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禽に狼に馬の旅 Ⅴ

やはり、この世界は狂ってる。ミュハもユジノーも狂いに惑わされている。

何故、彼奴らは血と屍に耐性を持ってる様に振る舞う事が出来るんだ?訳が分からない。だが、私もあっち側なのだろう、殺そうとする二人を止めなかった時点で、私も共犯者。この世の残酷な掟だ。


慣れと言うのは恐ろしい物だ、幼少期から可笑しな生活を送ったせいで、やっぱり、価値観が変化している。時に正義といって、時に悪と言う。私はそんな事は求めていない、平等を求めている、あの頃(幼少期)を潰すくらいの幸福的な平等を待っている筈なのに... 

「私は、何を考えているんだ...」


そう言い、手の甲を顎に当て、考える。

難しい事だ、命の事は。皆々が平等だと言う実感は少なくとも未だ無い。裕福暮らしの貴族と王族、逆にその日暮らしの小作人や商人もいる、全然平等では無い。其れに、此の国は毎日何処かで人が死ぬ。病に斃れ、銃や刃物に仆れ、過剰労働で倒れる。事件、労働、病、皆、何とか生きようともしない、この国に希望が無いからだ。やる気も無いまま、自決する程の力無く、死にきれないまま、貧しい暮らしをする。


私は、少なくとも、そんな思いも考えも成った事は有る。だから、平等を求め、社会主義へ行った。

私の平等は皆が毎日3食豊かな食生活を送れて、笑顔溢れる生活を送ってほしい、そのだけだ。だが、そんな理想論も今の国内では、不可能に相応しい。だから、暴力革命に賛同した。


ミュハーンも元々、何かしらの正義はあると思う。ただ、その正義が可笑しいだけなんだ。

貧しいは正義の最大の敵。正義と悪、私から見れば、ただ意味違いじゃない、都合の産物だ。

ユジノーも同様に何かしらの正義を持っているのだろう。この世に有象無象な者が生きる限り、有象無象な正義と悪が生きる。過激と呼ばれるものも有れば、穏健とも言われる物も有る、ややこしい。

(少なくとも、私は血を見るのは革命だけでいい、ミュハーンの様に何かしらの正義のせいで、狂ってしまった者も大勢いるだろう、だが、私はそいつ等を殺すわけには行かない。かつての不平等を証明する歴史の証人なんだ...)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「なぁ..ユジノー」

「何ですか?」

「私を見て、どう思う?」

「急に如何したんですか?」

「いや、まぁな、私は平気で銃の引き金を引き、容赦なく命を殺める、そんな私をどう思う、正直に言ってくれ...」

「...そうですねぇ...ミュハさんからは僅かに血腥い(ちなまぐさい)匂いと死臭みたいな香り、後、少し野性的な臭いがします、其れはミュハさんが狼だからの事でしょう。ですが、貴女からは尋常ではない程の屍の匂いがします。ですが、匂いと言うよりも気配と言った方が良いでしょう...」

「そうか...」

「貴女の様な者は、初めてですが、聞きます、幾らの者を殺めて来たのでしょうか?」

「...明確には覚えていない」

「そうですか...其れは其れは凄いです!!」

「さっきから様子が変だぞ...表と裏が混在しているぞ」

「失礼、私は血には目が無くて...」

「お前もか、だが、その様子からしてお前も相当...」

「しっ、それ以上は秘密です。イデナさんが待っていますし、”今回”は此処まで」

「...そうか」

「さっ、戻りましょう」

「だが、イデナと今、かなり重い雰囲気が漂っているのだが...」

「大丈夫ですよ、此の国では先手するなら、殺される事が決まっているので。大したことでは無いですよ、其れにイデナさんも助けなかった時点で共犯者です」

「...まぁ、そうだな...」

「さっ、急ぎましょう、こうしてる間に時間は過ぎていきますし」

「そうだな」


そうして、私とユジノーは馬車へ戻る。青緑を僅かに赤く染めながら...馬車へ向かう。

「それにしても、さっきのは何なんだ?」

「さっきのは、馬賊です、馬人の匪賊です。騎兵民族(コサック)馬人(ドラフチェラ)において、迷惑は罪です、処刑です。迷惑を犯すものは誇り高き騎兵民族(コサック)馬人(ドラフチェラ)じゃないので、殺してもこっちはお咎めなしです」

「...もしかして、お前、匪賊狩りでもしまくって、血を多く見て来たのか...」

「ご名答」

「お前も大概だな」

「貴女様もそうですよぉ~」

「貴女様は要らない、ミュハで言え、あとそう言う様とかも嫌いなんだ」

「其れは失礼、ではミュハさんで」

「其れぐらいが丁度良い」

「...面白い方ですね」

「そんな事は重々承知だ」

「そんな所ですよ、ミュハさん」

「ふっ、そうか...」


そんな会話をして、丁度、馬車に着く...

「イデナァ~って寝ているじゃないか...」

「あら、イデナさん寝てるんですか、じゃあ、そっと動かしますねぇ~」

「おい、待て、まだこっちの準備が」


その瞬間、そっと動かすと言う、詐欺が始まった。私が座って、イデナが寝てることを伝えた直後、またあの感覚が蘇った、ユジノーの凄まじい速度による、有り得ない程の風圧の感覚が。だが、不思議な事に息は出来るし、謎の快適感がある。どうやら、慣れが来てしまった様だ、之は嬉しいがなぁ...

「...煙草は美味しいなぁ...」


慣れと言うは恐ろしい物だ(大事な事だから二回言った)

なんなら、イデナも平気で寝ている。何か、耐性着くの早くない?

「ユジノー、後どれ位で着くんだ?」

「ざっと、後二日で着きます、ただ、ロスヴォフヴォルクからクラスノコプまでの道にチホレツクって言う町が有るんで、其処で休む予定です」

「そのチホレツクには、いつ着くんだ?」

「夜です」

「まぁまぁ...掛かるなぁ...」

「まぁ、此処は広大ですから私ですら、まだ早い方ですよ」

「...そうだろうな、まぁ、待つとするかぁ...」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


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