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憂国からの脱出 Ⅰ

地に積もる雪共を蹴り飛ばし、前進。目指すは、ヴルジアからイデナの第二祖国。其の為には、先ず、クラスノコプまで、行く事。其処で、一先ずは休憩だ。


歌詞無しの寂しさ交じりの弦楽器の曲にでも合いそうな、淡々とした銀風景。私の髪色の様に、濁り銀交じりの艶無しの雪色。私の無情さでも表現したかの様に感じる。


三人の白雪行進は、始まったばかり。此の物語(人生)も段々、中途半端な所まで来た物だ...此処からは、諸外国への亡命だ。お前ら傍観者から見たら、新章みたいで、盛り上がるのかもしれないが、そんな事は無い。幾ら、デモやスト、叛乱が起きる国でも、棲んできたのだから、多少の思い入れは在るさ。お前ら的に言えば...幼少期は、此処に住んでいたが、途中から、引っ越す事に成ったみたいな感じか?


私はどうでもいいが...ユジノーはかなり、心身に来るのではないか?やはり、母地から離れるし、同じ文化圏国家と言えど、多少違う面も在るし、まずまず、騎兵民族コサック達は、自分たちの国が有ったのに、ロヴァノリヤが占領して、服従された民族。宗主国のせいで、自分たちも巻き込まれる何て、溜まったもんじゃ無いだろう。宗主国も階級やら種族で差別されるし、自治国も其の影響を真に受けるし、一番の被害者は、主要民族以外の多民族達だろう。


だが、世の中。独りより、大勢が歴史を主導する。独りの偉人が何かしても、其の何かを普及される為には、大勢が必要。其の大勢は増えれば、独りの価値は減る。順序を設ければ、尚更だ。だから、此の三人は、決して、何か歴史を創る何て、難しい。


ウルヴチェラ、クルィチェラ、ドラフチェラ、典型的な勇者伝説には馴染み薄い。お前らは、勇者伝説にはどんなイメージが湧く?凡そ、勇者が仲間と共に、魔王を倒すみたいな事を考えるだろう。其の仲間に何が浮かぶ?...賢者や魔法使いや戦士、そんな感じか?我ら、獣や禽の仲間は浮かばないか?私の様に、狼の獣人の人間の混血の者など、早々に現れないだろう。


イデナの様に、禽の亜人は敵では無いだろうか?風か何かの魔法使って来る魔物と想像着かないか?ユジノーは、人によっては、馬に何かの者にすり替えられるのが、多そうだ。

「お前らは、私らを魔物系だと思っていないか?」


此の世には、魔物は居る。だが、かなり複雑だ。人間・亜人・魔物、此の三つの種族は、国毎に、扱いが異なる。亜人を魔物の判定にしたりする、都合主義と言う日和見主義に振り回されて、順序を形成したり、見た目が違うから、奴隷にしたりと、過酷。


魔物は、居る。ただ、種類が亜人の様に多くいる。獣系か禽系か、将又、人間から堕ちた者か、浄化されずの死者の御霊の怪物か、様々だ。

「お前らも、見た目や文化、風習で私らみたいに区別はしているだろう?同じもんだ、細分化されているが...」


人間・亜人・魔物の起源は未だ解らない。各国の神話から読み取られることが多い。私もそうだ。ここ等、ロヴァノリヤの神話では、人間は、創造神から産まれた産物だし、亜人の獣系は、天に棲む動物神の血を継ぐ者として描かれるし、魔物は悪神の血を継いだ者を指す言葉だ、血の力が魔力とも称される。


じゃあ、何で人間、亜人問わず、魔法使えるかって?其処がややこしい。魔物も最初期は、別に害を与えるような存在では無かった。だから、人間や似た者の亜人と交配をした。そして、その子は魔物の力、魔力が使えた。神話では、魔力で火を起こしたり、植物の成長を促進したりみたいな描写が有った。ただ、皆が使える訳では無い。魔力無しの人間も亜人も居る。魔物との血の繋がりが無いと言う事だ。でも、現代の魔法は、生まれながらの魔力を加工するような感じだ。産れながらの魔力の一を学校で二三四と加工する。だから、魔物は身近な存在ではあった。

「つまり、お前らが思う、魔物よりかは、友好的な種族だった」


魔物は亜人や人間と次第に同化して行った。しかし、問題が在った。魔物によっては力が強く、非友好的な輩が現れるようになった、人間・亜人問わず害を与える存在。其れが今の魔物で在り、お前らが良く想像する魔物だろう?


