァノ系の人かもしれないけど...」


確かにロヴァノ人と似たような顔付きが多い気がする。金髪や金の同系色の髪色に、青やら鮮やかな瞳の色、イメージする騎兵民族(コサック)の顔とは違うように感じる。

「街中回ってる内に見掛けるでしょう...」

「...そうかもな...」

「まぁ取り敢えず、其処らの店々にでも立ち寄ろう、少しは歩きたい」

「そうだね」


そうして、私とイデナは、取り敢えず駅周辺の店を周る事にした。近くに商人店群(バザール)が形成する大商業施設(デパート)が有り、其処へ向かうのであった。

「酒屋塗れだぁぁぁ」

「急に叫ばないでくれよ...」


大広場の様に広がる烏合の酒屋、酒欲しい欲しい、

何なら其の場で酒飲みたい飲みたい、マジで...

「あぁぁぁ~たまらん~」

「ミュハーンは酒に目がないのか...」

「当たり前だろ、酒が無いと、体の機械(臓器)が動かない、酒は燃料であり、ジュースなんだよ」

「えぇ...」

「後、いちいちミュハーン、ミュハーンって言うの面倒だろ、ミュハでいいよ」

「おぉ、そうか、じゃあ私もイデナって呼んでよ」

「心の中ではそう呼んでる」

「なんだよそれ...それに路上で買った酒飲むんじゃねぇ!!塵が出るだろうが、何処に捨てるんだよ...」

「煙に換える、常識常識♪♪」

「んな訳ないだろうがぁぁ!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大商業施設(デパート)だけあって、多種多様な店達が佇む。香ばしい食の匂い、(かぐわ)しい民衆の喜声の渦の中に私たちは居る。

「なぁ、ミュハ、私腹減ってきたなぁ...そろそろ食べないか?」

「早くね?」

「酒飲んでるから腹満たされてるだけでしょ、ミュハは...私は、サンド食べた後、何も食ってないからね。腹が減ったら戦が出来ぬって言うでしょ..」

「戦はしないよ...?」

「そういう事では無くてな...腹が減ったらやる気が出ない的な感じよ、戦=やる気って事」

殺る気(やる気)...?殺すのか?満腹になったら、殺す(やる)のか?」

「違うから!!活力が湧くみたいな感じだから...」

殺す(やる)活力...?」

「一回、殺すから離れてくれ...やばい奴みたいに成ってるから...私が悪かったから勘弁してくれよ...」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「いやぁ...この料理美味しいなぁ!!此の...ビーフボルシィ(ビーツ・トマトに牛肉)アルチ(の煮込みスープ)って言う料理は!!」

「そうかい、イデナは其の料理を食べるのか...じゃあ私は、ビーフストロガノフ食べようかな..」


今は、食事処に居る。イデナの料理量やメニュー表を見る限り、安いし、量も多い、なんて素晴らしい事なんだ。

「ミュハ、此処でも煙草吸う気か...」

「別に禁煙ではないじゃないから、良いじゃないか」

「お前の煙草、紫煙の排出凄いから、こっちが咽るんだよ」

「そうか...」


火が点いた、幼い煙草の先端を指で潰し、煙草を箱に仕舞う。

イデナはやるじゃんみたいな表情をこっちに向ける。

「何だその顔...そのビーフボルシィアルチ喰うぞ」

「ふっ...ミュハらしいな」


そう言いながら、イデナをスプーン一杯に乗り建つスープと牛肉を頬張る。

「こっちも腹減っていきた、すみませーん」

「はい」

「ビーフストロガノフ一つと飲み物は..ビールで」

「わかりました、少々お待ちを」


そう言って店員は厨房の方へ行く。

「お前、また酒飲むのか...!?」

ビール(ジュース)だぞ、大したもんじゃない」

「大したものじゃなくて、飲酒し過ぎだ。絶対、倒れるぞ」

「んな訳無い、ビールって言ってもウォッカよりか、甘いだろ」

「そういう事じゃない、酒以外を飲め、水やらジュースとか...」

「ビールはジュースだろ」

「酒飲み過ぎて、體が壊れたんだね。可哀そうに...」

「あくまで、個人の自由だろ。別にイデナも一緒に飲むことでは無いし、嫌がるならまだしも、私、個人だけの選択なんだから、他者に押し付けられることも無いでしょ?」

「まぁ、そうだな...」

「だから、ビールは飲む」

「だとしても、倒れないでな...」

「解ってるって、大丈夫だから」

「心配だなぁ...」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ビーフストロガノフとビールです」


その言葉通り、器に聳え立つ山盛りのビーフストロガノフにジョッキに注がれた黒ビール。

「旨そうだな」

「イデナには其れが有るだろうが」

「食べはしないから、旨そうに見えただけだから」

「ふん!!一口もやらんからな」

「食べないって...」

「では、いたただきます」


茶と猩々色のとろりとした煮込みスープに埋まる芋に人参、肉、トマト、そして、スープに添えられる揚げ芋。

スプーン手に取り、抄い上げ、口に入れる、その刹那。サワークリームの酸味とヨーグルトの酸味にトマトの甘味は薄れているが、少し酸味が控えられ、また、とろりとした感じが舌を刺激する。それに、肉や野菜の出汁が薄れた甘味を補強して酸味と調和させていて、程良い味を現わしている。

「美味しいなぁ~」


ジョッキを手に取り、黒ビールを喉に流し込む。

口内に広がる大麦の苦と言う香辛料が、スープの残党と融合して、独特の味を生み出している、其れはまた、美味しい。頭の中は、快楽(ドーパミン)塗れさ。

「あぁぁ~たまらないぃ~」

「そんなに美味いのか?」

「当たり前だろ、極楽気分だよ」

「そうなのか」

「手が止まらないぃ~」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


大商業施設(デパート)から出て、街中の(みち)の上、時刻は黄昏。


「いやぁ~美味しかったぁ~」

「なぁ、次は何をする?」

「とりあえず、宿でも取ろう、今の内に取った方が楽だと思う」

「じゃあ、宿取りに行くか」


そうして、宿を取りに行くのであった...

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