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第一次ロヴァノリヤ革命の夜明け Ⅲ

耳から激しい風の吹く音が響き、街の煙の壁避けながら、街内を見渡す。

「ミュハーンは何処だ」


その時...視えた...だが、違う、全身が震え、汗が出る。

地面に着き、急いで走る。

「ミュ...ハ?」


其処には、白襯衣(シャツ)が紅く染まり、膝を着いて、天を仰ぐミュハの姿が有った、嘘...?そろりと足動かしながらミュハの所に近づき...

「ミュハ...」


そう名前を呼ぶ。だが返答は無い、其れに目の前にミュハが居る筈なのに、気配がしない。肩を触ろうとしたその刹那...


途端、殺気が私に刺さる。無いに等しいほどの気配から殺気が私に遷った。凄まじい程の殺気、そして同時に何か恐ろしい力を感じ、肩を触ろうとする手を戻そうとするが...

(動かない...どうしてだ!?)


何かに捕まれたかの様に手が動かない。其れに空気が変わったかの様に、静寂な空気。だが、同時に目には見えないが、何か恐ろしい程の気配、力、殺気が私に身体も心にも深く刺さる。感覚が有る...!?

(...怖い...痛い...どうなってるんだ...)


だが、数秒後、その気配、殺気、力が弱まり、ミュハから生気を感じる。

そして、私の方に振り向いた。

(!?)


違ったんだ、瞳の色。黒と茶の瞳が血色寄りの緋色の方な瞳の色になって居た。其れに何時ものミュハとは違う生気に力、気配。

「ミュハ...なのか!?」


そうミュハらしき者に尋ねるが、首を”横”に振る。そして、同時に目には見えない筈の毒々しく黒い気みたいな物が、私の体に纏わりついて来る。そして、同時に頭の中に一つの映像の様なものが流れる。奇怪なオルゴールの不協和音の音楽と共にミュハが出て来る。

「...イデナ、お前はこう思う事は無いか?」


そうミュハの声が聞こえると、私に問いも与える余地も無く、淡々と私に語り始める。

「この世界には、正義と言う言葉と悪と言う言葉が有る。御伽噺に出て来る王子や勇者、英雄は魔王を倒しに行く事が多いよね。でも、魔王は本当に悪なのか?そう思わない?人間に害与えるや人間に危害を加えるとかの理由で魔物を倒し、魔王を倒す。害を成すの理由で魔を駆逐する。しかし、人間が得したとして、魔物にはどんな利点がある?自分や仲間が殺されそうになり、ましてや、自分たちの大先輩が殺され、自分たちも破滅の道に辿る。悲しいな。魔物は悪い物なのか?其れは解らないのが普通だろう。御伽では必ず、魔物が人間に攻撃する事が多い、しかし、其れは魔物が悪いと言う証拠に成るのだろうか?例えば、魔物が暮らす巣で人間達が荒らして来て、仲間を守るため、攻撃したかもしれない、人間とは違う見た目で嫌悪され、殺されかけて、攻撃したかもしれない。そうなると人間にも非は有る筈だ。しかし、大半の御伽噺は魔物に非が有る事が多い。こんな人間中心的な創作物を読むと亜人はこう思うだろう。”何で俺たちが悪いんだ”って人間と亜人、見た目が似てるとこも有れば、違う事も有る、文化や風習も違うことだってある。それは人間にもある地域での文化の差と言う奴だ。だから、衝突が生まれるんだ。過去に何度も人間や亜人ましてや、住む場所の違う人間や亜人同士でも殺し合いをして来たではないか。そうなると、正義と悪の証明は難しくなる。互いにこうするため、ああするためと目的がある限り、正義は生まれるし、悪も生まれる。無差別の殺人にも正義は発行される。何が言いたいかと言いうと、この世の正義や悪ってその者の価値観や倫理観で左右するし、都合で変化する。その為に”暴力”が必要だ。暴力は全てを平らにする。暴力は都合も価値観も倫理観も要らない格安の特権で在り、全ては命宿る物の宿命である。心で思う事を暴力に換えるのが、私の思考だ。この世に救済は殺ししかない、暴力は救いの一撃、悪は正義、正義は悪。そして、血は正義、正義は血。...分かるだろう。何時までも人間や亜人は互いを批判しては殺し合う定め。手つなぐ人間と亜人は表面上の関係、心身的には偏見が有るのだ。暴力はその心の隔てを無くし、理不尽も破り、不都合を無くし、有象無象と略される生命体に価値を付ける。何て素晴らしい事じゃないか...」


何を言っているんだ。だが、

「言いたいことは解る。私にもそんな思考をする時は多いに有る。見た目で嘲笑われ、文化で罵られ、侮辱された。だが、全ては暴力で解決することも有るだろうが、言葉で語り合うのも良い案じゃないのか?」


そう脳内のミュハに問う。

「何もかも、暴力で完遂する事は無い。其れは知っている。だから”殺せ”。全てを殺めて、正義も悪も消せ、全ては結果論。手順さえ合えばどうでもいい。都合を無くすには相手を殺めるのが、一番の手段だ。例えば、昔から、私の思考を可笑しいと唱える奴が居た。だから、そいつを殺した。之は、都合が悪いからでは無い。暴力による腐った正義から救済する措置である。」


何と思えばいいんだ。ミュハは私に思想を教えているのか?私には一部しか理解できない。難しいな、思想は。

「其の思想を私に伝える気?」

「...正直、この思想は個人主義に合うから、他思想のイデナにからしていい考えって思うか解らない...」

「何か、急に態度が緩くなっていないか?」

「...私は、都合や自分の匙加減で正義、悪決めつける奴が嫌い、自らの手で血を染めずに手を下すものが嫌い。でも、イデナにユジノー、仲間は殺したくない。私は今まで、誰かと一緒にいるその温もりを感じたことも無い、愛も。だから、二人は殺したくも無いし、殺されて欲しくない。」

「...なんだよ、ちゃんと良い所もあるじゃない...私はミュハの過去に何が在ったかは知らないけど、殺しもどうでもいい。私は平等を求めている、ミュハは何求めているかは知らないけど。これからは、私、一緒に付き合ってあげるよ...」

「...本当?」

「私は約束を守る黒鷲よ。其れにミュハとの旅、普通に楽しいしね」

「......ありがと」


その言葉が聞こえると、体が動けるようになり、私は自然とミュハを後ろから抱き締めていた。温かいミュハの体。

「行こう...」

「そ、そうだね...」


急いで、ユジノーが横たわる樹の方へ向かうのであった。


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