第一次ロヴァノリヤ革命の夜明け Ⅳ
瓦礫や火が蔓延る、チホレツクの街並み。イデナやユジノーを置いて、街中を走る私。しかし、敵兵の先方の少数、数人が来ている様だ。私は銃から弾を込め、何度も発する。しかし、敵は私に白兵戦を挑んで来た。重厚な防寒具をも軽々と貫く銃剣を私の体に刺すが、無意味。隙を開け、其の儘、近距離で発砲、勢いよく敵の血飛沫が私の純白の襯衣に架かり、朱が染まる。
「先ずは、一人」
そう独り告げると、長槍な銃剣を持ち、背後から心臓に、銃で頭部を、重い金属の槍上の瓦礫を、何人の敵に貫き通した。楽しいと言う言葉にしか尽きない。
そう数十分の時には、辺りは朱色の凹凸平野。状況把握の為、瓦礫が蔓延る町を廻るが...膝から崩れ落ちる。両手も力が抜けたかの様にダランと地を向き、無意識に天を見詰める。
(嗚呼、平期でこんなに激しい戦闘したら、身体が持たないか...)
平期と乱期、平期に過度な戦闘は精神的な疲弊を多く感じる。
(このままだと、私も殺られてしまう...)
そう思いながらも、身体動かそうとしても、ビクともしない。絶望的なのかは解らないが、危機では有る。
(裏方め...)
今、私の心、体から裏方の気を感じる。禍々で毒々とした馨る芳香剤漂せながら、私を貪ろうとくる。正直、このまま、敵兵が来ようが、煙を散布して、中毒死出来るが、裏方には、効かない。乱期に暴れても裏方は反応しないのに、平期では、容赦なく主導権を奪おうとする。
(私...)
どうしてだろう、体から怒りを大いに感じる。全てが憎い。全てが穢い。全てが哀しい。全て、救いたい。沸々と泡立つ殺意の音が動悸の鼓動音を遮り、私に不快と喜楽を與える。
「何もかも、消し殺せば良いんだ」
藻屑の様に嫌いな稚児時代が生々しく映り続く、罵声に懲罰、労働に嘲笑。鬱陶しくて、うざい。
(...)
気色悪い、その思い出を手で握り潰す。何の表現描写でも書き表せない、感情が私に武器を渡す。潰して叩いて、蹴る。硝子の様に砕け、脆い土の様にボロボロに散らばっている。足で退かし、何も無い。孤独ではない、寂しさも無い、虚しさも無い。ただ、私の力、精神の力が暴走している。...
何が革命だ。騎兵民族を殺している時点で、革命軍に正義の証明は潰えている。だから、この世界全員、血の正義で日を送っている。革命が救いの訳が無い、死が救いだろうが、慾に蔓延まれ、他者と争い、負けて悲哀に満ちる。種族差別に労働格差、生活格差、食糧問題、飢餓問題、議会腐敗、労働者革命、祖国革命、こんな地獄に等しい生活に耐えれるか、そんなの一部の成功者しか意味が無い。革命の都合で騎兵民族の虐殺敢行、人の自由を殺しで補う。選民思想と同じではないか?誰がこんな生活我慢して一生送っているんだ。舐めているのか?
やっぱり、暴力が全てだ。この一秒一秒、何が起きるか、悲劇と絶望、其れだけ。煩わしい悲鳴に硝煙臭い濁り鉛の銃弾の聲。之が理想郷なのか、いや、ディストピアの楽園だろう。やはり、生命はね、慾が有る限り、終わってる。だからと言って欲を捨てても、残るのは無。この世界は、理解不能で複雑怪奇な世界。何が正義?何が悪?何が愛?何が楽?個人は他者に浸透し、心理は物理に潰れ、気を使い、心は疲弊。無学文盲で無知なロヴァノリヤの民は革命で自由を得れるのか?端的な言葉で操られ、後から切り捨てられるのではないか?そう思うと個人主義な私にも僅かな同情が湧く。勿論、救済を行うだけだ。
刻々と時間も精神暴走も進む。私の周り、気配がする。...イデナ、まだ来ないでくれ、今の私なら、いとも簡単に手に掛けてしまう。抗え、私。精神に抗うんだ。
(くそがぁ...)
