第一次ロヴァノリヤ革命の夜明け Ⅶ
「逃げろ!!」
「援軍はまだなのか!?」
ドゴン、バゴンと無情な砲撃が花開き、建物は崩れ、天からは瓦礫の雨が降る。瓦礫の雨は激雨で、弾丸で、敵の攻撃から逃げる民間人に容赦無く、降り注ぐ。頭を壊し、脚痛めた怪我人の跡始末、子供を傷つけ、民間人は悲鳴や断末魔の大波と成る。
そんな悲劇の中に、響くのは、感情を持たない冷酷な機関銃の群れ。慌てふため逃げる無防備な民間人に向け、放つ。子供も大人も老人も赤子も、等しく殺される。助けの声も救いの手も無い。残るのは、運悪く死んだ骸のみ。
此処は、ペラル。朱軍の拠点だが、本拠である、旧帝都よりも、遠く孤立した朱軍の拠点で、周辺は混乱した軍閥や民族の群れに、敵である、王党派の残党と干渉する泰西軍。そして、今、干渉泰西軍の大軍が此処、ペラルの地に侵入してきた。
隣町のウラテリンブルクは、泰西軍と他の派閥の戦闘。近くの朱軍拠点まで、時間が掛かる。援軍の派遣を承諾したが、一向に来ない。もう全滅したのか?こんな時、魔法と言う物が使えれば...泰西軍の兵士は、奇怪な攻撃を使って来る。手から炎を出したり、滅茶苦茶だ。
「我々に勝ち目は有るのだろうか...」
「...広大で激しいウラルの雪、冬将軍が舞い降りてくれれば、勝算はある。我々は慣れた、冬将軍の加護を奴ら、邪悪な泰西の連中には、凍死の道しかない筈だ」
「もし、耐えたらどうするんだ!?」
「その時は、”その時だ”」
亜人も人間も銃握りては、双方躊躇なく引き金を引く。朱軍の司令部からの伝達は不定期で、物資は鹵獲で補っている。我々の祖国はどうなるんだ。
「...!?敵兵だ!!」
「銃を構えろ!!」
「撃て!!」
また、激しい銃撃戦。嬉しみも悲しみも欠如した冷酷の戦場。愉快な民謡の様に、銃が奏でる殺しの行進曲。叫びは、全て、悲哀。此処百年は戦争の見通しなのか?大祖国は不滅なのか?辛うじて読める字を読んでも、載るのは端的な言葉のプロパガンダの新聞。周りは文盲だからだ。明日に希望は在るのか?勝ちはいつなのか?
「発射用意!!......発射!!」
鉛玉の砲撃音、太鼓の一種だ。銃声は弦楽器に笛の様だ。何もかも、音楽が聞こえる。敵味方の声が、彩りを感じる。何だか、楽しくなって来た。
かつては、笑みで溢れた家宅も即時の塹壕と要塞の一部に成り、不端麗な廃墟と言う死を迎える。故郷ペラルはこの”聖戦”で生き抜けれるのか?我々は、此処で屍に成ってしまうのか...死んでも勝てぬ祖国の戦争に成ってしまうのか...
