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ロヴァノリヤ禽獣旅紀  作者: 南部 八十一朗
序章 ミュハーンと言ふ狼の旅
5/10

寒地の禽獣 Ⅴ

列車は果てなく続く平原を渡り、ついにヴォロジ=ネジに着くのだった。

駅内、蒸気機関の音が途絶え、ホームに停まる。次の発車は、3時間後だ。点検やら簡易整備等でこれくらい時間がかかるとの事だ。列車から降り、駅を出る。

「此処は、デモもストも何もないのか?」


ヤレンスクとは、違う空気、景色。子供の笑い声に人間と亜人が共に話しながら歩き、本当に同じ国の街かと目を疑う。街中をぶらつく中、酒屋を見つけ、立ち寄る。

「何だこれは...」


其処には、多量の種類の酒、ヤレンスクとは比べ物に成らない程、質も良い、そして、安い。

ウォッカ等の度数高い酒でも、数十種類も在る。まるで、天国ではないか...

「之は...いっぱい買うしかないだろうが!!」


計15本のウォッカ系酒を買い上げた。之は之は、嬉しい。

「うへへ、之で、当分酒に困らないぞ」


そう言いながら、酒を煙に換え、吸い上げ、体内に入れる。

こうすれば、無くすことは無いだろう。

「さっ、次は何処に行こうか、時間も全然在るし、存分に視て廻れるしな」


......


売店(キヨスク)で煙草買い、街中に佇む商人営みの店群(バザール)を回る。果実屋に靴屋、帽子屋、呉服屋、軽食の屋台、そして、またもや酒屋等、娯楽施設ではしゃぐ子の如く、買い物を楽しんだ。そして、今は、早めの昼食をする為、食事処へ入った所だ。

「いらっしゃい!!」


愉快で陽気な店員の声、客席は賑やかで、会話で談笑する者たちに、早くから酒飲み、酔い歌う者、新聞読みながら、ケールサラダを口に含める者等、色々な者が集い、食事やら会話やら楽しんでいる。

適当な席に着き、テーブルに置かれるメニュー表を覗く。

「えぇーと、サンドウィッチは...アレニナケール(鹿肉とケールの)ウィッチ(サンド)?オリーブ油焼きの鹿肉にケール巻き、ブハンカ(黒パン)に挟むサンドウィッチ...旨そうだし、これにして、飲み物は...普通に酒やら果実絞りのジュースやら、幅広めだな、じゃあジンジャエールにしようっと、すみませーん!!」

「はーい!!」

アレニナケール(鹿肉とケールの)ウィッチ(サンド)で、飲み物はジンジャエールで」

「かしこまりました。少々お待ちを...」


店内には、ロヴァノリヤ軍歌の”騎兵民族の行進歌(ヴジョーンヌイ行進曲)”が蓄音機から奏でられている。尖ったラッパと太鼓の連続音に低く重厚感、凛々しい男共(兵士)の声。

ブジョーンヌイ...騎兵(コサクティン)の英雄だ。大昔の英雄だが、今も彼の栄誉はこの曲で謳われている。ただ、彼は騎兵民族(コサック)の血の者では無いそうだ。何じゃそれ...

「......お腹空いてきたなぁ...」


数分の時が経ち...

アレニナケール(鹿肉とケールの)ウィッチ(サンド)とジンジャエールでーす」

ありがとう(スパシーヴァ)!!」


大麦の絵が描かれた大皿の上に、3切れのサンドウィッチが乗っている。之が、アレニナケール(鹿肉とケールの)ウィッチ(サンド)...オリーブの甘く爽やかな芳醇な薫りに僅かに黒胡椒の馨り、鹿肉はケールに巻かれ見えないが、きっと美味しいだろう。

「では...」


一口頂く...!?

「之は...美味い!!」


硬めで歯ごたえの在る鹿肉に、オリーブの爽快感と胡椒のピリピリ感が混ぜ合って、美味しいし、このブハンカ(黒パン)も両面カリッと焼かれていて、パリパリ美味しい音が鳴る。そのカリッとパリパリ感に鹿肉の肉汁にケールが肉の油を取って、一口食うと、二つの肉の旨味を贅沢に感じられる。

「ジンジャエールも飲んでみよう.....良いな」


生姜の辛味が喉を刺激して、心地いいし、口の中に残る、肉の油を取ってくれているようだ。

「こんな旨い物、あっという間に喰べてしまうよ」


サンドウィッチの断面は、上のパンを押すたびに、挟まる鹿肉から、ジュワーと肉汁が溢れ零れる。

それがまた、食欲を引き立てる火薬の様だ。ならケールで巻かれる火薬だから、火薬庫みたいだ。

「いや~、美味しかったなぁ」


その時、ふと周りを見る。其処には、ヤレンスクから列車に乗る時に視た、人間?が居た。

彼女もアレニナケール(鹿肉とケールの)ウィッチ(サンド)を頬張りながら、珈琲啜り、新聞を読んでいる。

「........!!」


その時、目が合う。すぐに逸らすが、何故か妙に惹かれる。やっぱり、周りの者と比べ、異質に魅える。

私もそうだがな...そんな時の事だった。

「君、あの..ヤレンスク駅に居なかった?」


向こうからこっちに話しかけてきた。

「あぁ...居たよ。」

「やっぱり...一つ聞くけど、君は...亜人?」

「...(言っても言わなくていいが...)そうだよ。亜人だよ」

「やっぱり、そうだよな...」

「要件は何だ」

「いや、同じ”亜人(同胞)”が、それもここら出身でも無さそうだし、ヤレンスクみたいな、デモやらストライキで荒れに荒れて、治安が崩壊している所から、此処に来る奴なんて、早々に居ないし、つい気になってしまってな...」