之が体が言う事を聞かないと言う状態だろうか。私半分と何か半分に別れている感覚。イデナが私に触れ、何かがイデナに攻撃を仕掛ける。憎い、之ばかりは、私にも殺意が湧く。何かがイデナと話す時、私にもその内容が聞こえる。イデナに私の思考を伝えている。イデナは、
「言いたいことは解る。私にもそんな思考をする時は多いに有る。見た目で嘲笑われ、文化で罵られ、侮辱された。だが、全ては暴力で解決することも有るだろうが、言葉で語り合うのも良い案じゃないのか?」
と返す。その瞬間、別れている感覚が少しづつ融合しているように感じる。
だが、まだ、私とは別の何かがイデナに言う。
「何もかも、暴力で完遂する事は無い。其れは知っている。だから”殺せ”。全てを殺めて、正義も悪も消せ、全ては結果論。手順さえ合えばどうでもいい。都合を無くすには相手を殺めるのが、一番の手段だ。例えば、昔から、私の思考を可笑しいと唱える奴が居た。だから、そいつを殺した。之は、都合が悪いからでは無い。暴力による腐った正義から救済する措置である。」
そんな思想は私だけで十分なんだ。イデナに伝染させるな。そんな私の意思に比例する様に感覚が戻っている。今なら、行けるかもしれない。前述した複雑な私の思想に、イデナはまた問う。
「其の思想を私に伝える気?」
「...正直、この思想は個人主義に合うから、他思想のイデナにからしていい考えって思うか解らない...」
之で一先ずは良いだろうか。
「何か、急に態度が緩くなっていないか?」
其れはそうだろう。感覚が舞い戻ってきた。
「...私は、都合や自分の匙加減で正義、悪決めつける奴が嫌い、自らの手で血を染めずに手を下すものが嫌い。でも、イデナにユジノー、仲間は殺したくない。私は今まで、誰かと一緒にいるその温もりを感じたことも無い、愛も。だから、二人は殺したくも無いし、殺されて欲しくない。」
...本音は言っていいだろう。私だって人臭い処だってある。其れに仲間には手は掛けない。同種族には手を掛けるが、異種族だろうが意見か仲よくなれば、自然と殺意も殺しの目的も無くなる。其れに、私には、こんな経験、初めてだった。親は優しいけど、労働で愛は散り、人並みに溺れ、酒に沈み、煙草の紫煙に煽られ、やっと手にした心の温もり、手には離したくない。
「...なんだよ、ちゃんと良い所もあるじゃない...私はミュハの過去に何が在ったかは知らないけど、殺しもどうでもいい。私は平等を求めている、ミュハは何求めているかは知らないけど。これからは、私、一緒に付き合ってあげるよ...」
イデナなら、そう言うと信じていた。いや、そう信じ続けて欲しい。
「...本当?」
「私は約束を守る黒鷲よ。其れにミュハとの旅、普通に楽しいしね」
「......ありがと」
”楽しい”私には、関係無い言葉だと思ったが、まさかこんな形で出会うとはね...この会話が終わるその時、イデナが私に後ろから抱き着いて来た。
(...!?)
少し状況が把握できない。何でイデナが私に抱きついているんだ...こう言うスキンシップ?は恋人とかにする性では無いのか?...私は異性愛にも同性愛にも興味は無いのだが...其れよりも恥ずかしさが有る。どう反応すれば良いのか...
数秒の間
「行こう...」
「そ、そうだね...」
...そうだ、ユジノーが待っている。彼奴も怪我している可能性が高い。イデナも蟀谷に包帯巻いているし...ユジノー待っていてくれ...
私とイデナが走る中、イデナが黒い鵬翼広げ、私に告げる。
「私の両手に捕まれ!!」
私は瞬時にイデナの両手を握る。その瞬間、鵬翼が勢いよく動き、空へ舞う。
火山の火口の様な形の瓦礫から、黒煙が舞い、薄墨色の曇が風に吹かれ、踊っている。イデナは黒煙や曇を避けながら、凄まじい速度で、一直線に飛ぶ。
恐らくユジノーが居る方に飛んでいるのだ。
その時、もうすぐ着くのか、私にまた告げる。
「降りるから、舌噛まないでね」
その言葉通り、90度に近しい角度から地上へ着陸態勢に移行するイデナ、私は強風に吹かれながら、帽子が飛ばぬように、帽子内で耳を僅かに開け、私も準備が出来た。
「もうすぐ、着くぞ」
徐々に地面が接近してくる。私が手を放し、3メートルくらいから落下し、無事、着地出来て、イデナもあの急降下から難なく着地していた。
目の前の樹一本。根が隆起し、其処には根に包まれているようにも見える眠るユジノーの姿が有った。イデナの外套をひざ掛け替わりに使い、すやすやと眠っている。
「ユジノーは大丈夫なのか?」
「片足を怪我してたけど、何とか止血は出来た。吹かれて休んでいるんじゃないの...」
「...そうかもな...」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続