だが、人間・亜人ともに魔力が使える奴が居る。そいつ等は、魔物と戦い、見事、撃退した。その残党たちが北上し、泰西の北・東へ行く様に成った。その場所が、ロヴァノリヤ、北方だ。その辺の者は、残党の魔物と交配したものが多く、魔力が強い物が多く生まれている。...昔を偲べば、私の家系的に魔物系の血が入ってても可笑しくないかもしれないな...

「だとしたら、先祖を恨みたい」


毛深い、狼の血の影響で腕や肩の少しに脛から脹脛ぐらいまで、毛は多く生えるし、爪は直ぐ鋭く長くなるし、手入れが面倒だ。狼に成れば、問題無いが、巨狼で何か動くの怠くなる。だから、人型が楽だが、背は伸びるは、色々怠い。

「私を狂気的な殺人狼とでも思った、其処の傍観者。其れは違うな」


狂気的では無い。一回顔洗ってこい、恐らく乾いてる。

殺人は何度も、何十度も、何百度も、何千度も、繰り返して来たが、決して、無辜な者を処断して来た訳では無い。かつての私の様に、貧困生活に苦しむ、狼獣半人の為に、高い立場の者を燻り殺したし、その付属品...じゃなくて、妻か子供も、家族が欠けたら可哀そうだから、滅ぼしただけだ。反論は厳禁。


機械の様に使いまわされ、感情が薄まり、親の死でも涙流さぬ、私には、非力な女も子供も、屠る事は出来る。何の情も湧かないからだ。命乞いは、腹が立つ。今迄、散々なことしておいて、許せと?そんな事、周りも神も許す訳が無いだろうが。


物騒?なのかは知らぬが、価値観は合わぬと思うが...

「お前も、似た状況に遭う事だってあるかもしれないし、遭ったかもしれないが、私みたいに手を掛けていないなら、大勲章物だな...褒め言葉かは知らんが、或る意味、殺人鬼だな」


怒るなよ。恨むなら、社会に言ってくれ。こっちは、真面な教育受けてないんだよ。元々、無学文盲の貧困層出身の私。教育も学校も金が掛かるわで、行かず。労働に勤しむ生活を送って来た。お前らの世界は、どうだろうか?真面な教育受けて、日々の生活に成れ染まっているか?


此方は、気持ち悪い程対立や差別が多い。皆、石炭の様な腹黒さと粗悪さを携えている。批判、叛乱、デモ、スト、犯罪、過激組織の活動。之が私の国の日常だ。お前らには到底、予想着くかは知らんが、少なくとも、まだ平和な方だろう。


こんな説明文みたいになった、私の心情読み取られるか?

色々と疲れた。如何して、こうも、”平穏”はすぐ消えるのだろうか...


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


白灰雪はくはいせつの丘陵地帯を越え、凍結した河を渡り、葉の金無しの無一文の白樺の林を進み、クラスノコプの街並みが視える。

「...!?」

「もう、戦火は拡がってるんだ...」


目の前に広がる、街並み。其れは平和では無く、苦しみの様に感じた。街からは黒煙や炎が蔓延り舞っている。つまり、此処も安全とは言えなくなって来た。クラスノコプで、情報収集とかしようと思ったが、駄目か...と思った、その時。イデナがビクッと僅かな震えを見せた、その時。

「伏せろ!!」


バンッと言う銃声が響く。

「何!?敵!?」

(...朱軍の連中か...?)


何処から、銃声が聞こえた。だが、姿が見えない、僅かな光りしか。朱軍か騎兵民族コサックの兵かは解らぬが、危険だ。何故なら、弾丸が私の頬を掠って、血が出ている。大して痛くは無いが、私を狙っている。

「何処か、物陰に隠れるんだ」


イデナの言葉通り、古木の大樹の後ろに隠れる。

「一先ずは、安心だな...」


ナガン7弾式リボルバーを取り出し、三弾だけを籠める。シリンダーを指で戻し、引き金部分を持ち、煙の出ない煙草を銜える。

「気配もしない...厄介な敵だな...だが、場所は把握した」


いや、待て...騎兵民族コサックなら...ユジノーが出れば、銃撃が止んで、兵が出て来るんじゃないか?いやでも、朱軍だったら、まずいか...