「そうなのか...此処に来る奴はそんなに居ないのか?生憎、私はヤレンスク周辺都市出身でもなければ、ド田舎(ウラテリンブルク)の方、出身だからな。ここらに来るのも、初めてだし、土地勘が無いんだ。」

「行ける事は出来るが、職人(労働者)労働放棄(ストライキ)して、収入が無く、列車に乗れないのと、駅員も労働放棄(ストライキ)して、利用が困難になったりで、難しい状態なんだ。今回は、駅員(ドワーフの爺)が居たから良かったが、居なかったら、宿も閉鎖で何日も野宿する破目に成ってたかもしれないしな...まぁ、私もここら出身では無いが、ずっとこの辺を旅している。」

「奇遇だな、私も一応、旅人だ。今は、南下して、騎兵民族(コサック)国家へ行こうとしている」

「君も旅人なのか、騎兵民族(コサック)国家か...私もその辺には行った事無いな...なぁ、一つ提案だが、此処で会って、話しかけたのも何かの縁だし、私と一緒に行かないか?私、前から仲間が欲しくてな...」

「...奇遇だな、私も旅仲間が欲しかったんだ。...まぁ、宜しくな...名前は?」

「私か?私は、イデナウアー、イデナウアー・コルチャフネン。翼人だ。そっちは?」

「私は、ミュハーン・ゼムチャツキ、獣半人だ。イデナウアー、宜しくな」

「こっちこそ、宜しくな、ミュハーン」


そう言い、私は、イデナウアーと握手をした。今日から、二人で旅をする...何とも嬉しい事だ。

「そろそろ、列車の発車時刻では無いか?まだ、飯が残ってるぞ」

「そうだった、急いで食べるわ」


そう言って、イデナウアーは席に戻り、セッセッとサンドを口に運ばせ、珈琲を一気に飲みする。

「これからの旅、楽しくなりそうだ」



・・・・・・・・・・・・・・・

人物解説

イデナウアー・コルチャフネン


本名 イデナウアー(名前)カラシノコフ(父称)コルチャフネン(名字)

種族 翼人(東方の地では天狗と言われる)

能力 不可解な事を引き起こす事


ミュハーンと同世代ぐらいの翼人。翼人(クルィチェラ)とは、人型に羽の生えた種族の事を指す。

身長は177㎝で体重61㎏。好物は、温かいスープ系料理、酒(果実酒等)、煙草(月に3箱消費)得意な事は、急降下飛行、苦手な事は、白兵戦とチェス。好きな事は、飛ぶ事。名前が二つある。イデナウアー・カラシノコフ・コルチャフネンと言う泰西的な名と母方の東方民族の名の紫雲山(名字・しうんざん)纂慶(名前・さんけい)の二つ有る。


外観は茶髪寄りの黒髪に緋色の瞳。服装は、暗い枯草色のリーファーコートに黒色の長ズボン、時に、山岳帽を被っている。靴は、黒の革長靴でズボンの裾を入れている。


出身はロヴァノリヤ西部の国境部のスモヴェンスク地方、スモヴェンスク市。幼少期は、ミュハーン同様、教育は受けてもらえず、働いていた。15で、逃げるかのように、スモヴェンスクを出て、旅をするようになった。今は、騎兵民族(コサック)国家への玄関地方、ヴォロジ=ネジ地方を主とする旅をしていた。ロヴァノリヤ出身だか、両親はロヴァノ人系でも無い。


精神


原始的レーダー・・・聴力に優れ、気配による相手の数等を特定できる

飛燕戦術・・・空からの地向けの攻撃・偵察が可能、機銃掃射等


能力 不可解な事を引き起こす事


之は、要するに、相手に善い事、悪い事が不意に降り堕ちると言う事。災難や幸運は相手に届く。

だが、基本的には悪い事を降り落とす。例えば、急に躓いて転んだや事故・事件に巻き込まれる、当たる筈の無い弾丸が周囲の物に当たって、軌道を変え、当たってしまう、そんな感じ。

予期せず起きるので、対処が難しい。


また、幻覚や幻聴等、精神的な攻撃等も可能でこれを主とする。基本的な武器は、ppsh(ペペシャ)‐50と言う短機関銃である。いつもは鞄や翼の中に入れている。

執筆者の八十一です。ずっと、新キャラの設定や予定で苦戦しました。

次から騎兵民族コサック国家編です。評価・感想お願い致します。

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