「俺たちは、このまま、死んでしまうのかな」
そんな不吉な想像してしまう。俺達は、幸せの暮らしがしたいのに、出て来るのは不幸の連続。そして、今日も禽獣は唸る。
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「ミュハの作った料理、《《意外》》と美味しい」
「美味しぃ~《《意外と》》」
「お前ら、一言余計だ。美味しいだけにしろ」
「だって、イメージ湧くか?こんな肉食獣の狼が器用に料理する何て、想像できない」
「お前も...って、二人とも草食か...《《可哀そうに》》」
「何だよ、可哀そうって!!」
「馬も《《肉食》》!!」
「そんな訳有るかい、お前らは木の実か草しか喰わないだろうが」
「そう言うって、ミュハさんも意外と草食系狼では?」
「喰ってやろうか」
「やめろ、幾つかの意味に分れる」
「食物連鎖だからセーフ」
「馬喰う狼は居ない(此処では)」
「そんな事より、早く肉喰いましょう」
「之で私達、草食系も肉食系の一員だな」
「其れは無い」
そんな愉快な会話と同時に、迷いが生まれる。こんな事している場合なのか...今、絶賛、国内が混乱している。其れに、さっきだって、戦闘が始まっていた。之からが重要な歩みだ。
だが、今はこの大雪が止む迄、待機だな。其れに、此処から何処に行こうか...内戦って事は、何処にも安全地帯は無い訳だ。逆手に取れば、旨く命を保つ方法が解禁された訳だ。この世に生き残る手段は何だ?傍観者?其れはな、出来る限り、他者を気に居掛けない事だ。非日常の時、皆、自分を優先する。死にたくないだとか、被害に遭いたくないとか、其れで、自分を守るため、焦る。
其れが好機。餓狼の如く、心身に貪れ。攻め、煽てろ。安心させて相手を傀儡化させるんだ。失敗すれば切り捨てればいいだけの話だ。ただ、傀儡は、大量に持っておくと、良いぞ。囮でも臓器売買の糧に成る。
疑似的な群狼が出来る。屍でも骸でも、此の大きな煙の手に収まるなら、糸の操り人形と同等だ。剣でも斧でも古い火縄銃でも産業大革命黎明期の装飾巨砲でも燻り殺した資本家の財産でも武器として使える。
此の殺伐とした世の中で金は重要。今の収入源は強盗殺人で得た資本家・銀行員系の資金に裏の道の臓器売買による金。どう思う?傍観者?之が空想の主人公かって?こんな裏社会感が常識の盃から零れまくっている、私を?
だから言っただろう?此の物語は貴様らの世界と似てる部分が有るって。全てが新しくて、神秘にロマンを感じるなんて何時から妄想してた?文化、風習、外観、世界観、国家、何が貴様らの世界と違う?名前の文化か?食文化か?種族か?まぁいい。今は、此の混沌で正義と悪が複雑怪奇と化した此の、多民族国家の弾薬庫、ロヴァノリヤで生きる術を見せようか。
「...これから、どうするんですか...?」
「......如何するんだ?」
「...これから、先、戦争に巻き込まれる可能性が高い、周辺国へ亡命する?其れともこの群雄割拠のロヴァノリヤで生き残るため、戦う?...」
「ミュハ、私が言った事覚えてる?”もし、革命などが起きたら...亡命する国を決めてるんだ”って」
「...あぁ...だが、東方の国家だろう?混沌とした国内を縦断する必要があるぞ...其れこそ、命が危ない」
「...あのぉ...その東方の国って言うのは何ですか?」
「イデナの母国が東方の一国なんだよ」
「あぁ...なるほど...其れなら、他国通って、その東方の一国へ行くのはどうでしょう...?」
「...第三国経由か...だが、入国を許可してくれるだろうか...今、私達は言わば、難民と同じだ...」
「難民、正規の入国では、受け入れが難しいかもしれないな...なら...」
「不法入国って事ですか...?」
「其れしかないな...」
「ですが、何処の国に行くのですか?」
「...此処から南、同じ騎兵民族の文化圏のヴルジアはどうだ?一先ずの安心は確保できそうだが...」
「あそこら辺は...一応、馬人も居るし...良さそうですね...」
「だが、其処からどうやって、東方へ行くんだ?」
「其れはまだ、決まってない、でも、其処で情報を集めるつもりだ」
「...まぁ、私は良いよ...革命は良いけど、結局は自分が生きない限り、意味は為さないけど、今のロヴァノリヤはうんざりしてるんだ、だから付いていくぞ」
「私も、行きます、ロヴァノリヤの騎兵民族が殺される中で、こんな国に居れないです...だから行きます」
「...そうか...じゃあ、目指すはヴルジア、生きて目指すぞ」
「...大丈夫?其れ、フラグになるタイプの奴じゃ...」
「ユジノー...気にするな...」
「ㇵィ...」
「早速、行きたい処だが...ユジノー...足の調子はどうだ?」
「かなり治って来てますし、普通に歩けますよ」
「なら良かった...じゃあ、行くとするか...」
「もう...行くのか...?」
「そりゃあ、何時、敵に見つかるか解らないだろ?早く行動した方が良いだろう?」「...まぁそうだな...」
「じゃあ、行きますよ!!」
「はいはい...」
こうして、革命や蜂起や戦闘で荒れるロヴァノリヤを脱すため、隣国にして、同じ騎兵民族文化圏の国、ヴルジアへ行く事に成った。亡命生活の幕開けである。
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続