「...鹵獲(捕縛)するか」


位置は、7時の方向、一つ目立つ白樺の大樹。スコープの反射光でバレバレだ。両脚と銃握る手ぐらいに、弾貫くだけで良いだろう。

「よし、行くか...」


今日は、煙の調子が良いんだ。全身煙に出来る、気配消え、視線だけの針刺激しか与えずに、仕留めれる。

「準備は良い...今だ」


瞬時に手と手を擦り、火を興すかの熱さと共に、モクモクと多量の煙が溢れ零れる。

同時に、私の体から滝水溢れんばかりの煙が飛び出て来る。水に戻るかの如く、ポチャポチャと体の容が曖昧な煙に成る。


煙に完全になった。後は大樹へそっと、密かに行く事。イデナとユジノーは、武器構えながら、周囲を警戒している。


表現し難い、煙の感覚。風に逆行し、意図せず、自由に舞い翔ぶ。横縦に薄く広がり、槍上に成り、矛先は徐々に大樹の地に出る太根群の隙間を縫い通り、裏へ行く。

(居た...此奴、市民兵か?)


其処には騎兵民族コサック達の居る独特な服でも無ければ、チホレツクを襲った朱軍の来た服でもない。山岳街にでも棲んでそうな服装、何なら、此の野生的な匂い、獣半人か...


煙から、体に戻る。音無しに大きな巨体がモクモクと現れる。手には、リボルバーを持ち、刻々とそいつの背後に近づく。そして...

バンッ!!バンッ!!と両足目掛け、瞬時に発砲する。

「アアァァ!!」


左足、脹脛に当たって、倒れこむが、右側は、脚に少し掠っただけだった。私は、そいつの口元を抑え、抑え付け、耳に囁く。

「...何、仲間を撃とうとしているんだ、騒いだら...」


口元抑える手に力を掛け、生暖かい液を感じる。...涙か...

「別に殺す訳では無い。其処まではしない、だが...今から、質問する...回答次第では、其の撃たれて血が出てる左足を貰う」

「!!」


そっと、口元を塞ぐ手を退け、微笑む。

「...如何して、発砲した?」

「...敵である朱軍の者だと想って...」

「ほう、如何して、朱軍の連中と思った?」

「民間人に扮した朱軍が町で市民を襲撃して...」

「そうか、貴様は何処の連中だ?」

「...ただのクラスノコプ市民です...」

「職は?」

「猟人を...多少...」

「クラスノコプで何が在った?」

「...民間人に扮した、朱軍の者が、火炎瓶やら銃で市民を襲撃し始めて...其処に、別の朱軍が参戦して来て...」

「...そうか...」

「あの...そろそろ...解放を...」

「...最後の質問だ、貴様は之から如何するつもりだ?」

「わ、私は...安全な所まで...逃げるつもりです...」

「...一つ伝える。私達は、朱軍でも無い。お前と同じ、市民だ。私達は、此処から南下して、一先ずヴルジアまで行くつもりだ...一つ提案だ、お前も一緒に行かないか?」

「...し、信用できないです...そ、そう言って...朱軍に強制入隊させる気で...うっ!?」

「黙って来い」

「...は、はい...だ、だから..い、命だけは...」


咄嗟に凄まじい殺気を放ってしまう。その時。

「ミュハさん!!」


ユジノーが駆けつける。

「ミュハさん...其の人は...?」

「...銃を撃った者...我らと同じ、被害者側のな...」

「...あの、気絶してますよ...」

「(少し力を入れ過ぎた)...少し、気を失わせた...」

「...連れていくですか?」

「当たり前だろう?」

「いや、死んだと思って...其処らにほかせば...」

「...(時々、ユジノーはかなり尖った考えが露呈するな...)」


そいつを負ぶって、イデナの元へ行く。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・




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