禽獣は旅を委ね往く Ⅰ
ポーポーと鳴る蒸気機関、間もなく出発の時間だ。大勢の人々が列車に乗っている、ヤレンスクとは全然違う。3両目の後部座席、私とイデナウアーは隣り合うと言うよりか、相対する感じで有った。
「へぇ〜イデナウアーは両親がカルマーク人と東方系民族の翼人かぁ〜、ここらでは、かなり珍しいね、特に東方系民族とかは全然居ないし...」
「まぁ、東方系民族の中でも、泰西とは全然馴染も無い文化圏の民族だから、ミュハーンも知らなくて当然だよ」
「馴染の無いって事は、かなり遠い所の民族って事?だとしたら、どうやって此方に来たんだろうね...」
「東方系民族って遊牧とかしてる民族も多いし、それで泰西に来たんだろうね」
「壮大だな、何千キロ以上も離れた所から来て、その土地に棲む者との間に子を生むなんて...」
「良くも悪くも、色々と目立ったよ。両者の文化に風習を受けに受けまくったから、変な感じだったな、服装やら食事やら...」
「どんな感じなの?」
「食事時は、スプーンとフォーク以外に箸って言う、細長い棒2つでご飯を食わないと駄目、服装は...ザ・東方系民族衣装って感じだった、和服か漢か忘れたがな。外では、普通の服を着ていたけど...切り替えが面倒で目立つしでかなり恥ずかしかった」
「そっちもまぁまぁ苦労したんだな」
「そっちはどんな感じ?何か変なルールとか合った?」
「私の所は、貧し過ぎて、毎日2食以下の日が多かったし、両親も私もずっと働いてた。ただ、親父が北方の方の者だったから、遺伝で巨体だから、結構此方も目立ってた」
「確かに、背丈高いな」
「之でもまだ背が伸びてる」
「まだ伸びてるのか!?遺伝と言うか成長長いな」
そんな事を話している時、ついに、列車は動き出す。甲高い汽笛を鳴らし、景色が動き始める。
「おっ、出発時刻か、此れから騎兵民族国家へ行くのか、何かワクワクするな?」
「そうだな、どんな感じ何だろうな...」
「行ってみないと解らないな」
騎兵民族、馬術に長け、馬を用いた独自文化、言語、衣装を形成し、ロヴァノリヤでも有力な地位と軍事力を持つ民族であり、もし、ロヴァノリヤで革命やら内戦・内紛が起きたら、独立する可能性が高い自治国家群の一つだ。そんな時の事だった。
「なぁ、もしも此の国で革命が起きたら、どうする」
革命...十分起きるのは確かだ。今、この一秒一秒、此の国の何処かで、デモやストライキが活発化して、国民議会も手の負えない状態なのかもしれぬ。だとしたら、各地で荒れ暴れる大衆は、叛乱軍と成り、此の国を変える、ある意味の救世主になる可能性があるかもしれない、だが、正直に、労働大衆には、同情も在れば、嫌いな所も在るし...正直な所は...
「私なら.....旅と言う名目で、第三国に行くかもしれないな...正直、此の国でも良い思い出は、料理か自然の風景だけだ、大衆に良くも悪くも色々と遭ったからな...」
「だろうな...私もそうするさ。もし、革命などが起きたら...亡命する国を決めてるんだ」
「何処なんだ?其処は?」
「母の国だ」
「東方系民族の国家か...」
「泰西諸国の文化の影響を受けているらしい、産業大革命で航海術等も進化して、より遠くの国々に行けるようになった」
「じゃあ既に、向こうもかなり近代的に成ってるって事か?」
「十分有り得るとは言え、見たことも言ったことも無い、だから解らない」
「まぁ、まだその時では無いでしょ、何が起きようが、私には関係無い争い事だ。勝手に殺して死に合ってとけと思うがな」
「此の国に愛国の意は無いのか?」
「余りこんな所で言いたく無いが、此の国には自由も何も無いぞ、在るのは仮初の自由と言う名の腐敗と犯罪しか起きて無い、そんな国に愛せる事も無いし、塵みたいな幼少期の時から今に至るまで、善な事よりも悪な事しか起きて無い、だからこそ、愛国の愛も無い」
「愛国って聞いた私も此の国に誇る事など無いって思ってる。だが、此の世の中は悲惨で喜々快々だ、私達、亜人や人間にしろ、此の星からすれば、巨石の欠片みたいな物だ」
「此の話は辞めにしよう、結局哲学的に成りそうだ、私哲学は嫌いと言うか、退屈になるんだ」
「そうだな、もっとぱーっと明るく楽しい話をしよう、例えば...」
...............
早く瞬きをするかの様に、景色が変化していく。何も描かれない紙の様に平らな平原は徐々に険しい山々に視えてくる。車窓は中途半端に開き、圧の強い風が吹き入ってくる。周りの客共は、煙草吸うやら、景色を眺めてる。その時、車窓の遥か遠くから馬の聲が聞こえる。そして、一騎の騎兵が険しい山々を超えようと走ってる。
「見てみろよ。騎兵だ、生で見たわ」
「騎兵が居るって事は、そろそろロスヴォフヴォルクに着くんじゃないか?」
「やっとか、座り疲れたぞ」
「自己証明書の準備しろよ、捕まるぞ」
「解ってるって、既に持ってる」
ようやく、この時が来た。楽しませてくれよ、騎兵民族文化に騎兵民族共...こちとら、もう退屈で仕方ないんだよ。
「へっへっへ...」
「何笑ってるんだ?気色悪いぞ」
「あぁ..すまんすまん...」
続
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設定集?
物語出てくる人種について、(○○人=人間・亜人含む)
ロヴァノ人・・・ロヴァノリヤ帝国の西部(帝都やその周辺地方)の主要民族。この国を支配する民族であり、国内の民族の中で近代的。
騎兵民族・・・ロヴァノリヤ南部に住む、民族。民族と言っても、色々なルーツを持つ物者が集う他民族であり、複雑怪奇である。ロヴァノリヤ国内の民族で、第二の高度な近代文化を持ち、自治国家で最も高い独立意識を持つ国家群。
東方系民族・・・ロヴァノリヤの東部・極東部や泰西から見て東の地域に住む民族を表す言葉。ロヴァノリヤの東部・極東部には、これまた、複雑怪奇な数の民族が跋扈している。
カルマーク人・・・泰西地域に住む、民族の一つ。単一の国を持ち、今もなお、近代化の為の工業化等を行っている。
北方・・・泰西の北部地域に住む民族群。ノルド人・ウップド人・サード人の三民族が実効支配している。ミュハーンの父はノルド人の狼獣人。
執筆者の八十一です。ついに、次章に突入しました。
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